6 / 34
6 薄い探偵社2
しおりを挟む
「彼女に不満があるのか?」と意次は難しそうな顔で聞いた。
「いえ、彼女に不満なんてありません」
俺は正直なところを言った。
「ああ、俺たち一族に関係すべきか迷ってるってことか」
「そうなの?」と麗華。
「まぁ」と希美。
いや、そこは普通迷うとこだけど? なんでびっくりするんだろう?
「そうか、そういう奴もいるんだな。俺なんか、聞いた途端に飛びついちまったよ」
どうも、この人も誘われた一人らしい。
確かに、あの能力は魅力的だ。
いや、魅力があるなんて程度では無いかも知れない。正直ちょっとわくわくはしている。だが、もしかすると自分は能力に溺れてしまうかもしれないという恐怖もある。
とんでもないことが出来そうだからな。
「すみません。どこか麻薬のような感じがして」
俺は、ちょっと言い訳のようなことを言った。
「ああ、なるほどな」
そう言って意次はちょっと笑った。本当に飛びついた奴に分かるのか?
「確かに、大金持ちになれそうな誘惑はあるわよね」と麗華。いや、それもそうなんだが。
「ヒーローになれそうだしな!」いや、そういうのはないんだけど。
「ふふ。そうね。強い意志が必要なのは確かね」と希美。必要なのか。
「大丈夫よ、私が隣にいるじゃない!」と麗華。
確かに、無制限に能力は使えないんだろうとは思う。
「そうか。まぁ、無理強いはしない。じゃぁ、そうだな。もう少し、この能力を使ってから決めるってのはどうだ? ちゃんと知ってからでも、止めることはできるぞ?」
「えっ? そうなんですか?」
「ん?」
意次は不思議そうな顔をする。
「一族を抜けたら粛清されたりとか」
「粛清?」
「ええっ?」
「まぁ」
「ははは。そんなこと気にしてたのか。麗華、どういう説明してんだよ」
「え~っ、そんなこと言ってないじゃん。ああ、一族の運命に関係するって言ったから?」
「うん。裏切ったら大変なことになるんじゃないかって」
「マフィアじゃないから」と麗華。
意次はツボったのか、しばらく笑いを抑えていたが真面目な顔に戻って言った。
「まぁ、敵対行動というか、ルールを無視して行動するとマズい事にはなるかもな」
「消されます?」
「あ? いや、消されるとしたら世界からだ」
「世界、からですか?」
相手が大き過ぎるんだけど? そこ、心配にならないの?
「まぁ、落ち着いてくれ。話がデカくなった。普通は、そんな事は無いし、いつも気にしてるわけでもない。あ、希美、彼にお茶を出してやってくれ。何か甘いものもな」
「あ、ごめんなさい。つい夢中になっちゃって、ちょっと待っててね」
そういって、希美は奥に入って行った。
いや、甘いものに騙されないぞ?
* * *
「俺たちは極端なことはしないんだよ。なるべく穏便に、波風立てないようにしている」
神海希美が淹れたお茶を一口飲んで意次は言った。
「でも、あんな凄いこと」
「そこだよ。凄い能力だからこそ目立っちゃダメなんだ」
「はぁ。こっそりとやる?」
「そう。それも、気にするのは人目じゃない」
「人目じゃない?」
「いや、人の目もあるが、それだけじゃない」
「世界の目ですか?」
「世界に目は無い。あるのは存在確率だけだな」
意次は、意味不明なことを言った。
「存在確率?」
「そうだ。世界の存在確率に大きく影響するようなことをすると、世界から弾き出されたり消されたりするんだ」なんだって~っ?
「別の世界へ?」
「そうだ。多重世界の今の世界から弾き出される。別の世界へたどり着けるかどうかは分からない」
「よく分かりませんが」
「そうだな、すぐに分かれとは言わない。だが、近くで今宮が教えてくれるから大丈夫だ」
本当に大丈夫だろうか? 麗華を見ると、うんと頷いた。いや、それじゃ納得できないぞ。
「かなり危ない気がしますけど?」
「そうか。いや、その気持ちは大事だぞ。実は、俺たちの仕事はその危険を回避することなんだ! この力でな!」
神海意次は自分たちの仕事をそう説明した。
この能力を使って神海一族の危機を回避するのが彼らの仕事らしい。
もちろん、控えめにだ。
「いえ、彼女に不満なんてありません」
俺は正直なところを言った。
「ああ、俺たち一族に関係すべきか迷ってるってことか」
「そうなの?」と麗華。
「まぁ」と希美。
いや、そこは普通迷うとこだけど? なんでびっくりするんだろう?
「そうか、そういう奴もいるんだな。俺なんか、聞いた途端に飛びついちまったよ」
どうも、この人も誘われた一人らしい。
確かに、あの能力は魅力的だ。
いや、魅力があるなんて程度では無いかも知れない。正直ちょっとわくわくはしている。だが、もしかすると自分は能力に溺れてしまうかもしれないという恐怖もある。
とんでもないことが出来そうだからな。
「すみません。どこか麻薬のような感じがして」
俺は、ちょっと言い訳のようなことを言った。
「ああ、なるほどな」
そう言って意次はちょっと笑った。本当に飛びついた奴に分かるのか?
「確かに、大金持ちになれそうな誘惑はあるわよね」と麗華。いや、それもそうなんだが。
「ヒーローになれそうだしな!」いや、そういうのはないんだけど。
「ふふ。そうね。強い意志が必要なのは確かね」と希美。必要なのか。
「大丈夫よ、私が隣にいるじゃない!」と麗華。
確かに、無制限に能力は使えないんだろうとは思う。
「そうか。まぁ、無理強いはしない。じゃぁ、そうだな。もう少し、この能力を使ってから決めるってのはどうだ? ちゃんと知ってからでも、止めることはできるぞ?」
「えっ? そうなんですか?」
「ん?」
意次は不思議そうな顔をする。
「一族を抜けたら粛清されたりとか」
「粛清?」
「ええっ?」
「まぁ」
「ははは。そんなこと気にしてたのか。麗華、どういう説明してんだよ」
「え~っ、そんなこと言ってないじゃん。ああ、一族の運命に関係するって言ったから?」
「うん。裏切ったら大変なことになるんじゃないかって」
「マフィアじゃないから」と麗華。
意次はツボったのか、しばらく笑いを抑えていたが真面目な顔に戻って言った。
「まぁ、敵対行動というか、ルールを無視して行動するとマズい事にはなるかもな」
「消されます?」
「あ? いや、消されるとしたら世界からだ」
「世界、からですか?」
相手が大き過ぎるんだけど? そこ、心配にならないの?
「まぁ、落ち着いてくれ。話がデカくなった。普通は、そんな事は無いし、いつも気にしてるわけでもない。あ、希美、彼にお茶を出してやってくれ。何か甘いものもな」
「あ、ごめんなさい。つい夢中になっちゃって、ちょっと待っててね」
そういって、希美は奥に入って行った。
いや、甘いものに騙されないぞ?
* * *
「俺たちは極端なことはしないんだよ。なるべく穏便に、波風立てないようにしている」
神海希美が淹れたお茶を一口飲んで意次は言った。
「でも、あんな凄いこと」
「そこだよ。凄い能力だからこそ目立っちゃダメなんだ」
「はぁ。こっそりとやる?」
「そう。それも、気にするのは人目じゃない」
「人目じゃない?」
「いや、人の目もあるが、それだけじゃない」
「世界の目ですか?」
「世界に目は無い。あるのは存在確率だけだな」
意次は、意味不明なことを言った。
「存在確率?」
「そうだ。世界の存在確率に大きく影響するようなことをすると、世界から弾き出されたり消されたりするんだ」なんだって~っ?
「別の世界へ?」
「そうだ。多重世界の今の世界から弾き出される。別の世界へたどり着けるかどうかは分からない」
「よく分かりませんが」
「そうだな、すぐに分かれとは言わない。だが、近くで今宮が教えてくれるから大丈夫だ」
本当に大丈夫だろうか? 麗華を見ると、うんと頷いた。いや、それじゃ納得できないぞ。
「かなり危ない気がしますけど?」
「そうか。いや、その気持ちは大事だぞ。実は、俺たちの仕事はその危険を回避することなんだ! この力でな!」
神海意次は自分たちの仕事をそう説明した。
この能力を使って神海一族の危機を回避するのが彼らの仕事らしい。
もちろん、控えめにだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
多重世界の旅人/多重世界の旅人シリーズII
りゅう
SF
とある別世界の日本でごく普通の生活をしていたリュウは、ある日突然何の予告もなく違う世界へ飛ばされてしまった。
そこは、今までいた世界とは少し違う世界だった。
戸惑いつつも、その世界で出会った人たちと協力して元居た世界に戻ろうとするのだが……。
表紙イラスト:AIアニメジェネレーターにて生成。
https://perchance.org/ai-anime-generator
原初の星/多重世界の旅人シリーズIV
りゅう
SF
多重世界に無限回廊という特殊な空間を発見したリュウは、無限回廊を実現している白球システムの危機を救った。これで、無限回廊は安定し多重世界で自由に活動できるようになる。そう思っていた。
だが、実際には多重世界の深淵に少し触れた程度のものでしかなかった。
表紙イラスト:AIアニメジェネレーターにて生成。
https://perchance.org/ai-anime-generator
絶世のディプロマット
一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。
レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。
レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。
※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。

無限回廊/多重世界の旅人シリーズIII
りゅう
SF
突然多重世界に迷い込んだリュウは、別世界で知り合った仲間と協力して元居た世界に戻ることができた。だが、いつの間にか多重世界の魅力にとらわれている自分を発見する。そして、自ら多重世界に飛び込むのだが、そこで待っていたのは予想を覆す出来事だった。
表紙イラスト:AIアニメジェネレーターにて生成。
https://perchance.org/ai-anime-generator

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる