薄い彼女

りゅう

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6 薄い探偵社2

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「彼女に不満があるのか?」と意次は難しそうな顔で聞いた。
「いえ、彼女に不満なんてありません」

 俺は正直なところを言った。

「ああ、俺たち一族に関係すべきか迷ってるってことか」
「そうなの?」と麗華。
「まぁ」と希美。

 いや、そこは普通迷うとこだけど? なんでびっくりするんだろう?

「そうか、そういう奴もいるんだな。俺なんか、聞いた途端に飛びついちまったよ」

 どうも、この人も誘われた一人らしい。
 確かに、あの能力は魅力的だ。
 いや、魅力があるなんて程度では無いかも知れない。正直ちょっとわくわくはしている。だが、もしかすると自分は能力に溺れてしまうかもしれないという恐怖もある。
 とんでもないことが出来そうだからな。

「すみません。どこか麻薬のような感じがして」

 俺は、ちょっと言い訳のようなことを言った。

「ああ、なるほどな」

 そう言って意次はちょっと笑った。本当に飛びついた奴に分かるのか?

「確かに、大金持ちになれそうな誘惑はあるわよね」と麗華。いや、それもそうなんだが。

「ヒーローになれそうだしな!」いや、そういうのはないんだけど。

「ふふ。そうね。強い意志が必要なのは確かね」と希美。必要なのか。
「大丈夫よ、私が隣にいるじゃない!」と麗華。

 確かに、無制限に能力は使えないんだろうとは思う。

「そうか。まぁ、無理強いはしない。じゃぁ、そうだな。もう少し、この能力を使ってから決めるってのはどうだ? ちゃんと知ってからでも、止めることはできるぞ?」

「えっ? そうなんですか?」
「ん?」

 意次は不思議そうな顔をする。

「一族を抜けたら粛清されたりとか」

「粛清?」
「ええっ?」
「まぁ」

「ははは。そんなこと気にしてたのか。麗華、どういう説明してんだよ」
「え~っ、そんなこと言ってないじゃん。ああ、一族の運命に関係するって言ったから?」

「うん。裏切ったら大変なことになるんじゃないかって」
「マフィアじゃないから」と麗華。

 意次はツボったのか、しばらく笑いを抑えていたが真面目な顔に戻って言った。

「まぁ、敵対行動というか、ルールを無視して行動するとマズい事にはなるかもな」

「消されます?」
「あ? いや、消されるとしたら世界からだ」

「世界、からですか?」

 相手が大き過ぎるんだけど? そこ、心配にならないの?

「まぁ、落ち着いてくれ。話がデカくなった。普通は、そんな事は無いし、いつも気にしてるわけでもない。あ、希美、彼にお茶を出してやってくれ。何か甘いものもな」

「あ、ごめんなさい。つい夢中になっちゃって、ちょっと待っててね」

 そういって、希美は奥に入って行った。

 いや、甘いものに騙されないぞ?

  *  *  *

「俺たちは極端なことはしないんだよ。なるべく穏便に、波風立てないようにしている」

 神海希美が淹れたお茶を一口飲んで意次は言った。

「でも、あんな凄いこと」
「そこだよ。凄い能力だからこそ目立っちゃダメなんだ」

「はぁ。こっそりとやる?」
「そう。それも、気にするのは人目じゃない」

「人目じゃない?」
「いや、人の目もあるが、それだけじゃない」

「世界の目ですか?」
「世界に目は無い。あるのは存在確率だけだな」

 意次は、意味不明なことを言った。

「存在確率?」
「そうだ。世界の存在確率に大きく影響するようなことをすると、世界から弾き出されたり消されたりするんだ」なんだって~っ?

「別の世界へ?」
「そうだ。多重世界の今の世界から弾き出される。別の世界へたどり着けるかどうかは分からない」

「よく分かりませんが」
「そうだな、すぐに分かれとは言わない。だが、近くで今宮が教えてくれるから大丈夫だ」

 本当に大丈夫だろうか? 麗華を見ると、うんと頷いた。いや、それじゃ納得できないぞ。

「かなり危ない気がしますけど?」
「そうか。いや、その気持ちは大事だぞ。実は、俺たちの仕事はその危険を回避することなんだ! この力でな!」

 神海意次は自分たちの仕事をそう説明した。
 この能力を使って神海一族の危機を回避するのが彼らの仕事らしい。

 もちろん、控えめにだ。
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