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4 薄い一族
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翌日、俺は麗華が作ってくれた昼ごはんを食べたあとコーヒーを飲んで寛いでいた。
だが、話題はやっぱり昨日の話になる。
「なぁ、あの能力を使わせてあげる代わりに付き合えってことじゃないよな?」
俺はちょっと気になっていたことを聞いた。
「そんなわけないでしょ? スイーツと一緒にお金もあげるようなものじゃない」
「え~と? お前ってスイーツなのか?」
「違うの?」
「スイーツです。ごめんなさい」
「自惚れは、身を亡ぼすわよ」
「ごめんって」
「ふふ。私と付き合うのが条件なのは、運命共同体つまり一緒に世界を渡るからだけど。それだけじゃないの」そう言って麗華は、ちょっと真顔になった。
「私はあなたが飛んでいる間、あなたを見守る必要があるのよ」
「飛んでる間?」
「未来にね」
「ああ、寝ている俺を見ているのか?」
「そう。あなたが安全に能力を発揮できるようにね」
「隣で寝てるだけかと思った」
「横で見守ってるのよ」
「そうなんだ。っていうか、あれって危険だったのか?」
「そりゃそうよ。リスクなしで、こんなこと出来るわけないでしょ?」
「そうか。ってことは、俺は俺の都合でお前に負担を掛けたってことだな?」
「今回はそうね。実は、私達一族にも影響があるの」
「まじか。そういうことは、最初に言ってくれよ」
「うん。でも、初めから言うと委縮しちゃうでしょ?」
「そうだけど」
「もちろん、今回のことは責任を感じなくていいのよ」
やっぱり大変な話らしい。
「俺の将来のために使っていい能力だったのか?」
「そりゃ、あなただけに利益があるようなことならダメね。今回のことは私や一族にもいい影響があるからいいの」
「そうなのか? 俺がその一族のためになるとは思えんが」
「この能力はね、個人の利益のために使うことは禁止されてるの。例えば、お金儲けに使うとか」
「えっ? 一番おいしいところだろ?」
「そうね。普通そう思うでしょ? だから問題なの。簡単に実現しちゃうから。そのために、この力を使うとね、消されるの」
「はっ? そ、組織に消されるのか?」そんなヤバイ組織なのか? マフィアとか?
「あはは。違う違う。そんな、優しい話じゃないの」と麗華。
マフィアの何処が優しいんだろう?
「世界から消されるの」
「へ? 世界?」
すると麗華は、俺に向き直ってから言った。
「私たちがいる、この世界から消されちゃうのよ」
「それって、俺がいなくなるってことか?」
「そうね」
「物理的に?」
「そう。ただし、今、意識がある世界からだけどね」
なんだかすごい話になって来た。
「ちょっとでも、利益を得ちゃだめなのか?」
「いえ、そういうことじゃないの。ただ、それを許すと切りが無いし、放っておくと世界に大きな影響が出る。そうなると、世界から消されることがあるって話。少なくとも、同じ世界にはいられなくなる」
宝くじを当てると、その代わり麗華がいなくなるとかいう話か? それは嫌だな。
「別の世界の俺も生きているのか?」俺はちょっと気になったので聞いてみた。
「私たちを知らないあなたはね」
なるほど。この一族とかかわった俺は、既に特別な存在になってしまったのか?
でも、まだ誤差の範囲だよな?
* * *
かなりヤバい話だと思った。
今宮麗華は『薄い存在確率の人間』?
って、どういうことだ? 超能力者とは違うようだ。
そもそも、俺にあんな凄い能力を使わせて良かったのか? 彼女に何の得があるというんだ?
「それは、私は龍一と一緒にいたいからよ」
うん、そうか。でへへ。おっと。
「でも、一族には何の得もないだろ?」
「そんなことないよ。一族に入って貰う訳だから」
「入って貰う?」
「私たち、一族の人間を増やしたいのよ」
「あぁ、なるほど」
確かにちゃんと付き合うって、そう言う意味もあるよな。
普通に男女の結婚とかでも昔はそういう意識だったようだが、この場合はもっと切実だな。
「私たちは特殊な一族だから存続させるのが難しいのよ。力を使いすぎると消されるし、仲間を増やさなくても滅亡するし」
「ああ、確かに人口を維持しないと文化は消滅するよな。そういう話だろ?」
「そういうこと。民族の文化を維持することが難しいの」
あの能力もその文化の一部ということか。
* * *
この日も麗華はそのまま帰っていった。
だが、一人になった俺は何もできずに考え込んでいた。
俺はどうすべきだろう?
確かに彼女は魅力的だし大切な人だ。失いたくはない。
だけど、普通に女と付き合うのとは違うのだ。
特殊な一族の一人なのだ。
それに、あの能力は中途半端な気持ちで使っていいような能力ではないようだ。
就職先を選ぶ手伝いをしてくれたのは嬉しいが、ここは付き合いを断るべきなんだろうか? あまり、深く関係する前に彼女とは別れるべきなんだろうか?
って、今更そんなこと可能なのか?
だが、話題はやっぱり昨日の話になる。
「なぁ、あの能力を使わせてあげる代わりに付き合えってことじゃないよな?」
俺はちょっと気になっていたことを聞いた。
「そんなわけないでしょ? スイーツと一緒にお金もあげるようなものじゃない」
「え~と? お前ってスイーツなのか?」
「違うの?」
「スイーツです。ごめんなさい」
「自惚れは、身を亡ぼすわよ」
「ごめんって」
「ふふ。私と付き合うのが条件なのは、運命共同体つまり一緒に世界を渡るからだけど。それだけじゃないの」そう言って麗華は、ちょっと真顔になった。
「私はあなたが飛んでいる間、あなたを見守る必要があるのよ」
「飛んでる間?」
「未来にね」
「ああ、寝ている俺を見ているのか?」
「そう。あなたが安全に能力を発揮できるようにね」
「隣で寝てるだけかと思った」
「横で見守ってるのよ」
「そうなんだ。っていうか、あれって危険だったのか?」
「そりゃそうよ。リスクなしで、こんなこと出来るわけないでしょ?」
「そうか。ってことは、俺は俺の都合でお前に負担を掛けたってことだな?」
「今回はそうね。実は、私達一族にも影響があるの」
「まじか。そういうことは、最初に言ってくれよ」
「うん。でも、初めから言うと委縮しちゃうでしょ?」
「そうだけど」
「もちろん、今回のことは責任を感じなくていいのよ」
やっぱり大変な話らしい。
「俺の将来のために使っていい能力だったのか?」
「そりゃ、あなただけに利益があるようなことならダメね。今回のことは私や一族にもいい影響があるからいいの」
「そうなのか? 俺がその一族のためになるとは思えんが」
「この能力はね、個人の利益のために使うことは禁止されてるの。例えば、お金儲けに使うとか」
「えっ? 一番おいしいところだろ?」
「そうね。普通そう思うでしょ? だから問題なの。簡単に実現しちゃうから。そのために、この力を使うとね、消されるの」
「はっ? そ、組織に消されるのか?」そんなヤバイ組織なのか? マフィアとか?
「あはは。違う違う。そんな、優しい話じゃないの」と麗華。
マフィアの何処が優しいんだろう?
「世界から消されるの」
「へ? 世界?」
すると麗華は、俺に向き直ってから言った。
「私たちがいる、この世界から消されちゃうのよ」
「それって、俺がいなくなるってことか?」
「そうね」
「物理的に?」
「そう。ただし、今、意識がある世界からだけどね」
なんだかすごい話になって来た。
「ちょっとでも、利益を得ちゃだめなのか?」
「いえ、そういうことじゃないの。ただ、それを許すと切りが無いし、放っておくと世界に大きな影響が出る。そうなると、世界から消されることがあるって話。少なくとも、同じ世界にはいられなくなる」
宝くじを当てると、その代わり麗華がいなくなるとかいう話か? それは嫌だな。
「別の世界の俺も生きているのか?」俺はちょっと気になったので聞いてみた。
「私たちを知らないあなたはね」
なるほど。この一族とかかわった俺は、既に特別な存在になってしまったのか?
でも、まだ誤差の範囲だよな?
* * *
かなりヤバい話だと思った。
今宮麗華は『薄い存在確率の人間』?
って、どういうことだ? 超能力者とは違うようだ。
そもそも、俺にあんな凄い能力を使わせて良かったのか? 彼女に何の得があるというんだ?
「それは、私は龍一と一緒にいたいからよ」
うん、そうか。でへへ。おっと。
「でも、一族には何の得もないだろ?」
「そんなことないよ。一族に入って貰う訳だから」
「入って貰う?」
「私たち、一族の人間を増やしたいのよ」
「あぁ、なるほど」
確かにちゃんと付き合うって、そう言う意味もあるよな。
普通に男女の結婚とかでも昔はそういう意識だったようだが、この場合はもっと切実だな。
「私たちは特殊な一族だから存続させるのが難しいのよ。力を使いすぎると消されるし、仲間を増やさなくても滅亡するし」
「ああ、確かに人口を維持しないと文化は消滅するよな。そういう話だろ?」
「そういうこと。民族の文化を維持することが難しいの」
あの能力もその文化の一部ということか。
* * *
この日も麗華はそのまま帰っていった。
だが、一人になった俺は何もできずに考え込んでいた。
俺はどうすべきだろう?
確かに彼女は魅力的だし大切な人だ。失いたくはない。
だけど、普通に女と付き合うのとは違うのだ。
特殊な一族の一人なのだ。
それに、あの能力は中途半端な気持ちで使っていいような能力ではないようだ。
就職先を選ぶ手伝いをしてくれたのは嬉しいが、ここは付き合いを断るべきなんだろうか? あまり、深く関係する前に彼女とは別れるべきなんだろうか?
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