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45 もう一人のツウ姫
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この世界のことは『ハワイ王国に転移した』から世界Hと呼ぶことにした。
そして、とりあえず城下町の飯屋で昼食をとり今後の対応を相談をすることにした。世界Sでコピーした和服モードがあるので楽だった。
「ノブタダはいなかったが、どうしよう? ハワイ王国へ帰るか?」やや小声でみんなに聞いてみた。
「私としては、ここでペニシリンの素材だけでも手に入れたいと思います。もう少し南下すればカビの種類も多くなるでしょう。もちろん、転移発光物質の苔も探せます」
「ハワイ王国に戻るより素材を集めやすいということか?」
「そうですね。前回の経験があるので見付け易いでしょう」
「ならば、わらわの家に来ればよかろう?」
「ツウ姫、ここは世界Sではないのですよ。ツウ姫が、もう一人いるかも知れません」メリスが事情を説明した。
「なんと。わらわがもう一人とな」
「そうです。困るでしょ?」
「何故じゃ?」ツウ姫は不思議そうに言った。
「え~っと、偽物だと言われます」
「わらわは、本物じゃ。別の世界のじゃが」ツウ姫は強気だ。
「だから、それを信用してもらえないというお話です」メリスも食い下がる。
「そうかのう。わらわが話せば、分かってくれると思うがのう」
言われてみれば、その通りだ。現に、今のツウ姫が納得しているんだし。
「案外面白いかもよ。ツウ姫の親父さんは偉い人らしいし」俺もちょっと興味が出た。
「ああ、それはあまり期待されても困るのじゃ。今の右大臣とは名誉職ではあるが実権は伴っておらんのじゃ」ちょっと残念そうに言った。
「まぁ、それでも地元で信頼されている人間というのは頼りになる。行ってみないか?」
「そうですね」メリスもその気になった。
「では、江戸湿地帯に寄って苔を採取していきましょう」
それを楽しそうに言うのはレジンだけだと思う。手伝いのシナノとセリーは、ちょっと微妙な表情だ。
仕方ない、今度は俺も手伝ってやろう。
その日は、仙台の城下町に泊まることにした。
* * *
翌日早く、俺たちは出発した。さすがに街中から飛び立つわけにはいかないからだ。人気のない森に入ってから飛び上がった。
季節は二月、まだまだ風邪やインフルエンザが流行る季節だ。俺たちは北風に煽られながら南下した。
途中、江戸湿地帯で苔を集めたが、人手もあるし前回の経験もあり素早く集めることが出来た。
一時間ほどで俺たちは再び飛び上がった。今度は京都に向かってひたすら飛ぶだけだ。懐かしい富士山や海岸線を眺めているだけで気が休まる。変わらないものはいいものだ。
俺たちは、一路西に向かって飛んだ。途中、琵琶湖でレジンが苔の採取をしたいと言い出した。あまり目立ってもいけないので琵琶湖の北にある小さな湖に降り、柳などに付いた苔を採取した。
* * *
京都へは東から入ることになった。
「ほれ、その二条と烏丸の交差しとるところを入るのじゃ」ツウ姫が説明する。
「なんだって?」
「だから、その二条と烏丸の……」
「いや、知らんし」
「そ、そうであったな。分かったのじゃ、ついてまいれ」ツウ姫、さっさと行ってしまった。
「仕方ない、もうバレバレだし、どうせ知られるんだ。さっさと降りてしまおう」
俺たちも、ツウ姫を追って下降した。行った先で何事も無ければいいが。
* * *
だが、行った先では当然のように大騒ぎをしていた。
ちょっと手前の上空に留まり、様子をみた。
「だから、先ほどから言っておろう。わらわはツウじゃ。右大臣藤原忠義が娘ツウじゃ。忘れたのかえ?」
門番と話しているのではない。いきなり邸内の庭だった。
「ツウ姫の事は忘れておりません。しかし、ツウ姫はここにおりますので」
見ると、話している男の後ろではツウ姫に似た少女がひとり、館の縁側に座っていた。
「そなたがツウだと言うのかえ?」
「はい。わたくしがツウで御座います」
少女は、ちょっとか細い声で言った。
見ると確かにツウ姫に似ているのだが、ツウ姫より細面で妹みたいな感じだった。
知らせを聞いたのか、そこへ奥から誰か出て来た。
「そなたは誰じゃ? 確かにツウに似ているが、ツウではないな?」
「父様」縁側にいたツウ姫が言った。面倒なので、もうツウ姫2でいいか。
出てきたのはこの家の主、藤原忠義のようだ。
「ち、父上!」俺たちのツウ姫が思わず呼びかけた。
「だから、そなたは誰じゃ?」
埒が明かないので、俺たちもツウ姫の横に降り立った。
「な、なんと」
「まぁ」
「おおおおおっ、こ、これは!」
先の男が一番うるさい。
「こら、与平。下がっておれ」どうも使用人らしい。
「へ、へいっ」そう言って、与平は奥に下がっていった。
一方、藤原忠義はその場で膝まづいた。
「この度は拙宅をご訪問いただき誠に光栄のきわみ……」
「ああ。タダヨシさん、そのような挨拶は結構です。俺たちは神ではありません。少しお話をさせて貰いたいのですが?」俺は早々に言った。
「は? こ、この忠義にで御座いますか? はい、分かりました。では、この奥で伺いましょう」
藤原忠義はそう言って俺たちを客間に案内した。
* * *
しかし、さすがに藤原忠義相手だとなかなか話が進まなかった。頭が固いとかではない。常識がしっかり入っているからだ。そこへ行くと若い人は違う。
「父様、この方々は遥々遠くの国から来られたのです。神界から来られたわけではありません」
「そ、そうなのか? いや、ここにあってここにない国と言えば、天国ではないのか?」
ああ、なるほど。これは、覆すのが難しいな。
「それを言えば、地獄もここにあることになります」
なんか、話がおかしな方向に行ってるんだが。
「じ、地獄から来られたのか?」
「いえ、どちらでもありません。他にも、世界が沢山あるのです」
とりあえず、地獄や天国を否定すると更にややこしくなるので無視した。
「そうなのですか? はて、天国と地獄以外には、ああ霊界ですかな?」そう来たか。手ごわいな。
「霊界でも黄泉の国でもありません。俺たちは全員生きていますから」
「ああ、そうですな。確かに、足もありますな」
「はい、この世には、合わせ鏡のように数限りない世界があるのです」
「ま、まことか」タダヨシ、思わず周りを見回す。見えませんよ。
「もちろん、普通はその世界へ行けませんし、そこから誰かが来ることもありません。俺たちだけです」
「さ、左様ですか」
そう言って、タダヨシは改めて俺たちとツウ姫を見る。
「し、失礼。確かに、別の世界のツウ姫やも。これほど母親に似た娘が他にいるとは思えませぬ。若き日の姿に瓜二つなれば」
なるほど、確かにこの男は若き日の母親の姿を知っているからな。
「では、母上はやはり」
「うむ。このツウを産んですぐに」
「そうであったか。そうであろうのう。仕方ないのぉ」
ツウ姫、思わず涙ぐんでしまった。
ツウ姫は少し期待していたようだ。もしかすると、この世界で母親に会えるのではないかと。
「姉さま。後で母様のお墓参りに参りましょう」ツウ姫2は、そんなことを言った。
「そうじゃの」ツウ姫は少し笑った。ツウ姫は母親にこそ会えなかったが、代わりに可愛い妹に出会えたようだ。実際、ツウ姫2は二つ年下だった。
この後は、嘘のように話が進んだ。
抗生物質の話をした時にはタダヨシも大いに感激し、是非協力させてほしいとまで言ってきた。
「そのような薬があるのですか! この忠義に出来ることならば、いかようにも致しますので、どうかよしなに」と、頭を下げられた。
やはり京都でも肺炎が蔓延しているようだ。連日朝廷内で大騒ぎだとのことだった。
そして、とりあえず城下町の飯屋で昼食をとり今後の対応を相談をすることにした。世界Sでコピーした和服モードがあるので楽だった。
「ノブタダはいなかったが、どうしよう? ハワイ王国へ帰るか?」やや小声でみんなに聞いてみた。
「私としては、ここでペニシリンの素材だけでも手に入れたいと思います。もう少し南下すればカビの種類も多くなるでしょう。もちろん、転移発光物質の苔も探せます」
「ハワイ王国に戻るより素材を集めやすいということか?」
「そうですね。前回の経験があるので見付け易いでしょう」
「ならば、わらわの家に来ればよかろう?」
「ツウ姫、ここは世界Sではないのですよ。ツウ姫が、もう一人いるかも知れません」メリスが事情を説明した。
「なんと。わらわがもう一人とな」
「そうです。困るでしょ?」
「何故じゃ?」ツウ姫は不思議そうに言った。
「え~っと、偽物だと言われます」
「わらわは、本物じゃ。別の世界のじゃが」ツウ姫は強気だ。
「だから、それを信用してもらえないというお話です」メリスも食い下がる。
「そうかのう。わらわが話せば、分かってくれると思うがのう」
言われてみれば、その通りだ。現に、今のツウ姫が納得しているんだし。
「案外面白いかもよ。ツウ姫の親父さんは偉い人らしいし」俺もちょっと興味が出た。
「ああ、それはあまり期待されても困るのじゃ。今の右大臣とは名誉職ではあるが実権は伴っておらんのじゃ」ちょっと残念そうに言った。
「まぁ、それでも地元で信頼されている人間というのは頼りになる。行ってみないか?」
「そうですね」メリスもその気になった。
「では、江戸湿地帯に寄って苔を採取していきましょう」
それを楽しそうに言うのはレジンだけだと思う。手伝いのシナノとセリーは、ちょっと微妙な表情だ。
仕方ない、今度は俺も手伝ってやろう。
その日は、仙台の城下町に泊まることにした。
* * *
翌日早く、俺たちは出発した。さすがに街中から飛び立つわけにはいかないからだ。人気のない森に入ってから飛び上がった。
季節は二月、まだまだ風邪やインフルエンザが流行る季節だ。俺たちは北風に煽られながら南下した。
途中、江戸湿地帯で苔を集めたが、人手もあるし前回の経験もあり素早く集めることが出来た。
一時間ほどで俺たちは再び飛び上がった。今度は京都に向かってひたすら飛ぶだけだ。懐かしい富士山や海岸線を眺めているだけで気が休まる。変わらないものはいいものだ。
俺たちは、一路西に向かって飛んだ。途中、琵琶湖でレジンが苔の採取をしたいと言い出した。あまり目立ってもいけないので琵琶湖の北にある小さな湖に降り、柳などに付いた苔を採取した。
* * *
京都へは東から入ることになった。
「ほれ、その二条と烏丸の交差しとるところを入るのじゃ」ツウ姫が説明する。
「なんだって?」
「だから、その二条と烏丸の……」
「いや、知らんし」
「そ、そうであったな。分かったのじゃ、ついてまいれ」ツウ姫、さっさと行ってしまった。
「仕方ない、もうバレバレだし、どうせ知られるんだ。さっさと降りてしまおう」
俺たちも、ツウ姫を追って下降した。行った先で何事も無ければいいが。
* * *
だが、行った先では当然のように大騒ぎをしていた。
ちょっと手前の上空に留まり、様子をみた。
「だから、先ほどから言っておろう。わらわはツウじゃ。右大臣藤原忠義が娘ツウじゃ。忘れたのかえ?」
門番と話しているのではない。いきなり邸内の庭だった。
「ツウ姫の事は忘れておりません。しかし、ツウ姫はここにおりますので」
見ると、話している男の後ろではツウ姫に似た少女がひとり、館の縁側に座っていた。
「そなたがツウだと言うのかえ?」
「はい。わたくしがツウで御座います」
少女は、ちょっとか細い声で言った。
見ると確かにツウ姫に似ているのだが、ツウ姫より細面で妹みたいな感じだった。
知らせを聞いたのか、そこへ奥から誰か出て来た。
「そなたは誰じゃ? 確かにツウに似ているが、ツウではないな?」
「父様」縁側にいたツウ姫が言った。面倒なので、もうツウ姫2でいいか。
出てきたのはこの家の主、藤原忠義のようだ。
「ち、父上!」俺たちのツウ姫が思わず呼びかけた。
「だから、そなたは誰じゃ?」
埒が明かないので、俺たちもツウ姫の横に降り立った。
「な、なんと」
「まぁ」
「おおおおおっ、こ、これは!」
先の男が一番うるさい。
「こら、与平。下がっておれ」どうも使用人らしい。
「へ、へいっ」そう言って、与平は奥に下がっていった。
一方、藤原忠義はその場で膝まづいた。
「この度は拙宅をご訪問いただき誠に光栄のきわみ……」
「ああ。タダヨシさん、そのような挨拶は結構です。俺たちは神ではありません。少しお話をさせて貰いたいのですが?」俺は早々に言った。
「は? こ、この忠義にで御座いますか? はい、分かりました。では、この奥で伺いましょう」
藤原忠義はそう言って俺たちを客間に案内した。
* * *
しかし、さすがに藤原忠義相手だとなかなか話が進まなかった。頭が固いとかではない。常識がしっかり入っているからだ。そこへ行くと若い人は違う。
「父様、この方々は遥々遠くの国から来られたのです。神界から来られたわけではありません」
「そ、そうなのか? いや、ここにあってここにない国と言えば、天国ではないのか?」
ああ、なるほど。これは、覆すのが難しいな。
「それを言えば、地獄もここにあることになります」
なんか、話がおかしな方向に行ってるんだが。
「じ、地獄から来られたのか?」
「いえ、どちらでもありません。他にも、世界が沢山あるのです」
とりあえず、地獄や天国を否定すると更にややこしくなるので無視した。
「そうなのですか? はて、天国と地獄以外には、ああ霊界ですかな?」そう来たか。手ごわいな。
「霊界でも黄泉の国でもありません。俺たちは全員生きていますから」
「ああ、そうですな。確かに、足もありますな」
「はい、この世には、合わせ鏡のように数限りない世界があるのです」
「ま、まことか」タダヨシ、思わず周りを見回す。見えませんよ。
「もちろん、普通はその世界へ行けませんし、そこから誰かが来ることもありません。俺たちだけです」
「さ、左様ですか」
そう言って、タダヨシは改めて俺たちとツウ姫を見る。
「し、失礼。確かに、別の世界のツウ姫やも。これほど母親に似た娘が他にいるとは思えませぬ。若き日の姿に瓜二つなれば」
なるほど、確かにこの男は若き日の母親の姿を知っているからな。
「では、母上はやはり」
「うむ。このツウを産んですぐに」
「そうであったか。そうであろうのう。仕方ないのぉ」
ツウ姫、思わず涙ぐんでしまった。
ツウ姫は少し期待していたようだ。もしかすると、この世界で母親に会えるのではないかと。
「姉さま。後で母様のお墓参りに参りましょう」ツウ姫2は、そんなことを言った。
「そうじゃの」ツウ姫は少し笑った。ツウ姫は母親にこそ会えなかったが、代わりに可愛い妹に出会えたようだ。実際、ツウ姫2は二つ年下だった。
この後は、嘘のように話が進んだ。
抗生物質の話をした時にはタダヨシも大いに感激し、是非協力させてほしいとまで言ってきた。
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