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14話 禁忌
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軋む木の階段を上がり、廊下の1番奥の部屋のドアを開けると、やや大きめの簡素なベッドと粗末な木製のテーブルと椅子があるだけで、寝るだけの部屋である事がうかがえた。
部屋の広さは、五十鈴が住んでいた安い1Kアパートよりは広い。
ドアの正面には大きな窓があり、外はどうやら通りに面しているようだった。
窓に近寄り締められいるカーテンを開けようとすると、ザッカスに手を止められてしまう。
仕方ないので、持っていた麻袋を部屋の隅に置き、所在無さ気に壁に凭れて立つ。
ザッカスからはまだ許可が出てないので、声を出す事が出来なくて、五十鈴は黙っているしかなかった。
ザッカスはザッカスで部屋の四隅周ってを指先で、複雑な動きで空を切る仕草をしていてる。
「もう、いいぞ」
何らかの作業が終わったらしく、漸く許可が出る。
大きな溜息を吐き出すと、腰に携えていた剣をベッド脇の壁に立てかけいるザッカスへと声がをかけた。
「ザッカス様、あの…私は何処に寝ればいいのでしょ?」
「ここに寝ろ」
ベッドに縁に腰をかけたザッカスは、ベッドを軽く叩いた。
いやいや、主人である彼を床になど寝かせてはならない。よし、自分が寝ようと五十鈴は決めて、ニッコリと笑って返事を誤魔化した。
「イスズ」
名前を呼ばれてどきりとした。ザッカスに名前を呼ばれた時は、必ず天然エロ攻撃に遭っている。気を引き締めて呼びかけに応える。
「はい、何でしょうか?」
「お前に、言っておく事がある」
ザッカスから2m程間取った正面の位置に椅子を置いて座る。
「少し離れ過ぎではないか?」
「気のせいです。で、お話は何でしょう?」
「人の居る場所で、俺の名を言ってはならぬ。俺の名前を言葉にする事は禁忌だ」
「禁忌…ですか…」
「文字にしてもならん」
禁忌だから故に、ザッカスでなく「ザック」という偽名を使っている事は納得は出来る。
問題は、何故禁忌であるかという事だ。それについても語られるのかと思っていたが、どうも話すつもりは無いようである。
そして、五十鈴は勝手に安易な推測をした。
あの天然エロ攻撃で、どこぞの高貴なご婦人らにでもメロメロにして勘違いさせて、その怒りでも買ったのだろうと。
本当は、心の奥底では薄々だが何となくわかっている気がしている。ただ今は知らない方がいいのだと感じていた。
「あと、お前は言葉が話せないふりを通せ。声を出すな。声で女とバレる。今後人前ではフードも被っておけ」
「はぁ…でも、返って怪しまれませんか?」
「怪しまれても、バレない方が重要だ。お前とて、まだ死にたくはなかろうて」
「わかりました。でも、もし人前でどうしてもザッカス様と話をしなければいけない時はどうすれば…」
「思念伝達を使え。俺の加護で使えるようになっている筈。伝えたい事があればそれを頭の中で言えば通じるし、会話も出来る」
ここは素直に、ザッカスに従っておくのがやはり得策だと考えて頷いた。
ザッカスの加護は高性能過ぎるとつくづく思い感心する。
「行くぞ」
「何処にですか?」
「食事だ。リリカの実しか食べておらんだろ」
おぉっ!と五十鈴の瞳が輝いた。
短時間に色々な事があり過ぎて、静かに眠っていたお腹の虫が目を覚ましたようだった。
剣を携えずに部屋を出ようとするザッカスに、モノは試しと五十鈴は思念伝達の練習をしてみた。
「おーい、天然エロおっさーん。剣、忘れていますよー」
「案ずるな、忘れてはおらん」
前を向いたままのザッカスから、即座に頭の中へと返事が来た。
思いのほか簡単に出来たと嬉しくなっていると、ザッカスの声が頭の中で響いた。
「泣かされたいなら覚悟しておけ」
「すみません、すみません、すみません」
問題無く思念伝達は使える事がよくわかった五十鈴であった。
部屋の広さは、五十鈴が住んでいた安い1Kアパートよりは広い。
ドアの正面には大きな窓があり、外はどうやら通りに面しているようだった。
窓に近寄り締められいるカーテンを開けようとすると、ザッカスに手を止められてしまう。
仕方ないので、持っていた麻袋を部屋の隅に置き、所在無さ気に壁に凭れて立つ。
ザッカスからはまだ許可が出てないので、声を出す事が出来なくて、五十鈴は黙っているしかなかった。
ザッカスはザッカスで部屋の四隅周ってを指先で、複雑な動きで空を切る仕草をしていてる。
「もう、いいぞ」
何らかの作業が終わったらしく、漸く許可が出る。
大きな溜息を吐き出すと、腰に携えていた剣をベッド脇の壁に立てかけいるザッカスへと声がをかけた。
「ザッカス様、あの…私は何処に寝ればいいのでしょ?」
「ここに寝ろ」
ベッドに縁に腰をかけたザッカスは、ベッドを軽く叩いた。
いやいや、主人である彼を床になど寝かせてはならない。よし、自分が寝ようと五十鈴は決めて、ニッコリと笑って返事を誤魔化した。
「イスズ」
名前を呼ばれてどきりとした。ザッカスに名前を呼ばれた時は、必ず天然エロ攻撃に遭っている。気を引き締めて呼びかけに応える。
「はい、何でしょうか?」
「お前に、言っておく事がある」
ザッカスから2m程間取った正面の位置に椅子を置いて座る。
「少し離れ過ぎではないか?」
「気のせいです。で、お話は何でしょう?」
「人の居る場所で、俺の名を言ってはならぬ。俺の名前を言葉にする事は禁忌だ」
「禁忌…ですか…」
「文字にしてもならん」
禁忌だから故に、ザッカスでなく「ザック」という偽名を使っている事は納得は出来る。
問題は、何故禁忌であるかという事だ。それについても語られるのかと思っていたが、どうも話すつもりは無いようである。
そして、五十鈴は勝手に安易な推測をした。
あの天然エロ攻撃で、どこぞの高貴なご婦人らにでもメロメロにして勘違いさせて、その怒りでも買ったのだろうと。
本当は、心の奥底では薄々だが何となくわかっている気がしている。ただ今は知らない方がいいのだと感じていた。
「あと、お前は言葉が話せないふりを通せ。声を出すな。声で女とバレる。今後人前ではフードも被っておけ」
「はぁ…でも、返って怪しまれませんか?」
「怪しまれても、バレない方が重要だ。お前とて、まだ死にたくはなかろうて」
「わかりました。でも、もし人前でどうしてもザッカス様と話をしなければいけない時はどうすれば…」
「思念伝達を使え。俺の加護で使えるようになっている筈。伝えたい事があればそれを頭の中で言えば通じるし、会話も出来る」
ここは素直に、ザッカスに従っておくのがやはり得策だと考えて頷いた。
ザッカスの加護は高性能過ぎるとつくづく思い感心する。
「行くぞ」
「何処にですか?」
「食事だ。リリカの実しか食べておらんだろ」
おぉっ!と五十鈴の瞳が輝いた。
短時間に色々な事があり過ぎて、静かに眠っていたお腹の虫が目を覚ましたようだった。
剣を携えずに部屋を出ようとするザッカスに、モノは試しと五十鈴は思念伝達の練習をしてみた。
「おーい、天然エロおっさーん。剣、忘れていますよー」
「案ずるな、忘れてはおらん」
前を向いたままのザッカスから、即座に頭の中へと返事が来た。
思いのほか簡単に出来たと嬉しくなっていると、ザッカスの声が頭の中で響いた。
「泣かされたいなら覚悟しておけ」
「すみません、すみません、すみません」
問題無く思念伝達は使える事がよくわかった五十鈴であった。
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