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13話 跳ねる馬亭
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無事に通過して入った街は、石造りの街並みで街道と同じ石畳の道が敷かれいる。
既に日は暮れて、辺りは薄暗くなっていた。 街灯らしき物は無く。行き交う人々は皆家路を急いでいる様に見えた。
辺りをよく見たいのだが、先に歩くザッカスの後を遅れず付いて歩くのがやっとで、その余裕が無い。
門番に言っていたギルドとやらに行くのだろうかと考えていたら、立ち止まったザッカスの背中にぶつかってしまい、少しばかり強く鼻を打つ。
「いたたた…」
鼻に手を当て、立ち止まったザッカスを見れば、大きな木のドアへと顔を向けていた。ドアからは何やら楽しげに賑わう人々の声が漏れくる。
ドアの上には看板があり、見た事がない文字らしきものが書かれていた。
『跳ねる馬亭』……おぉ、読める!
本当に読める!加護凄いわぁー!
目を見開いて、看板に目が釘付けになる。
ここは食堂か酒場だから、賑やかな声がしてくるのだ理解した。
「暫くお前は口を開くな、頷くだけでいい」
「は、はい?」
早速声を出してしまい、咎める様に闇色の瞳が自分に向けられると、五十鈴は小さく頭を下げた。
ザッカスがドアを開けて中に入ると、続いて五十鈴も中に入る。
賑やかな声は、ザッカスの登場により消えた。これは良くない雰囲気だと内心ヒヤヒヤとしながらも、気にも止めてない様子の彼の後ろから離れない様にくっつく。
酒場らしく、6個の木製の丸テーブルの席には様々な年齢層の男たちが座り、木製のジョッキで酒を飲んいた様だが、今は一斉にアイザックへと視線が注がられている。
ハゲあがってでっぷりとした体格で厳つい顔をマスターらしき男が、カウンターに手を付いて近づくザッカスを睨んでいた。
カウンターの前に立つと、ザッカスは懐から金貨1枚を取り出して投げ置いた。
マスターの顔が一瞬険しくなったと思った瞬間に、マスターの太い豪快な笑い声が店の中に響き渡る。
「よう、ザックの旦那。久し振りじゃねぇか。ここ数年見ねぇからくたばったんじゃねぇかと思ってたんだが、生きてたんだなぁ」
見た目とは裏腹に陽気で気さくらしく、表情の無いザッカスへと親しげに声をかけた。
「ザック」と名前を呼ぶマスターに違和感を感じながら五十鈴は黙って聞いている。
店内の客たちは、マスターの言葉を耳した途端また賑やかさを取り戻し始める。
マスターの厳つい顔が自分に向けられて、五十鈴と目が合い、条件反射的に五十鈴はマスターに軽く頭を下げた。
「ザックの旦那、あんたアッチの趣味にでも目覚めのかい?」
「そう見えるか?」
「そりゃ、随分と小綺麗なあんな坊主を連れてんだ、そう思われたって仕方ねぇさな。それにアッチはハマるらしいからな。堅物の旦那だってハマるかもしれねぇだろ。まぁ、冗談はさて置き、部屋なら1番奥の1つしか空いてねぇがどうする?」
「構わん。用があればこちらから声をかける」
「わかってるって、こっちだって死にたかねぇからな。近寄らねぇ様に店の者にも客にもよーく言い含めておくさな」
金貨1枚をホクホク顔で手にするマスターは、2階に上がる2人の後ろ姿を見送り、大声で店内中に響く様に叫ぶ。
「てめぇら、わかってるな!あの旦那の部屋に近寄るんじゃねぇぞ!興味半分で聞き耳でも立てようもんなら、その耳だけじゃなく頭まで無くなるから覚悟しとけっ!」
何やらかなり物騒な事を叫んでるマスターに、五十鈴は聞かなかった事にしようと苦笑いして心に決めた。
既に日は暮れて、辺りは薄暗くなっていた。 街灯らしき物は無く。行き交う人々は皆家路を急いでいる様に見えた。
辺りをよく見たいのだが、先に歩くザッカスの後を遅れず付いて歩くのがやっとで、その余裕が無い。
門番に言っていたギルドとやらに行くのだろうかと考えていたら、立ち止まったザッカスの背中にぶつかってしまい、少しばかり強く鼻を打つ。
「いたたた…」
鼻に手を当て、立ち止まったザッカスを見れば、大きな木のドアへと顔を向けていた。ドアからは何やら楽しげに賑わう人々の声が漏れくる。
ドアの上には看板があり、見た事がない文字らしきものが書かれていた。
『跳ねる馬亭』……おぉ、読める!
本当に読める!加護凄いわぁー!
目を見開いて、看板に目が釘付けになる。
ここは食堂か酒場だから、賑やかな声がしてくるのだ理解した。
「暫くお前は口を開くな、頷くだけでいい」
「は、はい?」
早速声を出してしまい、咎める様に闇色の瞳が自分に向けられると、五十鈴は小さく頭を下げた。
ザッカスがドアを開けて中に入ると、続いて五十鈴も中に入る。
賑やかな声は、ザッカスの登場により消えた。これは良くない雰囲気だと内心ヒヤヒヤとしながらも、気にも止めてない様子の彼の後ろから離れない様にくっつく。
酒場らしく、6個の木製の丸テーブルの席には様々な年齢層の男たちが座り、木製のジョッキで酒を飲んいた様だが、今は一斉にアイザックへと視線が注がられている。
ハゲあがってでっぷりとした体格で厳つい顔をマスターらしき男が、カウンターに手を付いて近づくザッカスを睨んでいた。
カウンターの前に立つと、ザッカスは懐から金貨1枚を取り出して投げ置いた。
マスターの顔が一瞬険しくなったと思った瞬間に、マスターの太い豪快な笑い声が店の中に響き渡る。
「よう、ザックの旦那。久し振りじゃねぇか。ここ数年見ねぇからくたばったんじゃねぇかと思ってたんだが、生きてたんだなぁ」
見た目とは裏腹に陽気で気さくらしく、表情の無いザッカスへと親しげに声をかけた。
「ザック」と名前を呼ぶマスターに違和感を感じながら五十鈴は黙って聞いている。
店内の客たちは、マスターの言葉を耳した途端また賑やかさを取り戻し始める。
マスターの厳つい顔が自分に向けられて、五十鈴と目が合い、条件反射的に五十鈴はマスターに軽く頭を下げた。
「ザックの旦那、あんたアッチの趣味にでも目覚めのかい?」
「そう見えるか?」
「そりゃ、随分と小綺麗なあんな坊主を連れてんだ、そう思われたって仕方ねぇさな。それにアッチはハマるらしいからな。堅物の旦那だってハマるかもしれねぇだろ。まぁ、冗談はさて置き、部屋なら1番奥の1つしか空いてねぇがどうする?」
「構わん。用があればこちらから声をかける」
「わかってるって、こっちだって死にたかねぇからな。近寄らねぇ様に店の者にも客にもよーく言い含めておくさな」
金貨1枚をホクホク顔で手にするマスターは、2階に上がる2人の後ろ姿を見送り、大声で店内中に響く様に叫ぶ。
「てめぇら、わかってるな!あの旦那の部屋に近寄るんじゃねぇぞ!興味半分で聞き耳でも立てようもんなら、その耳だけじゃなく頭まで無くなるから覚悟しとけっ!」
何やらかなり物騒な事を叫んでるマスターに、五十鈴は聞かなかった事にしようと苦笑いして心に決めた。
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