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4話 五十鈴
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地下の様な薄暗い冷たい石造りの広い部屋の中、肘掛けのある豪奢な椅子に目を閉じて座るザッカス。
部屋着なのか簡素な黒いローブを纏い、長い脚を組み肘掛けに片肘をついて頰杖にしていた。
一見眠いっている様に見えるが、ザッカスは 目を閉じているだけであった。
誰も居ない広い部屋の中でただ1人。
ふとその片眉がピクリと動き、静かに双眸が開かれた。
闇色の瞳が何かを見つけたのか異様に光る。
その気配を察したのか、どこからもなく初老の紳士が現れ恭しく頭を下げた。
「お出かけでしょうか?」
老紳士の問いかけに、頷くだけでの返事をすると椅子か徐に立ち上がると、その身が赤黒い霧が包む。
霧が消え去ると、ザッカスの身には闇色のフルプレートが纏われ剣を腰に携えてた姿へと変わっていた。
老紳士は何事もなかった様に、再び主人であるザッカスへと恭しく頭を下げる。
老紳士の見送りに何の言葉をかける事も無く、彼の周りには再び赤黒い霧が立ち上り包む込むと、その姿は消えた。
緩やかな風と明るい陽射しのセスの草原に、赤黒い霧が現れると同時に、ザッカスの姿も現れる。
彼の視線の先はすぐ下にある柔らかい緑豊かな草群へと向けられ、その草群の中に眠る人間へと移動した。
異質な衣装を身に纏い、雑嚢と思われる茶色の革の様なものが傍にある。
片膝を着いて、眠る人間を覗き込む。
短い髪は黒い。
だが自分の髪とは違う黒。
身体の線の細さから男では無い事は容易にわかった。
涙の跡がうかがえる顔は、整ってはいるもののこちらの世界では珍しい顔立ち。
まだ若く10代後半ぐらいに見えた。
異世界から流されて来た者に間違いないと確信する。
夕暮れが近く陽が傾き始めた事に、ザッカスは目を細めると、眠っている人間・五十鈴を肩に担ぎ茶色の雑嚢らしき物を手にして、歩き始める。
陽が暮れる頃には、黒の森の奥に入り結界を張ると五十鈴を下ろし雑嚢をその傍に置いて、焚火に必要な木の枝を集めて、焚火を作り静かに五十鈴が眠りから目覚めるのを待った。ザッカスにとって待つ事は苦痛ではない。数時間経とうが数日経とうがザッカスからしてみれば、ほんの一瞬の一時でしか無いのだから。
目覚めてからの五十鈴の様子をザッカスは観察していた。物珍しさくる好奇心では無く、東條五十鈴という異世界の人間の人間性を知る為である。
過去に異世界の世界から流された人間とは何度か遭遇した事があり、自分達が戻る事が出来ないと知ると精神が壊れる者や自らの命を絶つ者や魔物に喰われて死ぬ者ばかりであった。
五十鈴にも帰れぬ事実を告げた。
当然の如く、絶望と悲しみがその瞳に宿り項垂れた。
だが、ザッカスにはそんな彼女の中に自分と 同じ闇の影と微かではあるが金色の光が見えた。
そして、彼は告げたのである。
「俺の庇護下に入れ」
部屋着なのか簡素な黒いローブを纏い、長い脚を組み肘掛けに片肘をついて頰杖にしていた。
一見眠いっている様に見えるが、ザッカスは 目を閉じているだけであった。
誰も居ない広い部屋の中でただ1人。
ふとその片眉がピクリと動き、静かに双眸が開かれた。
闇色の瞳が何かを見つけたのか異様に光る。
その気配を察したのか、どこからもなく初老の紳士が現れ恭しく頭を下げた。
「お出かけでしょうか?」
老紳士の問いかけに、頷くだけでの返事をすると椅子か徐に立ち上がると、その身が赤黒い霧が包む。
霧が消え去ると、ザッカスの身には闇色のフルプレートが纏われ剣を腰に携えてた姿へと変わっていた。
老紳士は何事もなかった様に、再び主人であるザッカスへと恭しく頭を下げる。
老紳士の見送りに何の言葉をかける事も無く、彼の周りには再び赤黒い霧が立ち上り包む込むと、その姿は消えた。
緩やかな風と明るい陽射しのセスの草原に、赤黒い霧が現れると同時に、ザッカスの姿も現れる。
彼の視線の先はすぐ下にある柔らかい緑豊かな草群へと向けられ、その草群の中に眠る人間へと移動した。
異質な衣装を身に纏い、雑嚢と思われる茶色の革の様なものが傍にある。
片膝を着いて、眠る人間を覗き込む。
短い髪は黒い。
だが自分の髪とは違う黒。
身体の線の細さから男では無い事は容易にわかった。
涙の跡がうかがえる顔は、整ってはいるもののこちらの世界では珍しい顔立ち。
まだ若く10代後半ぐらいに見えた。
異世界から流されて来た者に間違いないと確信する。
夕暮れが近く陽が傾き始めた事に、ザッカスは目を細めると、眠っている人間・五十鈴を肩に担ぎ茶色の雑嚢らしき物を手にして、歩き始める。
陽が暮れる頃には、黒の森の奥に入り結界を張ると五十鈴を下ろし雑嚢をその傍に置いて、焚火に必要な木の枝を集めて、焚火を作り静かに五十鈴が眠りから目覚めるのを待った。ザッカスにとって待つ事は苦痛ではない。数時間経とうが数日経とうがザッカスからしてみれば、ほんの一瞬の一時でしか無いのだから。
目覚めてからの五十鈴の様子をザッカスは観察していた。物珍しさくる好奇心では無く、東條五十鈴という異世界の人間の人間性を知る為である。
過去に異世界の世界から流された人間とは何度か遭遇した事があり、自分達が戻る事が出来ないと知ると精神が壊れる者や自らの命を絶つ者や魔物に喰われて死ぬ者ばかりであった。
五十鈴にも帰れぬ事実を告げた。
当然の如く、絶望と悲しみがその瞳に宿り項垂れた。
だが、ザッカスにはそんな彼女の中に自分と 同じ闇の影と微かではあるが金色の光が見えた。
そして、彼は告げたのである。
「俺の庇護下に入れ」
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