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41話
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あー…寝起き最悪…。
どんよりとした気分が全身を包んで重く感じる。
今日はもう1日ベッドでごろごろしたい。
仕事休みたーい。
誰にも会いたくなーい。
いやいや、そういう訳にはいかないっ!
フリオさんに迷惑をかけた分、いつも以上に仕事を頑張らねばっ。
もそもそとベッドから出て、気分転換も兼ねて自己鍛錬に時間をかけて汗を流すと、不思議とどんよりとした気分が晴れていく。
やっぱ身体を動かすのって気持ちいい。
前世じゃ、動きたくても動けなかったからなぁ。こうして自由に動かせる身体はありがたいよなぁ。
シャワーで汗を流し身支度を済ませて、玄関のドアを開くといつものように1輪の花が置かれている。
今日は紫の…ヒヤシンス?これは初めてだな。
ヒヤシンスかぁ…前世で小学の頃、理科で水耕栽培したなぁ。懐かしー。
俺、花言葉とかあまり詳しくはないんだけど、これだけは知ってるんだよなぁ。
確か「悲しみ」「悲哀」とかだ…うっ、一気にブルーな気持ちに…。
あ、でも別の花言葉もあったよなぁ。
前世の俺が紫のヒヤシンスを前にして、友だちと喧嘩して今と同じようにブルーな気持ちになっていると母さんが笑いながら教えてくれたっけ。
あぁ、そうだ。「I’m sorry」ごめんなさいだ。
「自分から仲直りしたいけど謝る言葉がどうしても出ない時に贈るのもいいわね。だけど花言葉を皆んなが皆んな知っているとは限らないから、やっぱりちゃんと言葉にした方が1番いいんだけどね」
前世の母さんの笑顔と言葉が記憶の底から甦ってくる。
うーん…でも、ドライアドがそういう意味で青いヒヤシンスを置いたとは到底思えない。
第一にドライアドは何も謝る事してねーもんな。
まぁ、意味はないな。
グティエレス邸の広間の片付けを手伝うつもりで、広間に行くとあまり会いたくないアルベルトさんをイネスさん・ダフネちゃん・エディさんの3人が囲んでいた。少し離れてフリオさんが困り果てた顔をして立っていた。
早朝から皆で何をしているのかと近寄ろうとしたら、フリオさんが俺に気づいて何やら手を振ってジェスチャーを送ってきた。
どうやら今はこっちに来るなって意味らしく、どうやら俺には聞かせたくないらしい。
取り敢えず頷いて一旦は広間から出たけど…。
気になるっ!
俺に関することなら、尚更だ。
スキル『ハイド』を使って広間へと入り込んで、
皆のいる所に近寄った。
「馬鹿じゃないですか?」
「馬鹿です」
「馬鹿としか言いようがないね」
え…。
なに…3人がかりで主人を馬鹿責め?
「折角皆んなで話し合ってお膳立てしたのに、何でぶち壊すんですか?」
「聞いてないのに、わかる訳ないだろ」
「旦那様が遠征訓練でお疲れだと思って、少しでも癒されるかと思って綺麗にしたのに…酷いです」
「焦ったいから少しは進展するかと思ったんだけどねぇ」
えーと…何の話をしてんですかね?
「逆ギレとかないですね」
「ないです」
「ありえないねぇ」
「失礼ですが、私もないかと思います」
ありゃ、フリオさんも参戦か?!
「どんだけ独占欲が強いんですか?まだ自分から何もしてないのに剥き出しにして…ホント馬鹿ですよね」
「旦那様はいい歳をした大人なのに、大人の余裕がなさ過ぎです」
「大人の余裕って…ダフネはまだ子供だろ。知ったかぶりはやめなさい」
「ダフネはもう17ですよ。旦那様よりは余程大人だと母親の私でも思いますけどねぇ」
ウンウンって皆頷いてるんだけど…アルベルトさん…何とも言えない微妙な顔してんな。
「嫌われても仕方ないでしょ。嫉妬で逆ギレしてビッチ扱いして、言い返されて更に逆ギレして強引にキスとか…最低ですね。スルさんが夜遊びとかしないで毎日規則正しい生活してるのは皆知ってます」
えっ!
何で昨日のこと知ってんの?!
あ…フリオさんか…見られてたの…か…あははは…。
「ちょっと待て、なんだその「スルさん」というのはっ」
「また嫉妬ですか?器が小さ過ぎです。私は旦那様とは違ってスルさんとは互いに愛称で呼び合う友だちですから、愛称呼びして何か問題でもありますか?」
「え~エッダさん、いいなぁ…私も「スルさん」って愛称呼びしたい」
「ダフネなら大丈夫よ、スルさんに会ったら自分で聞いてごらんなさいな。あ、旦那様は無理ですから聞かないで下さい」
「うん、そうしてみるね」
ダフネちゃんは可愛いから、当然OKさっ!
「失礼しました、話が逸れました。スルさんを庇護するとか言って手元に囲ってこれで自分の物だと余裕ぶっていたんでしょうけど、それは大人の余裕じゃなくて単なる身勝手な傲慢ですね。ちゃんとスルさんに謝って下さい。謝ってももう手遅れでしょうけど。本当、投げ飛ばされていい気味です」
「エッダ…おい…何故お前が…泣くんだ」
「はぁ?当たり前じゃないですか。大切な友だちが傷つけらたら悲しいじゃないですか。悔しいじゃないですか。それに旦那様とスルさんが上手くいけばいいなと思った自分が情けないんですよ」
エディさん…俺を本気で友だちと思ってくれてたんだ…。
涙を滲ませてアルベルトさんを睨みつけているエディさんの気持ちが嬉しい。
「すみません、かなり感情的になりました。旦那様はさっさとスルさんに謝罪と告白してあっさり振られて下さい。それでスルさんがこの屋敷を出て行っても仕方ないです。スルさんなら旦那様のような最低男よりもっと優しくて素敵な方がお似合いです」
「坊ちゃん、スルジュ君の事は諦めた方がいいですね。エッダの言う通りだよ。あんないい子を貶めて…男として最低だよ。坊ちゃんにはスルジュ君は勿体なさすぎますよ」
「私もエッダさんとお母さんと同じです。旦那様は最低のクズ男です。スルジュさんに非はないのにお気の毒です」
「アルベルト様、今回ばかりは私もアルベルト様の肩を持つ気にはなれません。スルジュ君を見初められた時は、こんないい子を…と嬉しく思っていましたが…残念です」
えーと…ちょっと待って。
あのさ、要するにアルベルトさんは俺が好きってこと?
で、それは皆んな知っていて、アルベルトさんと俺をくっつけようとしてた訳?
んでもって、昨日は久しぶりに帰ってくるアルベルトさんを喜ばせようとして皆んなが俺をちょっと小綺麗な格好にさせてたけど、人前に出て愛想振り撒いたもんだから、嫉妬のあまり逆ギレからの逆上で俺をビッチ呼ばわりしたと?
フリオさんが言っていた「此方の配慮」ってそういう意味だったのか。
うわぁ…サイテー。
エディさんじゃないけど、器ちっさ!!
それで非難轟々な訳か…なるほど…。
「頭に血が上って我を忘れたとは言え、彼には酷いことを言って酷いことをしたと思っている。エッダの言う通りだ。俺は調子に乗り過ぎていた。俺の庇護下に入った途端に彼はもう自分の物だ、どうとでもなると驕っていた。彼に投げ飛ばされて正気に戻ったが…レーヴ卿にまた嫉妬し対抗しようと彼の意思を無視して物扱いにまでしていた…俺は本当に…最低だな」
うん、間違いなく最低だ。それは俺が保証しよう。
まぁ、男としては最低だけど、人としては最低じゃないからまだマシな方だけどな。
「反省はしている。だが、おかしいんだ…俺はこうも嫉妬深くて逆上して分別を無くす男だったか?自分でもよくわからないが、何か変なんだ…お前たちも冷静になってよく考えてみてくれ。変だと思わないか?」
ん?
どゆこと?
真剣な面持ちで顎に手をかけて考え込んでいるアルベルトさんからはそれが只の言い訳を言っているようには見えない。
それはエディさんたちも同じだったみたいで、互いに顔を見合わせる。
「確かに…変ですね。旦那様は確かに脳筋ですが、どんな状況でも我を忘れて人を貶めるような暴言は言いませんよね…。そもそも悪意を持って人を悪く言うこと自体ないですね」
「そうだねぇ、坊ちゃんは昔からあまり人に対して羨み妬むってことはなかったですよねぇ。人は人自分は自分って感じでマイペースだったし…」
「旦那様は…こう…スパって割切りが早い方で、人に粘着質的に絡む方ではないですよね」
「言われて思い出してみれば、あの時のアルベルト様の目というか表情は…尋常ではなかった気が…嫉妬に狂ったと言うより、何かに取り憑かれたと言った感じでしたね…」
うーむ…なるほど、なるほど。
なんとなーくわかった気がする。
俺の勘が当たっているか、先ずは鑑定スキルでアルベルトさんのステータスをちょっくら拝見致しましょうかね。
潜伏したまま胡座をかいて座り、アルベルトさんのステータス画面が、俺の目の前に現れると直ぐに状態異常が表示される欄へと目を走らせる。
ビンゴ!大当たりだ!
アルベルトさん、やっぱりどっかで呪いを貰ってるわ。
状態異常の欄には見事に呪いを表す髑髏マークが付いていた。
呪いのレベル次第では解呪アイテムでは解呪出来ないんだよなぁ。
高レベルな呪いは何処かの教会の司教…って言っても全体的に弱体化しているこの時代じゃ、解除は期待出来ないかぁ…。せめて大司教ぐらいじゃないと厳しそうだなぁ。
更に鑑定スキルを使って、かけられている呪いを分析してみると…3つの呪いが融合して色々な余波まで出ている感じだ。
呪いの内容は…
1つ目は、『嫉妬』
2つ目は、『傲慢』
3つ目は、『色欲』
呪いのレベルはLv9。
マジかよっ!レベル高っ!
ハイ、大司教でもどうにも出来ないヤツきたぁぁぁ!!
しかも、この系統って…アレだよな…。
もしこの呪いが名君な王様にかかっていたら、ある日いきなり暴君に大変身っ!「今日から張り切って国を滅ぼしちゃうからねっ!てへっ」てな感じだ。
アルベルトさん、色々と恨まれてんのね。
しかしまぁ…よくこの状態で精神の平静が保たれてんなぁ。それに自分で異変が気づけるとはね。
普通なら精神に異常を来して発狂しててもおかしくないレベルだぞ。
呪いを抑制出来るだけの強い精神力を持ってるってことか…。
さて、どうする。
Lv1~3なら解呪アイテムは効果有りだが、Lv9なら当然効果無し。
Lv7までなら大司教で解呪可能。
それ以上になると…枢機卿だ。だけど中途半端なLvだと高レベルの呪いを解呪するスキル自体が使えないからなぁ。
そもそもLv80オーバーの枢機卿がこの時代に存在してるのか?
存在してない気がする…。
やっぱ俺しかいないってことか。
どんよりとした気分が全身を包んで重く感じる。
今日はもう1日ベッドでごろごろしたい。
仕事休みたーい。
誰にも会いたくなーい。
いやいや、そういう訳にはいかないっ!
フリオさんに迷惑をかけた分、いつも以上に仕事を頑張らねばっ。
もそもそとベッドから出て、気分転換も兼ねて自己鍛錬に時間をかけて汗を流すと、不思議とどんよりとした気分が晴れていく。
やっぱ身体を動かすのって気持ちいい。
前世じゃ、動きたくても動けなかったからなぁ。こうして自由に動かせる身体はありがたいよなぁ。
シャワーで汗を流し身支度を済ませて、玄関のドアを開くといつものように1輪の花が置かれている。
今日は紫の…ヒヤシンス?これは初めてだな。
ヒヤシンスかぁ…前世で小学の頃、理科で水耕栽培したなぁ。懐かしー。
俺、花言葉とかあまり詳しくはないんだけど、これだけは知ってるんだよなぁ。
確か「悲しみ」「悲哀」とかだ…うっ、一気にブルーな気持ちに…。
あ、でも別の花言葉もあったよなぁ。
前世の俺が紫のヒヤシンスを前にして、友だちと喧嘩して今と同じようにブルーな気持ちになっていると母さんが笑いながら教えてくれたっけ。
あぁ、そうだ。「I’m sorry」ごめんなさいだ。
「自分から仲直りしたいけど謝る言葉がどうしても出ない時に贈るのもいいわね。だけど花言葉を皆んなが皆んな知っているとは限らないから、やっぱりちゃんと言葉にした方が1番いいんだけどね」
前世の母さんの笑顔と言葉が記憶の底から甦ってくる。
うーん…でも、ドライアドがそういう意味で青いヒヤシンスを置いたとは到底思えない。
第一にドライアドは何も謝る事してねーもんな。
まぁ、意味はないな。
グティエレス邸の広間の片付けを手伝うつもりで、広間に行くとあまり会いたくないアルベルトさんをイネスさん・ダフネちゃん・エディさんの3人が囲んでいた。少し離れてフリオさんが困り果てた顔をして立っていた。
早朝から皆で何をしているのかと近寄ろうとしたら、フリオさんが俺に気づいて何やら手を振ってジェスチャーを送ってきた。
どうやら今はこっちに来るなって意味らしく、どうやら俺には聞かせたくないらしい。
取り敢えず頷いて一旦は広間から出たけど…。
気になるっ!
俺に関することなら、尚更だ。
スキル『ハイド』を使って広間へと入り込んで、
皆のいる所に近寄った。
「馬鹿じゃないですか?」
「馬鹿です」
「馬鹿としか言いようがないね」
え…。
なに…3人がかりで主人を馬鹿責め?
「折角皆んなで話し合ってお膳立てしたのに、何でぶち壊すんですか?」
「聞いてないのに、わかる訳ないだろ」
「旦那様が遠征訓練でお疲れだと思って、少しでも癒されるかと思って綺麗にしたのに…酷いです」
「焦ったいから少しは進展するかと思ったんだけどねぇ」
えーと…何の話をしてんですかね?
「逆ギレとかないですね」
「ないです」
「ありえないねぇ」
「失礼ですが、私もないかと思います」
ありゃ、フリオさんも参戦か?!
「どんだけ独占欲が強いんですか?まだ自分から何もしてないのに剥き出しにして…ホント馬鹿ですよね」
「旦那様はいい歳をした大人なのに、大人の余裕がなさ過ぎです」
「大人の余裕って…ダフネはまだ子供だろ。知ったかぶりはやめなさい」
「ダフネはもう17ですよ。旦那様よりは余程大人だと母親の私でも思いますけどねぇ」
ウンウンって皆頷いてるんだけど…アルベルトさん…何とも言えない微妙な顔してんな。
「嫌われても仕方ないでしょ。嫉妬で逆ギレしてビッチ扱いして、言い返されて更に逆ギレして強引にキスとか…最低ですね。スルさんが夜遊びとかしないで毎日規則正しい生活してるのは皆知ってます」
えっ!
何で昨日のこと知ってんの?!
あ…フリオさんか…見られてたの…か…あははは…。
「ちょっと待て、なんだその「スルさん」というのはっ」
「また嫉妬ですか?器が小さ過ぎです。私は旦那様とは違ってスルさんとは互いに愛称で呼び合う友だちですから、愛称呼びして何か問題でもありますか?」
「え~エッダさん、いいなぁ…私も「スルさん」って愛称呼びしたい」
「ダフネなら大丈夫よ、スルさんに会ったら自分で聞いてごらんなさいな。あ、旦那様は無理ですから聞かないで下さい」
「うん、そうしてみるね」
ダフネちゃんは可愛いから、当然OKさっ!
「失礼しました、話が逸れました。スルさんを庇護するとか言って手元に囲ってこれで自分の物だと余裕ぶっていたんでしょうけど、それは大人の余裕じゃなくて単なる身勝手な傲慢ですね。ちゃんとスルさんに謝って下さい。謝ってももう手遅れでしょうけど。本当、投げ飛ばされていい気味です」
「エッダ…おい…何故お前が…泣くんだ」
「はぁ?当たり前じゃないですか。大切な友だちが傷つけらたら悲しいじゃないですか。悔しいじゃないですか。それに旦那様とスルさんが上手くいけばいいなと思った自分が情けないんですよ」
エディさん…俺を本気で友だちと思ってくれてたんだ…。
涙を滲ませてアルベルトさんを睨みつけているエディさんの気持ちが嬉しい。
「すみません、かなり感情的になりました。旦那様はさっさとスルさんに謝罪と告白してあっさり振られて下さい。それでスルさんがこの屋敷を出て行っても仕方ないです。スルさんなら旦那様のような最低男よりもっと優しくて素敵な方がお似合いです」
「坊ちゃん、スルジュ君の事は諦めた方がいいですね。エッダの言う通りだよ。あんないい子を貶めて…男として最低だよ。坊ちゃんにはスルジュ君は勿体なさすぎますよ」
「私もエッダさんとお母さんと同じです。旦那様は最低のクズ男です。スルジュさんに非はないのにお気の毒です」
「アルベルト様、今回ばかりは私もアルベルト様の肩を持つ気にはなれません。スルジュ君を見初められた時は、こんないい子を…と嬉しく思っていましたが…残念です」
えーと…ちょっと待って。
あのさ、要するにアルベルトさんは俺が好きってこと?
で、それは皆んな知っていて、アルベルトさんと俺をくっつけようとしてた訳?
んでもって、昨日は久しぶりに帰ってくるアルベルトさんを喜ばせようとして皆んなが俺をちょっと小綺麗な格好にさせてたけど、人前に出て愛想振り撒いたもんだから、嫉妬のあまり逆ギレからの逆上で俺をビッチ呼ばわりしたと?
フリオさんが言っていた「此方の配慮」ってそういう意味だったのか。
うわぁ…サイテー。
エディさんじゃないけど、器ちっさ!!
それで非難轟々な訳か…なるほど…。
「頭に血が上って我を忘れたとは言え、彼には酷いことを言って酷いことをしたと思っている。エッダの言う通りだ。俺は調子に乗り過ぎていた。俺の庇護下に入った途端に彼はもう自分の物だ、どうとでもなると驕っていた。彼に投げ飛ばされて正気に戻ったが…レーヴ卿にまた嫉妬し対抗しようと彼の意思を無視して物扱いにまでしていた…俺は本当に…最低だな」
うん、間違いなく最低だ。それは俺が保証しよう。
まぁ、男としては最低だけど、人としては最低じゃないからまだマシな方だけどな。
「反省はしている。だが、おかしいんだ…俺はこうも嫉妬深くて逆上して分別を無くす男だったか?自分でもよくわからないが、何か変なんだ…お前たちも冷静になってよく考えてみてくれ。変だと思わないか?」
ん?
どゆこと?
真剣な面持ちで顎に手をかけて考え込んでいるアルベルトさんからはそれが只の言い訳を言っているようには見えない。
それはエディさんたちも同じだったみたいで、互いに顔を見合わせる。
「確かに…変ですね。旦那様は確かに脳筋ですが、どんな状況でも我を忘れて人を貶めるような暴言は言いませんよね…。そもそも悪意を持って人を悪く言うこと自体ないですね」
「そうだねぇ、坊ちゃんは昔からあまり人に対して羨み妬むってことはなかったですよねぇ。人は人自分は自分って感じでマイペースだったし…」
「旦那様は…こう…スパって割切りが早い方で、人に粘着質的に絡む方ではないですよね」
「言われて思い出してみれば、あの時のアルベルト様の目というか表情は…尋常ではなかった気が…嫉妬に狂ったと言うより、何かに取り憑かれたと言った感じでしたね…」
うーむ…なるほど、なるほど。
なんとなーくわかった気がする。
俺の勘が当たっているか、先ずは鑑定スキルでアルベルトさんのステータスをちょっくら拝見致しましょうかね。
潜伏したまま胡座をかいて座り、アルベルトさんのステータス画面が、俺の目の前に現れると直ぐに状態異常が表示される欄へと目を走らせる。
ビンゴ!大当たりだ!
アルベルトさん、やっぱりどっかで呪いを貰ってるわ。
状態異常の欄には見事に呪いを表す髑髏マークが付いていた。
呪いのレベル次第では解呪アイテムでは解呪出来ないんだよなぁ。
高レベルな呪いは何処かの教会の司教…って言っても全体的に弱体化しているこの時代じゃ、解除は期待出来ないかぁ…。せめて大司教ぐらいじゃないと厳しそうだなぁ。
更に鑑定スキルを使って、かけられている呪いを分析してみると…3つの呪いが融合して色々な余波まで出ている感じだ。
呪いの内容は…
1つ目は、『嫉妬』
2つ目は、『傲慢』
3つ目は、『色欲』
呪いのレベルはLv9。
マジかよっ!レベル高っ!
ハイ、大司教でもどうにも出来ないヤツきたぁぁぁ!!
しかも、この系統って…アレだよな…。
もしこの呪いが名君な王様にかかっていたら、ある日いきなり暴君に大変身っ!「今日から張り切って国を滅ぼしちゃうからねっ!てへっ」てな感じだ。
アルベルトさん、色々と恨まれてんのね。
しかしまぁ…よくこの状態で精神の平静が保たれてんなぁ。それに自分で異変が気づけるとはね。
普通なら精神に異常を来して発狂しててもおかしくないレベルだぞ。
呪いを抑制出来るだけの強い精神力を持ってるってことか…。
さて、どうする。
Lv1~3なら解呪アイテムは効果有りだが、Lv9なら当然効果無し。
Lv7までなら大司教で解呪可能。
それ以上になると…枢機卿だ。だけど中途半端なLvだと高レベルの呪いを解呪するスキル自体が使えないからなぁ。
そもそもLv80オーバーの枢機卿がこの時代に存在してるのか?
存在してない気がする…。
やっぱ俺しかいないってことか。
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