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27話
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★アルベルト視点
「なるほど…それは理解した。俺が深く彼の立場を考えて接していれば良かったのか…」
「まぁ、そうだね。だが、君の馬鹿さ加減はそこではないよ、その先さ」
あぁ、まだあるとは自分でも思っていたが…馬鹿さ加減とは聞き捨てならない。ムッとしている気持ちを抑えてワインを呷り飲む。
全く相変わらずの言いようだ。
「その先とは?」
「とりあえず落ち着きたまえ。抑えてはいるんだろうけど微かに威圧スキルのオーラが出てるよ、君」
ん…いかん、落ち着こう…。
こいつ相手に威圧してどうするよ…。
「少し話を簡単だがまとめていこうか。身分証を紛失した彼に君が代理で再発行の手続きをした。その時に見初めた訳だね」
はい、欲情してトイレで抜きました。とは到底言えない…。
「再発行料を高価なアデリア古銀貨で支払いしようとしたので君が立て替えて、更にラッジ氏の店に連れて行き換金した」
流れ的には合ってはいる。
「ここまではまだいいとしよう。この時点で君は自分の身分をちゃんと彼に明かしたのかい?あぁ、答えなくて結構だよ。どうせ名前と騎士だというぐらいしか言ってないのは想像がつくからね」
だったら、聞くなよ…。
こういうところが実に底意地が悪い。
「騎士というだけで信用して、ホイホイ付いていく彼も世間知らずな気もしない訳ではないけどね」
「それは否めない。実際世間知らずと言うか浮世離れしている感があって、目を離すのは危なく思えたからな」
「なるほどね。話を戻そうか。ラッジ氏の店で換金した後に食事に誘ったのだよね。で、店先で逃げられそうになって捕まえてこの屋敷に連れて来たと…」
「大筋そうだが、最初はジーロ殿の店に行く前に食事を誘ったんだが先に換金したいと言われて、その後に部下に勧められた個室があるレストランに誘ったが、嫌がって逃げ出されたのを捕まえて、屋敷で食事をしようと誘って逃げられないよう彼を掴んで屋敷に連れて来たが正解だな」
ん…自分で言って気がついたが…嫌がる事はしてないと断言したが…十分嫌がる事してる…よな…。それに多少どころかかなり強引じゃないか…。
いや、あれは俺の配慮が足りなかったがいけなかっただけで、別に個室でやましい事をしようという気は…なかったとは否定出来ないな……あ、もしかして本当はそれに気づいて嫌がったとかか?
一気に顔から血の気が引いていくのを感じつつ、必死過ぎて自分が何をしたのかわかっていなかった事に呆然としてしまう。
「やっとわかったのかい?彼にしてみれば君に逆らう事は出来ないだろうからね。それに君みたいな脳筋男に掴まれたんじゃ逃げようにも逃げれないしね」
「逃げられたら…もう会えない気がしたから仕方ないだろ」
開き直りと言われようとも、本当にもう会えない気がしたから仕方ない。
じゃあ、あの時どうしたら良かったというんだ。
「やりようは色々あったんだが、脳筋な君が必死過ぎて切羽詰まっての馬鹿な行動であるのは理解しよう。それ程彼は魅力的なのかい?」
開き直りだと言われない事に正直驚いた。
ましてや、理解しようとかエンリケの口から聞けるとは思っていなくて、思わず飲んでいたワインが気管に入りむせてしまう。
「何を慌ているんだい。落ち着きたまえ」
お前のせいじゃないか…。
「彼は品があって控えめの礼儀正しい青年だが不思議な感じがする…20歳そこそこの年齢とは思えない落ち着きがある。だが、子供みたいなあどけない面もある。世間知らずの割に世情がわかっているところもあったりして、色々とちぐはぐしていて危なっかしい。右顔には酷い火傷の痕があるが…かなりの美形だ」
「ほぅ…ただの流浪の民ではなさそうな気がするね」
勿論、ただの流浪の民ではない。
英雄の末裔だと知れば、何せエンリケの事だから興味を持ってあれこれと詮索するに決まっている。
「多分かなり育ちは良かったのだと思う」
「アルベルト、正直言って君の女性の趣味は如何なものかとずっと思っていたが…同性なのは置いといて、やっとまともになったか…感慨深いよ。実に喜ばしいね」
お前まで言うのか…どいつもこいつも…。
皆、可愛い子だったじゃないか…。
「君ときたら、どの女性も中身が空っぽでぽやーんとしてヘラヘラ笑って媚びている胸が大きくて頭も股もゆるゆるが趣味だったじゃないか。おまけに何故か腹黒いときてる」
明け透けな言葉に思わず手にしていたワイングラスを絨毯の上に落としてしまう。
ワインが入ってなくて良かった…染みでもつけようものならイネスから大目玉を食らうところだ。
いや、そんな事より…今まで付き合った女性をほぼ知っているエンリケだが、今日の今日までこんな事を言ったことはない。
それに彼女らはそこまで酷くなかったと思うが…。
「おそらく君は知らないだろうと思うけど、8割ぐらいが私に色目を使って誘惑してきたりしたよ。私目当てと言うより私の家の財産目当てだね。勿論、全部丁寧にお断りをして君とは別れるように仕向けたよ。ほら、婚約寸前までいったどこぞのご令嬢がいただろ?彼女は特に酷かったね。君と付き合いながら複数の愛人を侍らせていたし、母子揃ってのかなりの浪費癖で多額の借金を君に押し付けようと画策してたからね。父親の不正がバレて一家共々流刑になったのは幸いだったよ」
彼女らの正体を淡々と語り肩を竦ませるエンリケに、何も言えずに項垂れた。
今まで自分の目が曇りきっていた事に、やっと気づき、見てくれだけしか見てなかった自分に呆れてしまう。
エンリケは伯爵だが3代前から手広く商いもしていて、かなり裕福で有名でもある。そのエンリケを誘惑とか…明らかに金のある方への乗り換えじゃないか。
「なるほど…それは理解した。俺が深く彼の立場を考えて接していれば良かったのか…」
「まぁ、そうだね。だが、君の馬鹿さ加減はそこではないよ、その先さ」
あぁ、まだあるとは自分でも思っていたが…馬鹿さ加減とは聞き捨てならない。ムッとしている気持ちを抑えてワインを呷り飲む。
全く相変わらずの言いようだ。
「その先とは?」
「とりあえず落ち着きたまえ。抑えてはいるんだろうけど微かに威圧スキルのオーラが出てるよ、君」
ん…いかん、落ち着こう…。
こいつ相手に威圧してどうするよ…。
「少し話を簡単だがまとめていこうか。身分証を紛失した彼に君が代理で再発行の手続きをした。その時に見初めた訳だね」
はい、欲情してトイレで抜きました。とは到底言えない…。
「再発行料を高価なアデリア古銀貨で支払いしようとしたので君が立て替えて、更にラッジ氏の店に連れて行き換金した」
流れ的には合ってはいる。
「ここまではまだいいとしよう。この時点で君は自分の身分をちゃんと彼に明かしたのかい?あぁ、答えなくて結構だよ。どうせ名前と騎士だというぐらいしか言ってないのは想像がつくからね」
だったら、聞くなよ…。
こういうところが実に底意地が悪い。
「騎士というだけで信用して、ホイホイ付いていく彼も世間知らずな気もしない訳ではないけどね」
「それは否めない。実際世間知らずと言うか浮世離れしている感があって、目を離すのは危なく思えたからな」
「なるほどね。話を戻そうか。ラッジ氏の店で換金した後に食事に誘ったのだよね。で、店先で逃げられそうになって捕まえてこの屋敷に連れて来たと…」
「大筋そうだが、最初はジーロ殿の店に行く前に食事を誘ったんだが先に換金したいと言われて、その後に部下に勧められた個室があるレストランに誘ったが、嫌がって逃げ出されたのを捕まえて、屋敷で食事をしようと誘って逃げられないよう彼を掴んで屋敷に連れて来たが正解だな」
ん…自分で言って気がついたが…嫌がる事はしてないと断言したが…十分嫌がる事してる…よな…。それに多少どころかかなり強引じゃないか…。
いや、あれは俺の配慮が足りなかったがいけなかっただけで、別に個室でやましい事をしようという気は…なかったとは否定出来ないな……あ、もしかして本当はそれに気づいて嫌がったとかか?
一気に顔から血の気が引いていくのを感じつつ、必死過ぎて自分が何をしたのかわかっていなかった事に呆然としてしまう。
「やっとわかったのかい?彼にしてみれば君に逆らう事は出来ないだろうからね。それに君みたいな脳筋男に掴まれたんじゃ逃げようにも逃げれないしね」
「逃げられたら…もう会えない気がしたから仕方ないだろ」
開き直りと言われようとも、本当にもう会えない気がしたから仕方ない。
じゃあ、あの時どうしたら良かったというんだ。
「やりようは色々あったんだが、脳筋な君が必死過ぎて切羽詰まっての馬鹿な行動であるのは理解しよう。それ程彼は魅力的なのかい?」
開き直りだと言われない事に正直驚いた。
ましてや、理解しようとかエンリケの口から聞けるとは思っていなくて、思わず飲んでいたワインが気管に入りむせてしまう。
「何を慌ているんだい。落ち着きたまえ」
お前のせいじゃないか…。
「彼は品があって控えめの礼儀正しい青年だが不思議な感じがする…20歳そこそこの年齢とは思えない落ち着きがある。だが、子供みたいなあどけない面もある。世間知らずの割に世情がわかっているところもあったりして、色々とちぐはぐしていて危なっかしい。右顔には酷い火傷の痕があるが…かなりの美形だ」
「ほぅ…ただの流浪の民ではなさそうな気がするね」
勿論、ただの流浪の民ではない。
英雄の末裔だと知れば、何せエンリケの事だから興味を持ってあれこれと詮索するに決まっている。
「多分かなり育ちは良かったのだと思う」
「アルベルト、正直言って君の女性の趣味は如何なものかとずっと思っていたが…同性なのは置いといて、やっとまともになったか…感慨深いよ。実に喜ばしいね」
お前まで言うのか…どいつもこいつも…。
皆、可愛い子だったじゃないか…。
「君ときたら、どの女性も中身が空っぽでぽやーんとしてヘラヘラ笑って媚びている胸が大きくて頭も股もゆるゆるが趣味だったじゃないか。おまけに何故か腹黒いときてる」
明け透けな言葉に思わず手にしていたワイングラスを絨毯の上に落としてしまう。
ワインが入ってなくて良かった…染みでもつけようものならイネスから大目玉を食らうところだ。
いや、そんな事より…今まで付き合った女性をほぼ知っているエンリケだが、今日の今日までこんな事を言ったことはない。
それに彼女らはそこまで酷くなかったと思うが…。
「おそらく君は知らないだろうと思うけど、8割ぐらいが私に色目を使って誘惑してきたりしたよ。私目当てと言うより私の家の財産目当てだね。勿論、全部丁寧にお断りをして君とは別れるように仕向けたよ。ほら、婚約寸前までいったどこぞのご令嬢がいただろ?彼女は特に酷かったね。君と付き合いながら複数の愛人を侍らせていたし、母子揃ってのかなりの浪費癖で多額の借金を君に押し付けようと画策してたからね。父親の不正がバレて一家共々流刑になったのは幸いだったよ」
彼女らの正体を淡々と語り肩を竦ませるエンリケに、何も言えずに項垂れた。
今まで自分の目が曇りきっていた事に、やっと気づき、見てくれだけしか見てなかった自分に呆れてしまう。
エンリケは伯爵だが3代前から手広く商いもしていて、かなり裕福で有名でもある。そのエンリケを誘惑とか…明らかに金のある方への乗り換えじゃないか。
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