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15話
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それは何処かに何かが吸い取られている様な感じに近い。掌を地面に着けると俺の魔力が極微量だけど吸い取られている。そしてそれが何処に流れて行くのも感じ取れた。
その流れる方向にあるのは枯れかけた1本の月桂樹だった。間違いなくその月桂樹に流れている。
「申し訳ありませんが、これから見る事は他言無用でお願いします」
俺が月桂樹へと近寄ると警戒したのか、ザワザワと枝が震え枯れかけの葉が落ちてくる。
グティエレス家の皆さんは、黙って俺と月桂樹を見ている。
俺は後が面倒な事になるのを覚悟して、彼らの言葉で話しかけた。
『大丈夫です。誰も貴方を傷つけませんよ。出ておいでなさいな。貴方に悪気が無かったのでしょ?』
「ドーン君、何に向かって何を喋って…」
「静かにっ。怯えてるので静かにして下さい」
団長様の言葉を少しだけ強い口調で遮って、俺はもう1度月桂樹に向かって話しかけた。
『ただこの月桂樹を助けたかっただけなのでしょ?貴方は優しい方です。でもそれでは他の植物まで弱ってしまいます。それは貴方もお嫌でしょ?私も力になりますから、出ておいでなさいな』
俺の呼びかけに漸く月桂樹の後ろから出て来たのは、やはり緑の髪と緑の肌で若い女性の姿をしたドライアドだった。生命に満ち溢れてる分から察すると多分このドライアドの宿り木は別だろうな。
『貴方、私たちの言葉喋れるのね。助けてくれるの?』
『私が住む森のドライアドさんとは仲良しなんですよ。出来る限りの事はします。その月桂樹は貴方の宿り木の子ですか?』
俺のセーフハウスは場所が場所なだけに、よくドライアドが遊びに来るんだよね。
原因はこのドライアドには間違いないんだけどなぁ。月桂樹が何で弱ったのかそっちの原因がわかんないと助けられるかどうか約束出来ないんだよな。
『ええ、そうよ。だからこの子が枯れ朽ちるのが偲びなかったの。ここの土地は地脈がズレてしまったの…』
『地脈ですか…なるほど、そうですか』
地脈は地下水の流れだけでは無くて、生命のエネルギーの流れでもあるからなぁ。その地脈の流れが止まってるなら、この庭園だけじゃなくてここらへん一帯も植物が弱ってるのかもしれない。
「すみません、ここ2、3年で大きな地震などありませんでしたか?」
グティエレス家の皆さんに向かって尋ねると、団長様が口を開きかけたが、いち早く答えてくれたのは厩番のマルセロさんだった。
「それなら3年ぐらい前に揺れはさほど大きくはなかったけど、凄い地響きはがあったのは覚えてますよ」
「ありがとうございます」
マルセロさんに他のグティエレス家の皆さんの目が一斉に向けられたんだけど、それが何故か全てジト目だっんだけど…なんで?
まぁ、気にしない事にしよ…それよりどうすっかなぁ…。要はあれだろ?地震で地層がズレて地脈の流れが変わったか止まったかみたいな感じだよなぁ。
なら、俺が魔法スキルの【地震】使ってみるか?いや駄目だな…これ広範囲魔法攻撃スキルだったわ。下手したらこの街全体が崩壊するじゃん。俺、使えねー。
マジでどうしよ…ドライアドがめっちゃ泣きそうな顔してるし、グティエレス家の皆さんも不安そうにしてるし…。
あ、そういや感知スキルあったな。
スキル多過ぎて、使ってないと忘れちゃうな。
片膝を着いて掌を地面に着けて、感知スキルを使ってみると地下の様子がわかってきた。地脈が光の線になって地下を木の根みたいに張り巡っているのが見える。この庭園の真下ぐらいにある線が断たれて見事に上下にズレていた。
これってさ、上から押さえ込んだら繋がるような気がするんだけど、物は試しにやってみるか?
断線された場所は、庭園の中央にある小さな噴水の近くの敷石の真下だった。そこに行って敷石を1度軽く踏んでみた。
これ割ったら駄目だよな。どかしちゃうか。
しゃがんで敷石の角を右手にかけた。
「ドーン君、それは埋まっているから1人で動かすのは…」
へ?埋まってるって言っても5cmぐらいでしょ?
俺は考え無しにポイッと敷石を軽く投げたら、ドコンッて重い音がした。あ、あれ…投げた敷石は20cmぐらい埋まってたぽい。
はい、やらかしました。
グティエレス家の皆さんがどんな顔をしているか見なくても想像がつくよ…。
気にしない。気にしな…い…ううっ。視線が痛い…。
負けるな、俺。頑張れ、俺。
気を取り直して、いっちょやったりましょうかっ!
俺は呼吸を整え気を練る。そして練った気を右足に込めるとほんわりと右足だけが熱を持つのを感じる。武道僧侶のスキルである【震脚】の応用だ。
敷石を外して出来た大きな窪みに右足を思いっきり踏みつけると、少し間を置いて地面が地響きを立てて縦に揺れた。
グティエレス家の皆さんが「地震だっ」と口々に言って騒いでるのを聞きながら、感知スキルで確認したら光の線は繋がって1本の線になっていた。地脈の流動も確認出来る。
おお、試してみるもんだなぁ…非常識過ぎて俺、スゲェー。
あ、そうだ敷石直さないとだ。
その流れる方向にあるのは枯れかけた1本の月桂樹だった。間違いなくその月桂樹に流れている。
「申し訳ありませんが、これから見る事は他言無用でお願いします」
俺が月桂樹へと近寄ると警戒したのか、ザワザワと枝が震え枯れかけの葉が落ちてくる。
グティエレス家の皆さんは、黙って俺と月桂樹を見ている。
俺は後が面倒な事になるのを覚悟して、彼らの言葉で話しかけた。
『大丈夫です。誰も貴方を傷つけませんよ。出ておいでなさいな。貴方に悪気が無かったのでしょ?』
「ドーン君、何に向かって何を喋って…」
「静かにっ。怯えてるので静かにして下さい」
団長様の言葉を少しだけ強い口調で遮って、俺はもう1度月桂樹に向かって話しかけた。
『ただこの月桂樹を助けたかっただけなのでしょ?貴方は優しい方です。でもそれでは他の植物まで弱ってしまいます。それは貴方もお嫌でしょ?私も力になりますから、出ておいでなさいな』
俺の呼びかけに漸く月桂樹の後ろから出て来たのは、やはり緑の髪と緑の肌で若い女性の姿をしたドライアドだった。生命に満ち溢れてる分から察すると多分このドライアドの宿り木は別だろうな。
『貴方、私たちの言葉喋れるのね。助けてくれるの?』
『私が住む森のドライアドさんとは仲良しなんですよ。出来る限りの事はします。その月桂樹は貴方の宿り木の子ですか?』
俺のセーフハウスは場所が場所なだけに、よくドライアドが遊びに来るんだよね。
原因はこのドライアドには間違いないんだけどなぁ。月桂樹が何で弱ったのかそっちの原因がわかんないと助けられるかどうか約束出来ないんだよな。
『ええ、そうよ。だからこの子が枯れ朽ちるのが偲びなかったの。ここの土地は地脈がズレてしまったの…』
『地脈ですか…なるほど、そうですか』
地脈は地下水の流れだけでは無くて、生命のエネルギーの流れでもあるからなぁ。その地脈の流れが止まってるなら、この庭園だけじゃなくてここらへん一帯も植物が弱ってるのかもしれない。
「すみません、ここ2、3年で大きな地震などありませんでしたか?」
グティエレス家の皆さんに向かって尋ねると、団長様が口を開きかけたが、いち早く答えてくれたのは厩番のマルセロさんだった。
「それなら3年ぐらい前に揺れはさほど大きくはなかったけど、凄い地響きはがあったのは覚えてますよ」
「ありがとうございます」
マルセロさんに他のグティエレス家の皆さんの目が一斉に向けられたんだけど、それが何故か全てジト目だっんだけど…なんで?
まぁ、気にしない事にしよ…それよりどうすっかなぁ…。要はあれだろ?地震で地層がズレて地脈の流れが変わったか止まったかみたいな感じだよなぁ。
なら、俺が魔法スキルの【地震】使ってみるか?いや駄目だな…これ広範囲魔法攻撃スキルだったわ。下手したらこの街全体が崩壊するじゃん。俺、使えねー。
マジでどうしよ…ドライアドがめっちゃ泣きそうな顔してるし、グティエレス家の皆さんも不安そうにしてるし…。
あ、そういや感知スキルあったな。
スキル多過ぎて、使ってないと忘れちゃうな。
片膝を着いて掌を地面に着けて、感知スキルを使ってみると地下の様子がわかってきた。地脈が光の線になって地下を木の根みたいに張り巡っているのが見える。この庭園の真下ぐらいにある線が断たれて見事に上下にズレていた。
これってさ、上から押さえ込んだら繋がるような気がするんだけど、物は試しにやってみるか?
断線された場所は、庭園の中央にある小さな噴水の近くの敷石の真下だった。そこに行って敷石を1度軽く踏んでみた。
これ割ったら駄目だよな。どかしちゃうか。
しゃがんで敷石の角を右手にかけた。
「ドーン君、それは埋まっているから1人で動かすのは…」
へ?埋まってるって言っても5cmぐらいでしょ?
俺は考え無しにポイッと敷石を軽く投げたら、ドコンッて重い音がした。あ、あれ…投げた敷石は20cmぐらい埋まってたぽい。
はい、やらかしました。
グティエレス家の皆さんがどんな顔をしているか見なくても想像がつくよ…。
気にしない。気にしな…い…ううっ。視線が痛い…。
負けるな、俺。頑張れ、俺。
気を取り直して、いっちょやったりましょうかっ!
俺は呼吸を整え気を練る。そして練った気を右足に込めるとほんわりと右足だけが熱を持つのを感じる。武道僧侶のスキルである【震脚】の応用だ。
敷石を外して出来た大きな窪みに右足を思いっきり踏みつけると、少し間を置いて地面が地響きを立てて縦に揺れた。
グティエレス家の皆さんが「地震だっ」と口々に言って騒いでるのを聞きながら、感知スキルで確認したら光の線は繋がって1本の線になっていた。地脈の流動も確認出来る。
おお、試してみるもんだなぁ…非常識過ぎて俺、スゲェー。
あ、そうだ敷石直さないとだ。
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