最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san

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16. 明らかになった真相

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 クロエとダンはお茶会が終わった後、王宮を出てすぐに辺境伯城に転移した。

辺境伯城で心配しながら待っていた辺境伯夫人のレーナは、城の玄関ホールに2人が現れるとすぐに駆け寄ってクロエ達をぎゅっとハグした。

クロエは、王宮で王妃がクロエを罠にはめようとしたことを伝えると、「あのビッチ、今度会ったら必ず殺る……」とコワい顔で微笑んでいた。
(OH!お母様、そのお顔は絶対お父様には見せてはいけません!)

そして、クロエが王宮の奥に案内された際に王妃の私室に盗聴の魔道具を仕掛けてきたことを伝えると、レーナはクロエとダンを連れてすぐに辺境伯が仕事をしている執務室に向かった。そしてそこで魔道具を再生してみんなで内容を確認すると驚愕の真実が明らかになった。
 
「……そういうことだったのね」

王妃の独り言を聴いた辺境伯夫妻とクロエ達は、全ての真相の原因が王妃の実家のガーラン公爵家であったことに憤慨し、すぐさまシルバーズ侯爵家のレイに魔信書を送った。

レイはすぐに辺境伯城に転移してきてクロエとダンから茶会であったことを聞くと「馬鹿にしおって……」と呟き、真相の原因を伝えにすぐに魔国へ転移して行った。

レイが魔国へ転移して行った後、ダンとクロエは、執務室でお茶会の様子を再度詳しく辺境伯夫妻に話した。

「あの王妃、全く話が通じないんだよ。クロエは婚約してるって言ってんのにクロエが筆頭婚約者候補とか言うし、あのクソ王子はクロエを指さして「こいつがいい~」とか言うし。ホント、あの王家はおバカ通り越して、ちょっと異常だわ」ダンは会話を思い出しながら顔を顰めた。

「お父様、国王様はどういう方なんですか?」クロエは、ふと疑問に思ったことを辺境伯に訊いてみた。

「ん~、そういえば国王は最近表に出てきていないな。噂では国王は王妃の言うがままで傀儡となっているようだが……」

クロエは王妃の会話を思い出しながら「傀儡ですか……。あっ、そういえば私が別室に連れていかれた時に、王妃が黒いマントを着た男に私を王太子の婚約者にふさわしく洗脳するように言ってました。もしかしたら国王様も洗脳されている可能性がありますね……」と言って辺境伯夫妻の顔を見た。

ダンは「あいつ、クロエにそんなこと言ったのか!絶対に許せねぇ……」というと、拳をギリギリと握っていた。

「ジョン、もう計画を実行しましょう。私も我慢の限界だわ」

「ん?計画って、何?」とダンは辺境伯夫妻の顔を見ると、「ダンとクロエにも話しておいた方がいいな……」と言って、辺境伯はダンとクロエの前の椅子に座った。

「実はな、ブラウン辺境伯領はヒューマン国から独立しようと計画しているんだ。タイミングを計っていたんだが、そろそろ頃合いかと思ってな」

「独立……。確かに、うちの辺境伯領は独立しても何も問題ないし、寧ろその方が税の軽減が出来て領民にとっても良いかもしれない……。父上、俺は賛成です」

(えっ!独立?確かに今のヒューマン国の王家の状況を見ると辺境伯領は独立した方が領民のためにもなっていいかもしれない。でも独立してしまったら、地底族が私に接触してくることは難しくなるわ。私は、次の世代の地底族に間違った復讐心を残したくない。今、私の生きている間に地底族に真相を伝えて、魔国との関係を修復してもらいたい。そのためには……)

クロエは、現状を整理するために目を瞑り集中していたが、パッと顔を上げ、なにか閃いたような表情を辺境伯夫妻に向けた。

「お父様、お母様、ダン兄様。ブラウン辺境伯領の独立を後5年……いえ3年、待っていただけませんか?私が辺境伯領を離れて王都の王立学院にいる間に、地底族の族長さんへ真相を伝えて間違った復讐を辞めてもらうように説得したいんです」

クロエがそう告げると、辺境伯は少し心配そうな顔で訊いた。

「クロエ、実の両親を殺した地底族に復讐したいという気持ちは無いのか?」

ダンは、クロエの手を強く握りクロエの顔を心配そうな顔で見た。

クロエは自分の事を最優先で考えてくれている家族の顔を見て、自分の正直な気持ちを伝えた。

「私、正直にいうと、あまり実の両親のために復讐しようという深い思いはないんです。両親は私を守ろうとして地底族に殺されました。私を守ってくれたことは感謝しています。でも地底族の族長の家族も先代魔王妃に殺されました。真相を彼らに伝えなければ、この間違った負のループはずっと続きます。私、両親の復讐よりも、地底族に真相を伝えてこのループを断ち切りたいんです……。何が正しいのか、どうするのが一番いい方法なのかわからないんだけど……」

ジョンは腕を組んでしばらく無言で思案していたが、クロエの顔を見て言った。
 
「わかった。……そうだな。地底族に真相を伝えて今後の彼らの進む道を考えてもらうのがいいのかもしれんな。しかしクロエ、一人で動こうとするなよ。シルバーズ侯爵家と魔王様にも相談してからだ」と、辺境伯は穏やかにクロエに微笑んだ。

* * *

数日後、レイとクロエは修行中に滞在していた魔の森の家の前に来ていた。クロエは地底族に接触して真相を伝えたいとレイに魔信書を送ると、すぐに魔王様と会う手筈を整えてくれた。

「ここも久しぶりじゃの。魔王様がいらっしゃるまで、お茶でもいれて待っていようかの」と言って、持参した緑茶を淹れてまったりと魔王様が来るのを待っていた。

「遅くなった!」と魔王が1人の男の子を連れて、家の中に直接転移して来た。

クロエは魔王の後ろにいた男の子と目が合うと、夢の中で会った哲兄さんを思い出した。

「もしかして、哲兄さん?」

男の子はクロエに笑顔で「栞、よくすぐに分かったな。元気そうで良かった」と言うと、クロエは涙をポロポロと流しながら前世の兄に抱きついて大泣きした。

前世で大好きだった双子の兄に今世でも会えたという喜びと、前世で2人同時に交通事故で亡くなった記憶がフラッシュバックして、クロエの大泣きはなかなか止まらなかった。

 
魔王は、「さて、どこから話すかな……」と言いながらソファに深く腰を下ろした。

「クロエの前世の双子の兄は、今世では俺の息子ロアとして転生している。今世ではロアとクロエの魂は俺の子として1つの身体に入るはずだったが、聖女の呪いで今世でも魂が別れてしまったんだ。俺の双子の妹のシエラは、魔国を出てシルバーズ侯爵家の養女になる時に暗黒魔法を封印して、その封印が解けないようにと闇の魔力を込めた魔道具のネックレスをいつもしていたんだが、出産の際に封印が解けてしまってクロエは暗黒魔法を持って生まれた」

「聖女の呪い?」クロエが魔王を見ると、ロアが顔を顰めながら説明した。

「クロエは覚えてるか?あの孤児院に居たシスターだよ。先代魔王妃は親父とクロエの母親を生むとすぐに、向こうの世界に転生したらしい。そして、転生して俺たちの居た教会孤児院のシスターしてたんだよ。俺たちが里親のところに行く前に2人で部屋に呼ばれたろ。あん時にどうやらこの世界でも魂が別れて生まれ変わるように呪いをかけたらしい」

「なんで魂を分けるような呪いをかけたんだろう……?」

魔王は苦笑いしながら2人に向かって言った。「目的は分らんが、別々に生まれても元気にやってるからそれは良いんじゃないか?大したことじゃない。ただあの女には制裁を与える。まぁ、それは俺の仕事だ。今、俺達が考えるべきことは地底族にどうやって真相を伝えるかだな……」

「地底族は私を狙ってきます。私が隙を見せて誘い込もうと考えています。辺境伯領では難しいと思うので王都にある王立学院に入ってから……」

ロアはすかさずクロエを見て言った。「俺もクロエと一緒に王立学院に行くよ。レイおじさん、俺はシルバーズ侯爵家の遠縁ってことでお願いできる?ヴァンパイア国の者として入学するよ」

レイは、あごに手を当てながら、「そうじゃな……、うちの孫も一緒に入学させよう。ロア様とルカをヴァンパイア国から留学という形で手続きしましょう」と頷きながらにこやかに言った。
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