女のくせに強すぎるからという理由で婚約破棄された令嬢の話

キョウキョウ

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第3話

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 クリストフ様に婚約破棄を言い渡された直後に私は、学園の訓練所に向かった。

「師匠!」
「学園内では、先生と呼びなさい」

 予想した通り、訓練所に師匠は居た。彼は、剣技の反復練習を行っていた。額から滝のような汗を流していた。どれほど長い間、師匠は訓練していたのだろうか。

 訓練所には、師匠の他に誰も居ない。呼びかけると、模擬刀の素振りを続けながら注意された。

 学園内では先生と呼ぶように、という彼なりのルールが有るらしい。だけど、私はいつも師匠と呼んでしまう。すぐに訂正する。

「はい、先生」
「よろしい」

 しばらく観察していると、師匠は素振りを終えた。模擬刀を土の上に突き立てて、私の方に向く。そんな彼に、汗を拭くための布を渡した。

「ふぅ、ありがとう。今日は、他に用事があると言っていたが終わったのかい?」

 受け取った布で汗を拭いながら、師匠は問いかけてきた。私は頷いて答える。

「はい。もう用事は終わらせて来ました」
「今から訓練するか?」
「はい、そのつもりです。ダメですか?」
「もちろん、いいぞ。やる気の高い奴は好きだからな。さぁ、やるか」
「はい!」

 すぐに私は訓練用の衣服に着替えて模擬刀を手に持ち、師匠と向かい合う。そして始まった、1対1の模擬戦。

 言葉はなく、師匠と私の呼吸音、模擬刀がぶつかり合う音が訓練所に響き渡る。



「よし、ストップ」
「はぁ、……っ、はぁ、はぁ。ありがとう、ござい、ました」

 師匠の言葉で、構えていた模擬刀を鞘に収める。それから膝に手をついて、荒れた呼吸を急いで整えた。

 訓練で戦っていた師匠は汗を流して少しだけ疲れた様子だけど、私はかなり体力を消耗していた。

 体力の少なさは、私の課題だった。剣を振って攻撃を仕掛けると、どんどん体力が消耗していってすぐ体力の限界に達する。これを鍛えないと、戦いでは大きな不利になる。

「ますます剣のスピードが上がっているな。技のキレもなかなかだ。あとは、戦いで体力を出来る限り持たせるように鍛えるだけだな」
「はぁ、はぁ……。はい、もっと頑張ります」
「とはいえ、君の年齢で考えたら驚異的な実力だがな」
「いえ、……ふぅ。まだまだ足りません」

 師匠が褒めてくれて、私は嬉しくなった。だけど、まだまだ全然足りない。

 いつか師匠を越える、という目標を常に意識していたから。達成するまでは、まだ遠い目標だけど日々頑張っている。

「ところで、今日の用事は何だったのか聞いてもいいか?」

 私が剣術の訓練を休んで他の用事を優先させるのは珍しいことだったから、師匠は気になっていたようだ。別に隠すことでもないので答える。

「はい。クリストフ様に呼び出されて、婚約破棄を言い渡されました」
「なっ!? な、なに……?」

 今日の用事について伝えると、師匠はとても驚いていた。
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