1 / 15
第1話
しおりを挟む
「セレスティーヌ、君との婚約を破棄したい」
「婚約破棄、ですか……」
目の前に座っているクリストフ様から、婚約破棄を言い渡された。
ある日突然に呼び出され、彼の住んでいる屋敷を訪れた。通された部屋で2人きりになると、世間話も挟まずいきなり告げられる。
そんな前兆も無く、急なことだったから私には理由が分からなかった。
「婚約破棄の理由は、何ですか?」
だから私は、彼に理由について尋ねた。クリストフ様は嫌そうな表情を浮かべて、婚約を破棄する理由について説明する。
「お前が、俺よりも強いからだ」
「え?」
「騎士団長を任命される予定の俺が、妻よりも弱いとなったらマズイだろう」
「そんなことで?」
「”そんなこと”じゃない。とても大事なことだ」
クリストフ様は、次期騎士団長だと注目されている人だった。確かに私は、彼より剣術が上手い自信があった。
先日行われた剣術大会でも、男子学生に混じって参加した私が優勝した。だけど、そんな理由で婚約破棄を宣告されるだなんて。
剣術に自信が無いのなら、上達するために練習すれば良い。私は知っている、彼が才能にあぐらをかいて剣の練習を怠っていることを。今はまだ、学生の中での実力は最上位にいる。それで彼は満足してしまっていた。とても、勿体ないことだ。
しかも、騎士団長になることが確約されているクリストフ様。今から実力を磨いておかないと、困るのは彼じゃないのかな。
剣術の練習すればいい。そして私りよも強くなれば、婚約破棄する理由も無くなるだろうから。そう思って提案しようとした。
「なら、私よりも強くなれるように特訓しましょう。今から先生を呼んで、基礎の」
「必要ない」
私が話している途中で、クリストフ様は言葉を被せて無理やり会話を止めてくる。彼は、剣術の腕を磨くための練習をするつもりは無いらしい。
「君との婚約破棄は、決定事項だ」
「……決定事項?」
「実はもう、次の婚約相手が決まっている。入ってきてくれ!」
私が知らない間に、既に状況は決まっていたらしい。婚約を破棄することも、彼の新しい婚約相手も。
クリストフ様が、部屋の外に呼びかける。するとすぐに、扉がガチャリと開いた。彼の新しい婚約相手が、扉の前で待機していたらしい。
入ってきたのは、見覚えのある少女。私の妹であるジョスリーヌだった。
「婚約破棄、ですか……」
目の前に座っているクリストフ様から、婚約破棄を言い渡された。
ある日突然に呼び出され、彼の住んでいる屋敷を訪れた。通された部屋で2人きりになると、世間話も挟まずいきなり告げられる。
そんな前兆も無く、急なことだったから私には理由が分からなかった。
「婚約破棄の理由は、何ですか?」
だから私は、彼に理由について尋ねた。クリストフ様は嫌そうな表情を浮かべて、婚約を破棄する理由について説明する。
「お前が、俺よりも強いからだ」
「え?」
「騎士団長を任命される予定の俺が、妻よりも弱いとなったらマズイだろう」
「そんなことで?」
「”そんなこと”じゃない。とても大事なことだ」
クリストフ様は、次期騎士団長だと注目されている人だった。確かに私は、彼より剣術が上手い自信があった。
先日行われた剣術大会でも、男子学生に混じって参加した私が優勝した。だけど、そんな理由で婚約破棄を宣告されるだなんて。
剣術に自信が無いのなら、上達するために練習すれば良い。私は知っている、彼が才能にあぐらをかいて剣の練習を怠っていることを。今はまだ、学生の中での実力は最上位にいる。それで彼は満足してしまっていた。とても、勿体ないことだ。
しかも、騎士団長になることが確約されているクリストフ様。今から実力を磨いておかないと、困るのは彼じゃないのかな。
剣術の練習すればいい。そして私りよも強くなれば、婚約破棄する理由も無くなるだろうから。そう思って提案しようとした。
「なら、私よりも強くなれるように特訓しましょう。今から先生を呼んで、基礎の」
「必要ない」
私が話している途中で、クリストフ様は言葉を被せて無理やり会話を止めてくる。彼は、剣術の腕を磨くための練習をするつもりは無いらしい。
「君との婚約破棄は、決定事項だ」
「……決定事項?」
「実はもう、次の婚約相手が決まっている。入ってきてくれ!」
私が知らない間に、既に状況は決まっていたらしい。婚約を破棄することも、彼の新しい婚約相手も。
クリストフ様が、部屋の外に呼びかける。するとすぐに、扉がガチャリと開いた。彼の新しい婚約相手が、扉の前で待機していたらしい。
入ってきたのは、見覚えのある少女。私の妹であるジョスリーヌだった。
35
お気に入りに追加
2,032
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
捨てられ令嬢、皇女に成り上がる 追放された薔薇は隣国で深く愛される
冬野月子
恋愛
旧題:追放された薔薇は深く愛される
婚約破棄され、国から追放された侯爵令嬢ローゼリア。
母親の母国へと辿り着いた彼女を待っていたのは、彼女を溺愛する者達だった。
※小説家になろうにも掲載しています。


この国では魔力を譲渡できる
ととせ
恋愛
「シエラお姉様、わたしに魔力をくださいな」
無邪気な笑顔でそうおねだりするのは、腹違いの妹シャーリだ。
五歳で母を亡くしたシエラ・グラッド公爵令嬢は、義理の妹であるシャーリにねだられ魔力を譲渡してしまう。魔力を失ったシエラは周囲から「シエラの方が庶子では?」と疑いの目を向けられ、学園だけでなく社交会からも遠ざけられていた。婚約者のロルフ第二王子からも蔑まれる日々だが、公爵令嬢らしく堂々と生きていた。


聖女の力を失ったと言われて王太子様から婚約破棄の上国外追放を命じられましたが、恐ろしい魔獣の国だと聞かされていた隣国で溺愛されています
綾森れん
恋愛
「力を失った聖女などいらない。お前との婚約は破棄する!」
代々、聖女が王太子と結婚してきた聖ラピースラ王国。
現在の聖女レイチェルの祈りが役に立たないから聖騎士たちが勝てないのだと責められ、レイチェルは国外追放を命じられてしまった。
聖堂を出ると王都の民衆に石を投げられる。
「お願い、やめて!」
レイチェルが懇願したとき不思議な光が彼女を取り巻き、レイチェルは転移魔法で隣国に移動してしまう。
恐ろしい魔獣の国だと聞かされていた隣国で、レイチェルはなぜか竜人の盟主から溺愛される。
(本作は小説家になろう様に掲載中の別作品『精霊王の末裔』と同一世界観ですが、200年前の物語なので未読でも一切問題ありません!)

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」
子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。
失意のどん底に突き落とされたソフィ。
しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに!
一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。
エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。
なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。
焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる