貴方のことなんて愛していませんよ?~ハーレム要員だと思われていた私は、ただのビジネスライクな婚約者でした~

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
2 / 16

02.手続きが終わって

しおりを挟む
 王や大臣たちと話し合い、婚約を破棄するための手続きを進めていく。やんわりと引き止められたが、気にしなかった。

 彼らが引き止めようとするのは、王妃にするための教育が無駄になるから、という理由だろう。確かに、私にかけた時間と費用が無駄になる。だけど私は、ランベルト王子との婚約関係を破棄することだけに集中して、突き進んだ。

 何を言われても、もう撤回はしない。



 各所とやり取りをして、ようやく婚約破棄の手続きが全て終わった。

 ランベルト王子が率先して手続きしてくれたらスムーズに処理できるというのに、彼は全く手伝ってくれなかった。それが、当たり前だと思っているからだろう。

 私は、彼に全く期待していない。何度注意をしても、改善されることがないから。愛人関係も、女遊びをするのなら自分で後始末をつけてくれないと困るというのに、何か問題が起きたら放置するだけ。

 時間が経てば、全ての問題は勝手に解決すると思っているらしい。そんなはずないのに。

 彼が不祥事を起こすと、私まで巻き込まれてしまう可能性が高い。それが嫌だったので仕方なく、事後処理を私が請け負っていた。

 だけどもう、彼に困らされることはない。家が決めた婚約関係は、ランベルト王子から破棄を申し出てくれた。それが、とてもありがたかった。女の私から、申し出ることは出来ないから。実家へのダメージも少ない。とはいえ、王族との関係が切れた影響は大きいだろう。どうにかして、挽回しないと。



「ランベルト様、婚約破棄の手続きが終わりました」
「ありがとう。相変わらず、君は仕事が速いね」
「……」

 好きで事務処理が早くなったわけじゃない。お前が何もしないから、私がやるしか無かった。そう文句を言いたいけれど、何も吐き出さずに言葉を飲み込む。

 私はもう、立ち去る者だから。

「それでは、ランベルト様。私は失礼します」
「え? 待ってくれ」
「……何ですか?」

 全て終わったので、私は部屋を退室するつもりだった。なのに、ランベルト王子に呼び止められる。何か不備があったのか。

「もう帰るのか?」
「はい。用事は終わったので」
「寂しいじゃないか」
「は?」

 一瞬、彼が何を言っているのか本気で理解できなかった。寂しいって、一体何が?

「今まで俺たち2人を結んでいた、婚約という堅苦しい関係はこれで解消されたね。なら、これから先は愛し合うだけ」
「……」
「婚約を結ぶ前の、愛し合っていた頃に戻ろうじゃないか」
「別の誰かと勘違いしていませんか?」

 婚約を結ぶ前は、知り合いですらなかった。家の事情があって、親同士が話し合い婚約が決まった。その後に、初めて顔を合わせた。

 彼の言った、愛し合っていた頃、なんて存在していない。ランベルト王子は、何を言っているのか。

 どうせ、今まで遊んできた女性の誰かと勘違いしているんだろうけど。

「つれないね」
「当然です。婚約を破棄したら、私たちは他人ですから」
「他人? そんなことはない。君は、俺を愛しているだろう? それなら、俺の」
「愛してません」
「え?」
「今までは、婚約関係があるので付き合っていただけです。それが無くなれば、他人ですよ」
「そ、そんな……!?」

 なぜ彼が驚いているのか。私が王子に好意を向けていないことに、本気で気付いていなかったのか。婚約だけの関係だということを。

 よく分からないが、これ以上は長居したくなかった。さっさと家に帰って、今後の予定について考えないといけないから。これから先、どうやって生きていくのか。

「……」
「それでは、失礼します」

 改めて、部屋を退出するための挨拶を口にする。呆然としているランベルト王子を放置して返答も待たず、私は1人で部屋から出ていく。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

婚約者様。現在社交界で広まっている噂について、大事なお話があります

柚木ゆず
恋愛
 婚約者様へ。  昨夜参加したリーベニア侯爵家主催の夜会で、私に関するとある噂が広まりつつあると知りました。  そちらについて、とても大事なお話がありますので――。これから伺いますね?

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。 しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。 「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」 身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。 堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。 数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。 妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。

私から婚約者を奪う為に妹が付いた嘘…これにより、私の人生は大きく変わる事になりました。

coco
恋愛
私から婚約者を奪う為、妹が付いた嘘。 これにより、後の私の人生は大きく変わる事になりました─。

婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】 「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」 私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか? ※ 他サイトでも掲載しています

不幸を呼ぶ令嬢なので婚約破棄だと言われましたが、それは私のせいではありません。

coco
恋愛
「お前と居ると不幸が続く、婚約破棄しろ!」 度重なる不幸は、私のせいだと言う婚約者。 その不幸から逃れる為、彼は婚約破棄を要求してきた。 でも私は知っている、その不幸は私のせいでは無い事を。 私は、不幸を呼ぶ令嬢なんかじゃない。 それに気づかないあなたは、愚か者です─。

ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。

ねお
恋愛
 ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。  そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。  「そんなこと、私はしておりません!」  そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。  そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。  そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

処理中です...