16 / 31
第16話 失敗のパーティー◆公爵子息ルーカス視点
しおりを挟む
「さあ、リリアン。みんなに挨拶をしに行こう」
パーティー会場に到着した俺は、隣にいるリリアンにそう声をかけた。今夜は彼女をお披露目する大切な舞台。だが、会場に到着した瞬間にリリアンはウキウキとした表情から一転、不機嫌な顔つきになった。
「なによ、これ! 私、こんなこと指示してないわ! ちょっと!」
リリアンは近くにいたメイドを呼び止めると、早速文句を言い始めた。確かに会場の雰囲気は、いつもと違う印象を受ける。装飾や照明にも、どこか違和感があった。
「申し訳ございません。しかし、もうゲストの皆様がお見えになっておりますので、会場の変更は難しゅうございます」
メイドはリリアンに頭を下げて謝罪の言葉を述べるが、彼女の怒りは収まらない。
「ああ、もう最悪!せっかくの私のお披露目の場なのに!」
「落ち着いて、リリアン。周りが見ているよ」
「……チッ!」
俺が諌めると、リリアンは渋々と感情を抑え込んだ。だが、先ほどの彼女の振る舞いを目撃したゲストも少なくないだろう。いきなりイメージを損ねてしまったようだ。
何とか気持ちを切り替えて、俺たちは挨拶回りを始めた。しかし、ゲストの反応は芳しくない。
「彼女が、新しい婚約者のリリアンです」
「どうぞ、よろしくお願いします!」
上品な笑顔で挨拶をするリリアンに、相手は素っ気ない返事を返す。
「ああ、話は聞いているよ。よろしく」
ぎこちない会話が続く中、離れた場所でゲスト同士がこそこそと小声で話しているのが聞こえてきた。
「ねえ、今のあの子が新しい婚約者なの? ちょっと驚いたわ」
「そうね。ヴィオラ嬢とは大違いだと思うわ。あの品の無さは、将来が心配になるわね」
「……」
リリアンへの辛辣な評価が飛び交う。やはり、先ほどの場面を見られていたのか。最初から印象も悪く、彼女と一緒にいる俺も徐々に居心地の悪さを感じ始めていた。
そして、その言葉をリリアン本人に聞かれないように意識をそらすのも大変だった。どうか、リリアンに聞こえないようにしてくれ。
いや、けれど。ゲストたちは、リリアンの本当の姿を知らないだけ。彼女だって、いい所もある。これを知ってもらえたら、きっと認めてもらえるはず。
「挨拶しても、会話が長続きしない。誰も私に興味がないみたい。どういうこと?」
「そ、そんなことないよ。みんな、君とどう接すればいいのか悩んでいるだけだ」
俺は取り繕うように言葉を返したが、リリアンの表情は晴れない。パーティーが進むにつれ、事態は思わぬ方向へと転がり始めた。
料理やドリンクの提供は遅れがちで、ゲストを待たせてしまう場面が続出する。演奏や余興の質も低く、パーティーの流れを乱していた。挙句の果てには、料理が途中で足りなくなるというアクシデントまで発生した。
「ルーカス様、大変です! メインディッシュが足りなくなりました!」
「なんだって? 予定していた人数分は用意していなかったのか?」
「は、申し訳ございません」
動揺を隠せないメイドに、俺も頭を抱えてしまう。どう見ても、今夜のパーティーは大失敗だ。ゲストの不満が高まる一方で、リリアンの様子も心配だった。
「ねえ、ルーカス様。今すぐこのパーティーを中止にしましょう。このままじゃ、私のイメージが地に落ちちゃう」
パーティーの最中、リリアンが小声で俺に訴えかけてくる。だが、途中で打ち切るわけにはいかない。
「ダメだ。途中で止めるなんて、参加してくれたゲストたちに失礼だろう。最後までやり遂げるしかない」
「でも……!」
俺の言葉に、リリアンは唇を噛んで悔しそうな表情を浮かべた。
結局、パーティーは最後まで続行させた。けれど、満足のいくものとは程遠い内容だった。メイドたちの動きも悪く、ゲストに良い印象を与えることはできなかっただろう。
パーティーが終わり、ゲストが帰ったあと、リリアンは堪忍袋の緒が切れたように怒りを爆発させた。
パーティー会場に到着した俺は、隣にいるリリアンにそう声をかけた。今夜は彼女をお披露目する大切な舞台。だが、会場に到着した瞬間にリリアンはウキウキとした表情から一転、不機嫌な顔つきになった。
「なによ、これ! 私、こんなこと指示してないわ! ちょっと!」
リリアンは近くにいたメイドを呼び止めると、早速文句を言い始めた。確かに会場の雰囲気は、いつもと違う印象を受ける。装飾や照明にも、どこか違和感があった。
「申し訳ございません。しかし、もうゲストの皆様がお見えになっておりますので、会場の変更は難しゅうございます」
メイドはリリアンに頭を下げて謝罪の言葉を述べるが、彼女の怒りは収まらない。
「ああ、もう最悪!せっかくの私のお披露目の場なのに!」
「落ち着いて、リリアン。周りが見ているよ」
「……チッ!」
俺が諌めると、リリアンは渋々と感情を抑え込んだ。だが、先ほどの彼女の振る舞いを目撃したゲストも少なくないだろう。いきなりイメージを損ねてしまったようだ。
何とか気持ちを切り替えて、俺たちは挨拶回りを始めた。しかし、ゲストの反応は芳しくない。
「彼女が、新しい婚約者のリリアンです」
「どうぞ、よろしくお願いします!」
上品な笑顔で挨拶をするリリアンに、相手は素っ気ない返事を返す。
「ああ、話は聞いているよ。よろしく」
ぎこちない会話が続く中、離れた場所でゲスト同士がこそこそと小声で話しているのが聞こえてきた。
「ねえ、今のあの子が新しい婚約者なの? ちょっと驚いたわ」
「そうね。ヴィオラ嬢とは大違いだと思うわ。あの品の無さは、将来が心配になるわね」
「……」
リリアンへの辛辣な評価が飛び交う。やはり、先ほどの場面を見られていたのか。最初から印象も悪く、彼女と一緒にいる俺も徐々に居心地の悪さを感じ始めていた。
そして、その言葉をリリアン本人に聞かれないように意識をそらすのも大変だった。どうか、リリアンに聞こえないようにしてくれ。
いや、けれど。ゲストたちは、リリアンの本当の姿を知らないだけ。彼女だって、いい所もある。これを知ってもらえたら、きっと認めてもらえるはず。
「挨拶しても、会話が長続きしない。誰も私に興味がないみたい。どういうこと?」
「そ、そんなことないよ。みんな、君とどう接すればいいのか悩んでいるだけだ」
俺は取り繕うように言葉を返したが、リリアンの表情は晴れない。パーティーが進むにつれ、事態は思わぬ方向へと転がり始めた。
料理やドリンクの提供は遅れがちで、ゲストを待たせてしまう場面が続出する。演奏や余興の質も低く、パーティーの流れを乱していた。挙句の果てには、料理が途中で足りなくなるというアクシデントまで発生した。
「ルーカス様、大変です! メインディッシュが足りなくなりました!」
「なんだって? 予定していた人数分は用意していなかったのか?」
「は、申し訳ございません」
動揺を隠せないメイドに、俺も頭を抱えてしまう。どう見ても、今夜のパーティーは大失敗だ。ゲストの不満が高まる一方で、リリアンの様子も心配だった。
「ねえ、ルーカス様。今すぐこのパーティーを中止にしましょう。このままじゃ、私のイメージが地に落ちちゃう」
パーティーの最中、リリアンが小声で俺に訴えかけてくる。だが、途中で打ち切るわけにはいかない。
「ダメだ。途中で止めるなんて、参加してくれたゲストたちに失礼だろう。最後までやり遂げるしかない」
「でも……!」
俺の言葉に、リリアンは唇を噛んで悔しそうな表情を浮かべた。
結局、パーティーは最後まで続行させた。けれど、満足のいくものとは程遠い内容だった。メイドたちの動きも悪く、ゲストに良い印象を与えることはできなかっただろう。
パーティーが終わり、ゲストが帰ったあと、リリアンは堪忍袋の緒が切れたように怒りを爆発させた。
1,815
お気に入りに追加
2,889
あなたにおすすめの小説
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
きっとやり直せる。双子の妹に幸せを奪われた私は別の場所で幸せになる。
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、問題児である双子の妹が妊娠をしたと知らされる。
しかも、相手は私の婚約者らしい……。
すると、妹を溺愛する家族は容姿が似ている妹と私を交換しようと言いだしたのだ。
そして問題児の妹になった私は家族の縁を切られ追い出されてしまったのだった。
タイトルが全く思いつかず一時間悩みました(笑)
※8話ホラー要素あり。飛ばしても大丈夫です。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。
しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。
だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。
貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。
もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」
隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。
「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」
三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。
ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。
妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。
本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。
しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。
だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。
○○sideあり
全20話
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる