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第3話 期待と不安の狭間で
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私とルーカス様の婚約が破棄されてから、リリアンとルーカス様の仲は良好なようだ。おそらく二人は、以前から密かに会っていたのだろう。それを隠さなくなって、色々と見えるようになった、ということでしょうね。
妹は、何度も繰り返し自慢げに話してくる。正直、少し面倒だと感じてしまう。私に自慢するよりも、彼と一緒に過ごしたほうが有意義なのではないだろうか。
でもまあ、二人とも楽しそうだから、特に問題ないのかもしれない。仲睦まじく、ずっとそのままでいてほしいと私は願っている。
「お姉様は、早く新しい婚約相手を見つけないといけませんよ。大変ですね!」
リリアンが、私を見て言う。確かに、新しいお相手が見つかればいいけれど、焦ってもしょうがないとも思う。それも、運命の巡り合わせでしょう。
「えぇ、そうね」
妹に話を合わせて、私は適当に相槌を打つ。
「申し訳ありません。私がルーカス様に選ばれてしまったばっかりに!」
「……」
うーん。やっぱり、少し面倒ね。二人が別れない程度の、ちょっとした喧嘩でもあればいいのに。そうすれば、リリアンも私に構っている余裕はなくなるだろうに。
そう思ってしまうぐらい、ちょっとしつこい。
そんなある朝食の時間。いつものようにリリアンが絡んでくるので、いつものように適当に相槌を打っていると、久しぶりにお父様が食卓にやってきた。
「お帰りなさいませ、お父様。お仕事は問題なくお済みになりましたか?」
「ああ、こっちは何とかなったよ」
私の問いかけに、問題ないと答えるお父様。
こっちは、と言葉を濁された。私は、その言葉が少し気になった。何かあったのでしょうか。それについて聞く前に、向こうから問いかけられた。
「それで、ヴァレンタイン家との婚約を破棄したと聞いたぞ」
「はい、そうです」
なるほど、その事かと納得する。お父様も当然、気になっているようね。
「それについて、詳しく話を聞かせてもらえるか」
「わかり――」
「私も、お姉様が婚約破棄されたことは知っていますよ! その場に居合わせましたから」
私が説明を始めようとすると、妹のリリアンが強引に入ってくる。それについて、話したいようだ。それなら、彼女に説明役を譲ろうかしら。
「いや、リリアンからは後で聞く。まずは、ヴィオラから話を聞かせてくれ」
お父様が、そう言う。
「わかりました」
「えー!」
不満げなリリアン。そんなに自分で説明したかったの?
文句を言う妹の横で、私はお父様にルーカス様との婚約破棄に至るまでの経緯を説明した。朝食中や、食後の時間も使って、たっぷりと話す。
「なるほど、そういうことか。忙しくしている間に、そんなことになっていたとは」
説明を終えると、お父様は腕を組み、渋い表情で何度か頷いた。確かに、お父様が留守の間の出来事だった。
「ヴィオラ。大事な時期に一緒にいてやれなくて、すまなかったな」
「いえ、私は大丈夫ですから」
「仕方ないのよ! お姉様に非があって、ルーカス様が失望されたのだから」
ここでも割り込んでくるリリアン。
ルーカス様が私に対して失望された、ね。無能と突きつけられた件も関係あるのかしら。よくわからないけれど、リリアンは不満そうな顔をしている。
「それじゃあ、ヴィオラの次の婚約候補を探さないとな」
「よろしくお願いいたします」
お父様のお言葉に、私はすべて任せることにした。
そんなやり取りから一週間ほど経った頃に、私との縁談を望む方が現れたそうだ。レイクウッド侯爵家の若手当主、ジェイミー様という方らしい。
パーティー会場で何度かお会いしたことがある。お話もして、困っていた彼に贈り物をしたこともあった。そんな彼が、私との婚約を望んでいるらしい。
「レイクウッド家は、我がローゼンバーグ家と領地が近くて、昔から付き合いのある家だ」
お父様はそう説明しながら、申し出を快諾したいとお話された。私はどうしたいのかと聞かれた。
「うふふ! 新しいお相手が見つかったのね、お姉様。侯爵家当主が次の婚約相手なのね。お姉様に、とってもお似合いですね。”侯爵家”の当主様なんて」
リリアンが、意地悪そうに言う。とても嬉しそうに、侯爵家という言葉を強調してくる。侯爵家といったら、私たちと同じなのに。もう既に妹は、公爵夫人として上級貴族の気持ちになっているのかもしれない。
とりあえず、彼女の言葉はスルーで。今は、新しい婚約相手のお方に集中するべきだわ。心の中でそう呟いた。
「わかりました。一度、会ってみたいです」
「そうか。日時を調整してもらって、会えるようにしてもらう。それまで、待て」
「はい」
私の中では、期待と不安が入り混じっていた。とにかく、ジェイミー様との出会いが今から待ち遠しかった。
妹は、何度も繰り返し自慢げに話してくる。正直、少し面倒だと感じてしまう。私に自慢するよりも、彼と一緒に過ごしたほうが有意義なのではないだろうか。
でもまあ、二人とも楽しそうだから、特に問題ないのかもしれない。仲睦まじく、ずっとそのままでいてほしいと私は願っている。
「お姉様は、早く新しい婚約相手を見つけないといけませんよ。大変ですね!」
リリアンが、私を見て言う。確かに、新しいお相手が見つかればいいけれど、焦ってもしょうがないとも思う。それも、運命の巡り合わせでしょう。
「えぇ、そうね」
妹に話を合わせて、私は適当に相槌を打つ。
「申し訳ありません。私がルーカス様に選ばれてしまったばっかりに!」
「……」
うーん。やっぱり、少し面倒ね。二人が別れない程度の、ちょっとした喧嘩でもあればいいのに。そうすれば、リリアンも私に構っている余裕はなくなるだろうに。
そう思ってしまうぐらい、ちょっとしつこい。
そんなある朝食の時間。いつものようにリリアンが絡んでくるので、いつものように適当に相槌を打っていると、久しぶりにお父様が食卓にやってきた。
「お帰りなさいませ、お父様。お仕事は問題なくお済みになりましたか?」
「ああ、こっちは何とかなったよ」
私の問いかけに、問題ないと答えるお父様。
こっちは、と言葉を濁された。私は、その言葉が少し気になった。何かあったのでしょうか。それについて聞く前に、向こうから問いかけられた。
「それで、ヴァレンタイン家との婚約を破棄したと聞いたぞ」
「はい、そうです」
なるほど、その事かと納得する。お父様も当然、気になっているようね。
「それについて、詳しく話を聞かせてもらえるか」
「わかり――」
「私も、お姉様が婚約破棄されたことは知っていますよ! その場に居合わせましたから」
私が説明を始めようとすると、妹のリリアンが強引に入ってくる。それについて、話したいようだ。それなら、彼女に説明役を譲ろうかしら。
「いや、リリアンからは後で聞く。まずは、ヴィオラから話を聞かせてくれ」
お父様が、そう言う。
「わかりました」
「えー!」
不満げなリリアン。そんなに自分で説明したかったの?
文句を言う妹の横で、私はお父様にルーカス様との婚約破棄に至るまでの経緯を説明した。朝食中や、食後の時間も使って、たっぷりと話す。
「なるほど、そういうことか。忙しくしている間に、そんなことになっていたとは」
説明を終えると、お父様は腕を組み、渋い表情で何度か頷いた。確かに、お父様が留守の間の出来事だった。
「ヴィオラ。大事な時期に一緒にいてやれなくて、すまなかったな」
「いえ、私は大丈夫ですから」
「仕方ないのよ! お姉様に非があって、ルーカス様が失望されたのだから」
ここでも割り込んでくるリリアン。
ルーカス様が私に対して失望された、ね。無能と突きつけられた件も関係あるのかしら。よくわからないけれど、リリアンは不満そうな顔をしている。
「それじゃあ、ヴィオラの次の婚約候補を探さないとな」
「よろしくお願いいたします」
お父様のお言葉に、私はすべて任せることにした。
そんなやり取りから一週間ほど経った頃に、私との縁談を望む方が現れたそうだ。レイクウッド侯爵家の若手当主、ジェイミー様という方らしい。
パーティー会場で何度かお会いしたことがある。お話もして、困っていた彼に贈り物をしたこともあった。そんな彼が、私との婚約を望んでいるらしい。
「レイクウッド家は、我がローゼンバーグ家と領地が近くて、昔から付き合いのある家だ」
お父様はそう説明しながら、申し出を快諾したいとお話された。私はどうしたいのかと聞かれた。
「うふふ! 新しいお相手が見つかったのね、お姉様。侯爵家当主が次の婚約相手なのね。お姉様に、とってもお似合いですね。”侯爵家”の当主様なんて」
リリアンが、意地悪そうに言う。とても嬉しそうに、侯爵家という言葉を強調してくる。侯爵家といったら、私たちと同じなのに。もう既に妹は、公爵夫人として上級貴族の気持ちになっているのかもしれない。
とりあえず、彼女の言葉はスルーで。今は、新しい婚約相手のお方に集中するべきだわ。心の中でそう呟いた。
「わかりました。一度、会ってみたいです」
「そうか。日時を調整してもらって、会えるようにしてもらう。それまで、待て」
「はい」
私の中では、期待と不安が入り混じっていた。とにかく、ジェイミー様との出会いが今から待ち遠しかった。
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