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第27話 遅すぎた危機感 ※王国王子視点
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そのまま私は牢屋に放り込まれた。王子である私に、こんな仕打ちをして許されるはずがない。兵士も監視している。なぜ、このような扱いを受けねばならないのだ。
怒りが湧いてくる。だが、何もできない。今は、大人しく待つしかないのか。
アルメルのことも心配だった。兵士に拘束されたあと、何処かへ連れて行かれた。私とは別の場所へ。その後、どうなったのかわからない。彼女が酷い目に遭わされていないか、それがとても気がかりだった。
アルメルに何かしたら、ただではおかない。その意思を込めて兵士を睨みつけるが、まったく相手にされない。
早くこの牢屋を出て、彼女を助けに行きたいのに。アルメルの身を案じながら、私は静かに待った。時間が経てば、友人の誰かが助けに来てくれるかも。国王である父が来てくれるかも。
きっと誰かが助けに来てくれる。そして、すぐにここから出られるはず。希望はある。
どのくらいの時間が経っただろう。牢屋の外で、足音が聞こえてきた。誰か来たようだ。足音が聞こえるほうに視線を向けて、じっと見つめる。薄暗い中に、顔が見えた。
「父上ッ!」
やって来たのは、苦い顔をした父上だった。ようやく、話が出来る相手が来てくれたな。父に頼んで、ここに居る兵士を全員処刑してもらう。
「……」
父上は、私の姿を見たのに何も言わない。ただ、こちらをじっと見下ろしてくる。この手にある物が、父上には見えていないのか。
「父上! この手枷を外すように命じてください! アルメルのことも今すぐ――」
「それは、出来ない」
「な!?」
父上は、私の言葉を遮るようにして言った。静かな口調だが、有無を言わせぬ迫力があった。出来ないとは、どういうことなんだ。何かの冗談か? 冗談だったとしたら笑えない。
しかし、父はそれ以外に何も言わない。ただ俺を睨んでくるだけ。その目を見て、背筋がゾクリとした。下手なことを言ったら、マズい。だが、そのこのまま引き下がるわけにはいかない。
「どうしてですか? なぜ私は、このような仕打ちを受けねばならないのですか! 早く、私を牢屋から出してください!」
「だから、それは無理な話だ」
「どうして!」
私は、叫ぶように言った。国王である父なら、無理なんかない。それなのに、私を冷たい目のまま見下ろしてくる。
どれぐらいの時間が流れたのか。沈黙が続いて、先に口を開いたのは父だった。
「こんな事態になるまで何も気付かなかった儂は愚か者だ。愚か者なりに責任を取らねばならない」
「責任? 一体、何の話ですか。それよりもアルメルのことを――」
早く彼女の安全を確認しないと。しかし、父は続けて言った。
「息子の死刑執行を命じるのは、胸が張り裂ける思いだ。だが、こうなってしまったからには仕方あるまい」
「はぁ? 何を……」
何を言っているのか、さっぱりわからない。死刑? どうして。私は何もしていないのに。本気、なのか。
「死刑執行の日まで、そこで大人しく過ごすが良い」
怒りが湧いてくる。だが、何もできない。今は、大人しく待つしかないのか。
アルメルのことも心配だった。兵士に拘束されたあと、何処かへ連れて行かれた。私とは別の場所へ。その後、どうなったのかわからない。彼女が酷い目に遭わされていないか、それがとても気がかりだった。
アルメルに何かしたら、ただではおかない。その意思を込めて兵士を睨みつけるが、まったく相手にされない。
早くこの牢屋を出て、彼女を助けに行きたいのに。アルメルの身を案じながら、私は静かに待った。時間が経てば、友人の誰かが助けに来てくれるかも。国王である父が来てくれるかも。
きっと誰かが助けに来てくれる。そして、すぐにここから出られるはず。希望はある。
どのくらいの時間が経っただろう。牢屋の外で、足音が聞こえてきた。誰か来たようだ。足音が聞こえるほうに視線を向けて、じっと見つめる。薄暗い中に、顔が見えた。
「父上ッ!」
やって来たのは、苦い顔をした父上だった。ようやく、話が出来る相手が来てくれたな。父に頼んで、ここに居る兵士を全員処刑してもらう。
「……」
父上は、私の姿を見たのに何も言わない。ただ、こちらをじっと見下ろしてくる。この手にある物が、父上には見えていないのか。
「父上! この手枷を外すように命じてください! アルメルのことも今すぐ――」
「それは、出来ない」
「な!?」
父上は、私の言葉を遮るようにして言った。静かな口調だが、有無を言わせぬ迫力があった。出来ないとは、どういうことなんだ。何かの冗談か? 冗談だったとしたら笑えない。
しかし、父はそれ以外に何も言わない。ただ俺を睨んでくるだけ。その目を見て、背筋がゾクリとした。下手なことを言ったら、マズい。だが、そのこのまま引き下がるわけにはいかない。
「どうしてですか? なぜ私は、このような仕打ちを受けねばならないのですか! 早く、私を牢屋から出してください!」
「だから、それは無理な話だ」
「どうして!」
私は、叫ぶように言った。国王である父なら、無理なんかない。それなのに、私を冷たい目のまま見下ろしてくる。
どれぐらいの時間が流れたのか。沈黙が続いて、先に口を開いたのは父だった。
「こんな事態になるまで何も気付かなかった儂は愚か者だ。愚か者なりに責任を取らねばならない」
「責任? 一体、何の話ですか。それよりもアルメルのことを――」
早く彼女の安全を確認しないと。しかし、父は続けて言った。
「息子の死刑執行を命じるのは、胸が張り裂ける思いだ。だが、こうなってしまったからには仕方あるまい」
「はぁ? 何を……」
何を言っているのか、さっぱりわからない。死刑? どうして。私は何もしていないのに。本気、なのか。
「死刑執行の日まで、そこで大人しく過ごすが良い」
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