上 下
13 / 42

第13話 前途多難 ※外交官の男視

しおりを挟む
 今まで重要視されてこなかった、アラムドラム帝国との外交を任されることになった。考え方を変えよう。ここで困難な交渉を成功させて成果を出せれば、私の外交官としての評価が上がるということ。そう前向きに捉えて、任された仕事に挑戦する。

 ここで成功すれば、アルメルが今よりもっと私のことを認めてくれるだろうから。



 せっかく気持ちが奮い立ったのに、いきなり困難が待ち受けていた。

「予算は、これだけなのか?」
「はい。これ以上は出せません」

 任命されて最初の仕事になったのが、アラムドラム帝国の外交官との顔合わせ。ではなく、財務担当との交渉になってしまった。

「もう少し、どうにかならないのか? これでは、交渉は不可能だ。場を設けることさえできない」
「何とか、お助けしたいのはやまやまなのですが、我が国も苦しい状況なので」

 助ける気持ちを少しも感じられない返答に、つい苛立ってしまう。王国のためになる、非常に大事なことなのに、なぜ協力してくれない。

「状況は、わかっている。でも、我々だって交渉で成果を出さなくてはいけないんだ。だから、少しでも予算を増やしてくれないか?」
「無理です。それ以上は出せません」
「……」
「お話は、以上ですね?」

 それだけ言うと、担当者は去っていった。まさか他国との交渉に入る前に、自国との予算交渉でつまずくなんて思わなかった。何度か話し合いをしてみた結果、予算の増額は無理という結論。それが変わることは、おそらくないだろう。

 王国は、金を出す気はない。

「くそっ」

 予算を上げることは諦めるしかない。元々、王国の財務担当はケチで有名だった。現場の状況を理解していない。それで最近、騎士団の遠征任務も失敗したみたいだし。

 とにかく、金がない。いつものように、実家に頼ることも出来ない。最近、婚約を破棄することを認めてもらった。これ以上を求めると、何を言われるのか予想できない。アルメルとの付き合いもやめろと言ってくるし。

 だから、実家は頼れない。

 元婚約者の実家はどうか。これも頼れない。援助を理由に復縁を求められる可能性がある。今後は、あまり関わらないように気をつけないと。

 しばらく前まで仕事仲間だった者たちは、私がアラムドラム帝国の担当になったと聞いてから、一気に離れていった。アラムドラム帝国の案件では成果を出せないし、多少のことでは評価もされないという噂だから関わらないようにしているのだろう。今まで仕事で助けてやったのに、薄情な奴らだ。

 アルメルを頼るのはどうか。これもダメ。愛する女性を頼るのは、男としてどうかと思う。プライドが許さない。

 最終的には、親友たちの力を頼ることになるだろう。彼らは、とても頼りになる。ただ、助けてもらった時に私ではなく他の男がアルメルの評価を上げることになるかもしれない。それは、嫌だ。恋愛関係で利用されるのは、絶対に避けたい。

 やはり、自分の力で何とかしないといけないか。だがやはり、アラムドラム帝国と外交する仕事というのは非常に困難のようだ。やっぱり無理なのか。ここでの仕事は諦めて、担当を変えてもらうように頼むべきか。

 閑職に回されてしまった私は、まだ仕事で成果を出すことが出来ていない。
しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

「優秀すぎて鼻につく」と婚約破棄された公爵令嬢は弟殿下に独占される

杓子ねこ
恋愛
公爵令嬢ソフィア・ファビアスは完璧な淑女だった。 婚約者のギルバートよりはるかに優秀なことを隠し、いずれ夫となり国王となるギルバートを立て、常に控えめにふるまっていた。 にもかかわらず、ある日、婚約破棄を宣言される。 「お前が陰で俺を嘲笑っているのはわかっている! お前のような偏屈な女は、婚約破棄だ!」 どうやらギルバートは男爵令嬢エミリーから真実の愛を吹き込まれたらしい。 事を荒立てまいとするソフィアの態度にギルバートは「申し開きもしない」とさらに激昂するが、そこへ第二王子のルイスが現れる。 「では、ソフィア嬢を俺にください」 ルイスはソフィアを抱きしめ、「やっと手に入れた、愛しい人」と囁き始め……? ※ヒーローがだいぶ暗躍します。

処刑される未来をなんとか回避したい公爵令嬢と、その公爵令嬢を絶対に処刑したい男爵令嬢のお話

真理亜
恋愛
公爵令嬢のイライザには夢という形で未来を予知する能力があった。その夢の中でイライザは冤罪を着せられ処刑されてしまう。そんな未来を絶対に回避したいイライザは、予知能力を使って未来を変えようと奮闘する。それに対して、男爵令嬢であるエミリアは絶対にイライザを処刑しようと画策する。実は彼女にも譲れない理由があって...

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。 ルイーズは伯爵家。 「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」 と言われてしまう。 その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。 そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

婚約破棄された貧乏令嬢ですが、意外と有能なの知っていますか?~有能なので王子に求婚されちゃうかも!?~

榎夜
恋愛
「貧乏令嬢となんて誰が結婚するんだよ!」 そう言っていましたが、隣に他の令嬢を連れている時点でおかしいですわよね? まぁ、私は貴方が居なくなったところで困りませんが.......貴方はどうなんでしょうね?

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」 子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。 彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。 彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。 こんなこと、許されることではない。 そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。 完全に、シルビアの味方なのだ。 しかも……。 「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」 私はお父様から追放を宣言された。 必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。 「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」 お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。 その目は、娘を見る目ではなかった。 「惨めね、お姉さま……」 シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。 そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。 途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。 一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

ざまぁされるのが確実なヒロインに転生したので、地味に目立たず過ごそうと思います

真理亜
恋愛
私、リリアナが転生した世界は、悪役令嬢に甘くヒロインに厳しい世界だ。その世界にヒロインとして転生したからには、全てのプラグをへし折り、地味に目立たず過ごして、ざまぁを回避する。それしかない。生き延びるために! それなのに...なぜか悪役令嬢にも攻略対象にも絡まれて...

伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...