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第9話 婚約破棄の代償 ※宮廷魔術師の長候補の視点
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「マリンとの婚約破棄と、取引の中止に何の関係が?」
本当に意味がわからなかった。僕がマリンとの婚約を破棄したことで、なぜ取引を中止させるのか。それがどうして、素材の品質低下に繋がっていくのか。
「何を言っているのですか。当然でしょう! マリン様のご実家であるリュミオール家が、今までの商売を取り仕切っていたのに。それで今まで、クロヴィス様も恩恵を受けてきたというのに。知らなかったのですか?」
「……いや、それはもちろん知っているけど」
宮廷魔術師である僕に対して、そんな口の利き方をする男にムッとするが、今はそれ以上に気になることがあったので、そこは無視して話を聞く。
リュミオール家が関わっていることは、もちろん知っていた。だけど理解できないのは、なぜ今になって取引を止めることになったのか。
「ですから、マリン様との婚約を破棄したからですよッ!」
「そんな、婚約を破棄したぐらいで取引を止めてしまうなんて」
それが原因なら、たしかに僕のせいである。しかし、そんなことで取引を止めてしまったら、リュミオール家にも大きな損害が出るはず。王国との重要な関係を断ち切ることになるのだから。
「破棄した、ぐらい……? その程度の認識だったのですか。貴方は本当に……。そのせいで、我々がこんなに苦労しているというのに……」
男は頭を抱えて、ブツブツと言い始めた。大変みたいだが、そんなことよりも今は優先するべきことがあるだろう。
「ともかく、取引している商人が変わったことは理解した。だが、新しい商人が用意した素材は品質が最悪だぞ。もっと質のいい物を用意してくれ」
「……それは、これから改善していきます」
あまり反省したような表情じゃないのが気になるが、問題点はちゃんと伝えた。可能であれば、リュミオール家と交渉して取引を再開するように、手を打ってほしいのだが。それは、彼らの仕事だろう。僕が口出しすることじゃない。質のいい素材さえ用意してくれたら、僕は何も文句は言わない。
素材調達班との話し合いを終えて、自分の研究室に戻ってきた。
「ったく」
今の僕の仕事は、新たな魔法技術を研究すること。それに集中するだけ。この研究結果が、王国の発展に貢献する。そんな、とても大事な仕事。自分の役目を正確に理解し、それを遂行すること。それが僕のやるべきことだ。気持ちを切り替えて、研究を再開する。
しかし、その後も用意された素材の品質は変わらず最悪だった。
そのせいで、僕の研究は停滞してしまった。回ってくる素材は相変わらず粗悪品で、何度も実験を失敗した。研究を進めることができない。素材調達班には何度も文句を言ったが、改善されることはなかった。
「こっちだって大変なんです! 素材を調達できる商人を探してきて、交渉して取引を成立させるだけでも一苦労なのに」
「それじゃあ、困る。なんとかしてくれ」
「素材の品質まで指定するのは、もっと関係が深まってからじゃないと無理ですよ! そんな無茶を言わないでくださいっ!」
そんな言い訳ばかりで、結局なにも解決しなかった。
「今までやってくれていた、リュミオール家に頼めばいいじゃないか」
「だから、無理ですよ!? リュミオール家は婚約破棄の件で激怒していて、交渉のテーブルにすらついてくれませんからね!」
「はぁ?」
こんなことになるとは、予想外だった。マリンとの婚約を破棄したぐらいで、そんな。やっぱり、理解できない。でも、アルメルと一緒になるために婚約破棄は仕方のないことだった。
とはいえ、今の状況も困ってしまう。
せっかく研究のアイデアがあるのに、それを実験できないなんて。モヤモヤした気持ちが続いて、集中力も途切れ途切れに。
こんな大事な時期に、成果を出せないなんて。
あぁ、どうしよう。
本当に意味がわからなかった。僕がマリンとの婚約を破棄したことで、なぜ取引を中止させるのか。それがどうして、素材の品質低下に繋がっていくのか。
「何を言っているのですか。当然でしょう! マリン様のご実家であるリュミオール家が、今までの商売を取り仕切っていたのに。それで今まで、クロヴィス様も恩恵を受けてきたというのに。知らなかったのですか?」
「……いや、それはもちろん知っているけど」
宮廷魔術師である僕に対して、そんな口の利き方をする男にムッとするが、今はそれ以上に気になることがあったので、そこは無視して話を聞く。
リュミオール家が関わっていることは、もちろん知っていた。だけど理解できないのは、なぜ今になって取引を止めることになったのか。
「ですから、マリン様との婚約を破棄したからですよッ!」
「そんな、婚約を破棄したぐらいで取引を止めてしまうなんて」
それが原因なら、たしかに僕のせいである。しかし、そんなことで取引を止めてしまったら、リュミオール家にも大きな損害が出るはず。王国との重要な関係を断ち切ることになるのだから。
「破棄した、ぐらい……? その程度の認識だったのですか。貴方は本当に……。そのせいで、我々がこんなに苦労しているというのに……」
男は頭を抱えて、ブツブツと言い始めた。大変みたいだが、そんなことよりも今は優先するべきことがあるだろう。
「ともかく、取引している商人が変わったことは理解した。だが、新しい商人が用意した素材は品質が最悪だぞ。もっと質のいい物を用意してくれ」
「……それは、これから改善していきます」
あまり反省したような表情じゃないのが気になるが、問題点はちゃんと伝えた。可能であれば、リュミオール家と交渉して取引を再開するように、手を打ってほしいのだが。それは、彼らの仕事だろう。僕が口出しすることじゃない。質のいい素材さえ用意してくれたら、僕は何も文句は言わない。
素材調達班との話し合いを終えて、自分の研究室に戻ってきた。
「ったく」
今の僕の仕事は、新たな魔法技術を研究すること。それに集中するだけ。この研究結果が、王国の発展に貢献する。そんな、とても大事な仕事。自分の役目を正確に理解し、それを遂行すること。それが僕のやるべきことだ。気持ちを切り替えて、研究を再開する。
しかし、その後も用意された素材の品質は変わらず最悪だった。
そのせいで、僕の研究は停滞してしまった。回ってくる素材は相変わらず粗悪品で、何度も実験を失敗した。研究を進めることができない。素材調達班には何度も文句を言ったが、改善されることはなかった。
「こっちだって大変なんです! 素材を調達できる商人を探してきて、交渉して取引を成立させるだけでも一苦労なのに」
「それじゃあ、困る。なんとかしてくれ」
「素材の品質まで指定するのは、もっと関係が深まってからじゃないと無理ですよ! そんな無茶を言わないでくださいっ!」
そんな言い訳ばかりで、結局なにも解決しなかった。
「今までやってくれていた、リュミオール家に頼めばいいじゃないか」
「だから、無理ですよ!? リュミオール家は婚約破棄の件で激怒していて、交渉のテーブルにすらついてくれませんからね!」
「はぁ?」
こんなことになるとは、予想外だった。マリンとの婚約を破棄したぐらいで、そんな。やっぱり、理解できない。でも、アルメルと一緒になるために婚約破棄は仕方のないことだった。
とはいえ、今の状況も困ってしまう。
せっかく研究のアイデアがあるのに、それを実験できないなんて。モヤモヤした気持ちが続いて、集中力も途切れ途切れに。
こんな大事な時期に、成果を出せないなんて。
あぁ、どうしよう。
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