逆ハーレムが成立した後の物語~原作通りに婚約破棄される当て馬女子だった私たちは、自分たちの幸せを目指して新たな人生を歩み始める~

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
7 / 42

第7話 帝国での新たな関係

しおりを挟む
「それで君は、これからどうするつもりなのかな?」
「実はまだ、何をするのか決めておりません。しばらくは、帝国でのんびり過ごそうかと考えていますわ」

 そう言うと、彼は驚いた表情で私を見つめる。この考えは、予想していなかったようだ。

「それは、もったいないね。君のように優秀な人間ならば、引く手数多だ。活躍できる場所は、たくさんあるだろう」
「いえいえ、そんな」

 ジャスター様が褒めてくれるが、私はあまり乗り気ではない。これからは、目立つことを極力控えていきたい。だから、仕事などは引き受けずにまったりと暮らしていくつもり。

「私よりも、私の両親や兄弟たちが優秀ですから。私など、大した人間ではございませんよ」

 私は謙遜した。しかし、本心でもある。私は、あくまで前世の記憶と原作ゲームの知識を持っているだけの凡人。ヒロインの行動を完全に妨害することも出来なかったのだから。結局は、逆ハーレムルートまで攻略されて、別の国まで逃げてきたのだから。

 優秀であれば、もっと早い段階で阻止できていたはず。逆転の一手を思いついていたはず。友人たちの王国での暮らしを守れたはず。そして私は今も、王国で悠々自適に暮らしていたかもしれない。

 色々な人達を巻き込んでしまい、帝国という違う場所に移ってきて、どうにか立て直すことが出来たけれど。もっと良い方法があったかも。残念ながら私には、思いつかなかった。

 だから優秀という言葉には程遠いと、自分では思っている。しかし、ジャスター様の評価は違うようだった。

「そんなに自分を卑下することはないよ。君の実力は、この私が保証する。もっと、自信を持っても良いと思うけどね」
「……そうでしょうか?」
「ああ、間違いないさ」

 不安な私に、ジャスター様が力強く言ってくれた。帝国が誇る貴族である彼に認められるのは、素直に嬉しいと思う。

「ありがとうございます」

 私は、お礼を言った。すると、彼はこんな提案をしてきた。

「やりたいことがなければ、私の仕事を手伝ってほしい。君に、私の秘書をやってほしいんだ」
「私が、ジャスター様の仕事のお手伝い、ですか?」

 予想していなかった話で、思わず聞き返してしまう。

「ああ。君のような優秀な人間がそばに居てくれると、私も非常に助かるよ」

 ジャスター様の表情は真剣だ。冗談で言っているわけではなさそうである。私は、少し考える。彼には、色々と助けてもらった恩がある。その恩を返すためにも、私の力が役立つのであれば、お手伝いしたいと思う。

 少し考えてから、どうするか結論を出す。

「わかりましたわ。微力ながら、お手伝いさせてもらいます」
「ありがとう! 助かるよ」

 私の返事に、ジャスター様は嬉しそうな笑みを浮かべた。そんな彼の笑顔を見ていると、私まで嬉しくなってくる。役に立ちたいと、心から思う。

「それでは改めて、よろしくお願いしますジャスター様」
「こちらこそよろしく、エレノラ嬢」

 こうして私は、ジャスター様の秘書をすることに決まった。これがキッカケとなり、私とジャスター様の関係が長く続くことになるなんて、この時の私は全く想像していなかった。
しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね

星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』 悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。 地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……? * この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。 * 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...