妹よりも劣っていると指摘され、ついでに婚約破棄までされた私は修行の旅に出ます

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
8 / 30

第8話 出会い

しおりを挟む
「すみません、ロバンの奴が迷惑を掛けちゃって……」

 盗賊に立ち向かっていった彼の傷を癒やしてあげていると、もうひとり別の青年が近寄ってきた。そして彼は謝った。どうやら、私が傷を回復した男性はロバンという名前らしい。謝ってきた青年は、ロバンの仲間だろうか。

「おい、何だよダイロン! せっかく皆を助けようと思って頑張ったのに」
「お前が無茶して盗賊に突撃していったのを、この娘に後始末してもらったんだぞ。しかも、傷まで回復してもらって。迷惑以外の何物でもないよ」
「うっ!? そ、それは確かにそうだけど……」

 仲間の青年に叱られたロバンという男は、気まずそうな表情で言葉を詰まらせる。私は、それほど気にしていないけれど。後始末した、というつもりはない。むしろ、一緒に協力して盗賊連中をやっつけた。そんな感じだと思った。少なくとも、迷惑に感じていない。

 しかし、その青年は非常に申し訳ないというような表情だった。

「改めて、すまなかった。ロバンの奴が、君にとても迷惑をかけてしまって」
「いいえ、そんな。ロバンさんが盗賊達の注目を集めてくれたおかげで、私が魔法を使うタイミングも生まれました。それで、乗客にも被害が出なくて、皆が無事だったのです。彼が勇敢に行動してくれたおかげですよ」
「へへっ! 彼女も、こう言ってくれてる。俺が勇敢だって!」

 謝罪して頭を下げる、ダイロンと呼ばれた青年。しかし、私も助けられたのは事実だった。彼が行動してくれたおかげで、上手くいったのは本当だろう。

 ただ、私の一言でロバンという青年が調子に乗ってしまった。そんな彼の態度に、私は苦笑するしかない。しかし、彼の仲間は怒ったようだ。

「コイツに、そんな気を使わなくても結構ですよ」
「なんだと? おい!」

 一見すると険悪そうな雰囲気だが、実は仲が良さそうな二人だった。その後、私は彼らに自己紹介をした。彼らも、名前と旅の目的を教えてくれた。

「俺達は冒険者になるために、ローハタの平原に向かってるんだ」
「あそこにはダンジョンがあるので、そこで冒険者になって一旗揚げるんですよ」
「そうなのですか。実は私も、冒険者になろうと思って旅をしていました」

 ここに偶然、三人の冒険者志望が集まっていた。少し会話をして彼らが良い人だと感じた私は、ローハタの平原まで同行することに決めた。

「もしよければ、一緒に行きませんか?」
「いいのか? 俺は、別に構わないが」
「君が一緒に来てくれるのなら、とても心強いよ。よろしく頼む」

 一緒に行かないかと誘ってみると、二人はすぐに了承してくれた。こうして私は、ロバンさん達と一緒に国境を超えた先にあるローハタの平原へ向かうことになった。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

婚約を解消してくれないと、毒を飲んで死ぬ? どうぞご自由に

柚木ゆず
恋愛
 ※7月25日、本編完結いたしました。後日、補完編と番外編の投稿を予定しております。  伯爵令嬢ソフィアの幼馴染である、ソフィアの婚約者イーサンと伯爵令嬢アヴリーヌ。二人はソフィアに内緒で恋仲となっており、最愛の人と結婚できるように今の関係を解消したいと考えていました。  ですがこの婚約は少々特殊な意味を持つものとなっており、解消するにはソフィアの協力が必要不可欠。ソフィアが関係の解消を快諾し、幼馴染三人で両家の当主に訴えなければ実現できないものでした。  そしてそんなソフィアは『家の都合』を優先するため、素直に力を貸してくれはしないと考えていました。  そこで二人は毒を用意し、一緒になれないなら飲んで死ぬとソフィアに宣言。大切な幼馴染が死ぬのは嫌だから、必ず言うことを聞く――。と二人はほくそ笑んでいましたが、そんなイーサンとアヴリーヌに返ってきたのは予想外の言葉でした。 「そう。どうぞご自由に」

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません

しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。 曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。 ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。 対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。 そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。 おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。 「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」 時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。 ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。 ゆっくり更新予定です(*´ω`*) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

処理中です...