恋愛に興味がない私は王子に愛人を充てがう。そんな彼は、私に本当の愛を知るべきだと言って婚約破棄を告げてきた

キョウキョウ

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それから

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 何故かアーデルベルト様は、あのパーティーの夜から恋人関係を解消していった。

「よろしいのですか? 必要なら、私の方で恋愛したいという女性を探しますが」
「別に必要ないよ。そろそろ俺も、落ち着いて生活するべき時期が来たと思ってね」
「そうなのですか?」
「そうなんだよ」

 彼は、急に心変わりした。どういった心境の変化なのか、私には原因が分からない。

 アーデルベルト様は恋人たちと、ちゃんと円満に別れたようだ。相手の女性たちは納得して、恋人関係を解消したらしい。

 変なトラブルが起きないか心配だったけれど、それは杞憂だったようで安心する。



 さらに月日が経って、私は3人の子どもを生んだ。1人目は、賢そうな男の子を。2人目は、ヤンチャな男の子。3人目に、可愛い女の子が生まれてきてくれた。

「アリスにエジット、それからジャン! 皆、可愛いなぁ!」

 アーデルベルト様が、子どもたちとじゃれ合っている。彼は、もの凄く子どもたちを可愛がってくれた。子どもが嫌いそうなイメージだったけど、そんな事は無かったらしい。

「父さん、僕は新しい本が欲しい。買ってくれる?」
「おぅ、良いぞ! 自ら勉強するとは、偉いなぁエジット!」

 ああやってよく、父親に本をねだる長男のエジット。私にも相談してほしいのに、彼は父親を頼っていた。

「ねぇ! 俺は、剣を学びたいよ! 父さん!」
「うーん。ジャンはもうちょっと、大きくなってからだな」
「えー!」

 次男のジャンは、いつも剣を習いたいと懇願してくる。まだ危ないから、もう少し成長してからだろう。私も、アーデルベルト様と同じ考え。

 ジャンは不満そうに、ほっぺたを膨らませて抗議している。

「アリスには、ちゃんとした婚約相手を見つけてあげるからなぁ! 待ってろよ」
「でも、お父さまは昔、うきなを流していたんでしょ? アリスも、うきなを流せるように頑張るわ!」
「う、浮名……? い、いやそれは、止めてくれ……」

 長女のアリスとの会話で、アーデルベルト様は過去のことについて苦しそうに思い返していた。アリスは、どこでそんな言葉を覚えてきたのだろう。

「私は、初めての婚約相手には悩まされましたから。アリスがそうならないように、シッカリ相手を見極めましょう」
「そ、そうだな。俺たちのように、幸せになれる相手をちゃんとな」

 なんだかんだ、私たちは上手くやっていた。おそらく、こういう関係が恋とか愛というものなのだろうと、ようやく少しだけど理解できたような気がする。

 昔に比べて、ちょっとだけ興味を持てたかな。でもまぁ私には、この関係がずっと続けばいい、という気持ちしかない。

 アーデルベルト様と、可愛い子どもたち3人と幸せに過ごせる日々を大切にしたいと思った。
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感想 3

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みんなの感想(3件)

せち
2022.05.12 せち

主人公の清いところがまた良い😆👏

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セライア(seraia)
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ゆらぽって
2021.06.19 ゆらぽって
ネタバレ含む
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