突然、婚約破棄を言い渡された私は王子の病気を疑う【短編】

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
1 / 6

突然すぎる婚約破棄

しおりを挟む
「オリヴィア、貴様との婚約を今ここで破棄させてもらう!」
「え……?」

 今年で学校を卒業する学生たちが、卒業する事を記念するパーティが行われている最中の事だった。先の発言をしたのはディートリヒ王子。そして、言葉を向けられたのはオリヴィアという名の女性、王子の婚約者だった。

 パーティーが始まってしばらく経った後の、参加者達が各々で歓談している最中に起きた出来事である。

 将来、この国でトップに立つであろう人物。王位継承順位第一位であったディートリヒ王子の動向は、パーティでも皆の注目の的であった。だから、そんな彼の放った言葉は参加者たち、皆の耳にも当然のように聞こえていた。

 卒業パーティーに参加していた者たちは、一斉に動きを止めた。会場は、シーンと静まり返っている。ディートリヒ王子は、皆の注目が集まっていることを知りながら笑みを浮かべる。自分が計画していた通りに進んでいる、と。

「まさか、そんな……!?」

 王子から婚約破棄を告げられたオリヴィアは、傍から見ても分かるぐらいには顔を青ざめて動揺していた。言葉通りまさか、そんなという表情。ディートリヒ王子から視線を外さず凝視していた。

「貴様との関係は今日ここで終わりだ。私は、今日から彼女と人生を共にする」
「オリヴィア様、申し訳ありません」

 狼狽えるオリヴィアを見て、計画通りに彼女を痛めつける事に成功したと勝ち誇る王子。そして、側に寄り添う若い女性は謝る言葉を口にするけれど、その表情からはオリヴィアに対しての優越感がにじみ出ていた。

 私は、貴女よりも魅力的なんだと。口の端を吊り上げ、オリヴィアを内心では嘲笑していた。

 王子と新しい婚約者を名乗る女性から、醜悪な表情を向けられるオリヴィア。けれど彼女は、彼らの態度には一切傷ついてはいなかった。むしろ、驚きながらも同情の感情を彼らに向けている。

「だ、だれか。お医者様を呼んできて」

 オリヴィアは、婚約破棄を告げられた事を嘆くことはなかった。今すぐ、この場に医者を呼んでくるようにと周りにいる誰かにお願いした。

「なに? オリヴィア、貴様何を言っているんだ。ソレよりも、まず貴様の今までに行ってきた罪を清算するのだ!」

 何故、今この場所に医者を呼んだのかと不審に思う王子。オリヴィアの行動は理解不能だった。彼女の行動を気にしないようにして、さっさと話を先に進めようと王子は語りだした。

「お前は今までに、ここに居るアリス嬢に嫉妬をしてイジメを行ってきた。その罪を今ここで謝罪しろ」
「いいえ、ディートリヒ様。そんな事実はありません」
「ハハッ! 言い逃れは無用だ」
「そうよ! 私のことをイジメたのよ。忘れたとは言わせないわ!」
「あぁ! なんてこと。こんなにも症状が進行しているだなんて……」

 王子から告げられた話を、完全に否定するオリヴィア。しかし、彼女の表情からは申し訳無さの感情があると読み取った王子は。彼女が嘘を付いていると決めつけた。自らに対する責任を避けようと、知らんふりしていると信じて疑わなかった。

 王子に便乗して、彼のそばに寄り添っていた女性も口を開く。目を見開き、つばを飛ばしながらオリヴィアを責める。

 そんな2人の様子を見て、重症だと絶望するオリヴィア。明らかに、普通の状態ではない。早く診てもらわないといけない。早く医者が来てくれないかと祈り、到着を待った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

まったく心当たりのない理由で婚約破棄されるのはいいのですが、私は『精霊のいとし子』ですよ……?

空月
恋愛
精霊信仰の盛んなクレセント王国。 その王立学園の一大イベント・舞踏会の場で、アリシアは突然婚約破棄を言い渡された。 まったく心当たりのない理由をつらつらと言い連ねられる中、アリシアはとある理由で激しく動揺するが、そこに現れたのは──。

【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

【完結】小悪魔笑顔の令嬢は断罪した令息たちの奇妙な行動のわけを知りたい

宇水涼麻
恋愛
ポーリィナは卒業パーティーで断罪され王子との婚約を破棄された。 その翌日、王子と一緒になってポーリィナを断罪していた高位貴族の子息たちがポーリィナに面会を求める手紙が早馬にて届けられた。 あのようなことをして面会を求めてくるとは?? 断罪をした者たちと会いたくないけど、面会に来る理由が気になる。だって普通じゃありえない。 ポーリィナは興味に勝てず、彼らと会うことにしてみた。 一万文字程度の短め予定。編集改編手直しのため、連載にしました。 リクエストをいただき、男性視点も入れたので思いの外長くなりました。 毎日更新いたします。

身分が上だからと油断しているようですけど……

四季
恋愛
私の婚約者は、私を舐めきっていました。 とにかく、女遊びし過ぎです。

ワガママ放題の妹、婚約者の座を奪い取るも……

四季
恋愛
自分を可愛いと思い込んでいる三つ年下の妹が、婚約者アスベルを奪いにきた……。

婚約破棄する王太子になる前にどうにかしろよ

みやび
恋愛
ヤバいことをするのはそれなりの理由があるよねっていう話。 婚約破棄ってしちゃダメって習わなかったんですか? https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/123874683 ドアマットヒロインって貴族令嬢としては無能だよね https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/988874791 と何となく世界観が一緒です。

見た目普通の侯爵令嬢のよくある婚約破棄のお話ですわ。

しゃち子
恋愛
侯爵令嬢コールディ・ノースティンはなんでも欲しがる妹にうんざりしていた。ドレスやリボンはわかるけど、今度は婚約者を欲しいって、何それ! 平凡な侯爵令嬢の努力はみのるのか?見た目普通な令嬢の婚約破棄から始まる物語。

真実の愛に婚約破棄を叫ぶ王太子より更に凄い事を言い出した真実の愛の相手

ラララキヲ
ファンタジー
 卒業式が終わると突然王太子が婚約破棄を叫んだ。  反論する婚約者の侯爵令嬢。  そんな侯爵令嬢から王太子を守ろうと、自分が悪いと言い出す王太子の真実の愛のお相手の男爵令嬢は、さらにとんでもない事を口にする。 そこへ……… ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。 ◇なろうにも上げてます。

処理中です...