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第31話 関わらないのが吉 ※アンドリック視点
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結婚式から、立食パーティーの挨拶回りで意外と体力が削られた。疲れてしまったので、少しだけ休ませてもらうことに。
運動していて良かった。それで、体力が鍛えられていた。運動していなかったら、こんなに長くは持たなかったと思う。もっと早く疲れてしまい、何度も休憩が必要だったはず。
このまま最後まで頑張れそうだけど、無理はしない。ただ、オリヴィアを1人で残しておくのは心配なので、すぐに戻るつもりだ。
「ん?」
会場から離れて歩いていると、女性が立っているのを見つけた。彼女は壁にもたれかかって、誰かを待っているように見える。1人のようだ。
なんとなく、嫌な雰囲気を感じた。関わらないほうが良さそう。だから、そのまま通り過ぎようと歩く速度を上げた。
「もし」
女性のほうが俺に気づいてしまったようで、こっちを向いた。そして、その女性は俺に声をかけてきたのだ。
主催者として、無視するわけにはいかないか。仕方なく立ち止まって、返事をすることにした。本当は嫌だけど。
「どうされましたか?」
よく見たら、彼女は王妃ではないか。彼女の正体を知って驚いた。マルク王の妻がなぜ1人で? どうして、こんなところに?
疑問に思ったが、顔に出すようなことはしない。作り笑顔で対応する。
彼女は安心したように微笑む。その表情は、とても怪しい。何かを企んでいるのが丸わかりだ。彼女が近づいてきたので、警戒を続ける。気を抜かない。
「実は、道に迷ってしまいまして……」
そう言いながら、周囲をキョロキョロと見渡している。
「そうですか。では、案内できる者を呼びましょう。誰か、来てくれ!」
「あ、ちょ」
使用人を呼んで、迷子になったという彼女を送り届けるようにお願いする。彼女が何か言いたい様子だったが、聞くつもりはない。
「どうされましたか?」
「このご婦人が道に迷ったそうだから、会場まで案内してくれ」
「かしこまりした」
すぐに使用人たちが来てくれたので、彼女を任せる。それで終わりのはずだった。だが、そうはいかなかった。
「貴方に案内してもらえないのかしら?」
彼女が僕の顔を見て言う。なんと、道案内しろと頼んできたのだ。僕との関わりを持つことが目的なのだろう。もちろん、断りたいのだが。どうやって断るか。
彼女が続けて言う。
「私が誰だか知っているでしょう?」
「えぇ。マルク王の妻である、アイリーン様ですね」
「あら! 私の名前を知ってくれているのですね」
聞かれたらので答えたら、彼女は嬉しそうに微笑んだ。喜ばせるつもりはなかったのだが。
「それなら、王国の貴族として断ったらどうなるのか、分かっていますね?」
ニヤリと笑って脅された。面倒だな。下手なことを言って断れば、今後の王家との付き合いに影響が出るかもしれない。彼女がマルク王に適当なことを言って、罰するように仕向けるかもしれない。だが、こうなってしまったのなら仕方ない。
そんな脅しで人を操ろうとするなら、従う必要などない。強気に抗議するべき。
彼女が腕に抱きつこうとしてきたので、もちろん避ける。こんな厄介な女に触れたくない。
「あらっ」
「申し訳ないのですが、俺には妻が居ます。なので、他の女性と親しくするつもりはありません。それに、貴女にもマルク王がいらっしゃるではありませんか」
そう言っても、引き下がらないだろう。でも、諦めてくれることを願うしかない。ここは穏便に終わらせてくれ。
運動していて良かった。それで、体力が鍛えられていた。運動していなかったら、こんなに長くは持たなかったと思う。もっと早く疲れてしまい、何度も休憩が必要だったはず。
このまま最後まで頑張れそうだけど、無理はしない。ただ、オリヴィアを1人で残しておくのは心配なので、すぐに戻るつもりだ。
「ん?」
会場から離れて歩いていると、女性が立っているのを見つけた。彼女は壁にもたれかかって、誰かを待っているように見える。1人のようだ。
なんとなく、嫌な雰囲気を感じた。関わらないほうが良さそう。だから、そのまま通り過ぎようと歩く速度を上げた。
「もし」
女性のほうが俺に気づいてしまったようで、こっちを向いた。そして、その女性は俺に声をかけてきたのだ。
主催者として、無視するわけにはいかないか。仕方なく立ち止まって、返事をすることにした。本当は嫌だけど。
「どうされましたか?」
よく見たら、彼女は王妃ではないか。彼女の正体を知って驚いた。マルク王の妻がなぜ1人で? どうして、こんなところに?
疑問に思ったが、顔に出すようなことはしない。作り笑顔で対応する。
彼女は安心したように微笑む。その表情は、とても怪しい。何かを企んでいるのが丸わかりだ。彼女が近づいてきたので、警戒を続ける。気を抜かない。
「実は、道に迷ってしまいまして……」
そう言いながら、周囲をキョロキョロと見渡している。
「そうですか。では、案内できる者を呼びましょう。誰か、来てくれ!」
「あ、ちょ」
使用人を呼んで、迷子になったという彼女を送り届けるようにお願いする。彼女が何か言いたい様子だったが、聞くつもりはない。
「どうされましたか?」
「このご婦人が道に迷ったそうだから、会場まで案内してくれ」
「かしこまりした」
すぐに使用人たちが来てくれたので、彼女を任せる。それで終わりのはずだった。だが、そうはいかなかった。
「貴方に案内してもらえないのかしら?」
彼女が僕の顔を見て言う。なんと、道案内しろと頼んできたのだ。僕との関わりを持つことが目的なのだろう。もちろん、断りたいのだが。どうやって断るか。
彼女が続けて言う。
「私が誰だか知っているでしょう?」
「えぇ。マルク王の妻である、アイリーン様ですね」
「あら! 私の名前を知ってくれているのですね」
聞かれたらので答えたら、彼女は嬉しそうに微笑んだ。喜ばせるつもりはなかったのだが。
「それなら、王国の貴族として断ったらどうなるのか、分かっていますね?」
ニヤリと笑って脅された。面倒だな。下手なことを言って断れば、今後の王家との付き合いに影響が出るかもしれない。彼女がマルク王に適当なことを言って、罰するように仕向けるかもしれない。だが、こうなってしまったのなら仕方ない。
そんな脅しで人を操ろうとするなら、従う必要などない。強気に抗議するべき。
彼女が腕に抱きつこうとしてきたので、もちろん避ける。こんな厄介な女に触れたくない。
「あらっ」
「申し訳ないのですが、俺には妻が居ます。なので、他の女性と親しくするつもりはありません。それに、貴女にもマルク王がいらっしゃるではありませんか」
そう言っても、引き下がらないだろう。でも、諦めてくれることを願うしかない。ここは穏便に終わらせてくれ。
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