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第28話 立食パーティー

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 結婚式が無事に終わった後、参加者たちが会場内を自由に移動しながら他の参加者と食事や歓談を楽しむパーティーを開催する。アンドリック様と話し合って用意することにした、私たちらしい催し物。

 公爵家の屋敷にある大きな広間が会場で、立食形式で料理を楽しむスタイル。そこで提供する料理は、公爵家自慢の料理人たちがベストを尽くして作った品々。

 パーティーに参加してくれた方々に、美味しい料理を食べてもらおうと用意した。

「本日は、お集まりいただきありがとうございます」

 夫が集まった人たちの前で挨拶する。私は横で静かに微笑みながら、並んで立つ。公爵夫人としての私のお仕事。

 全体への挨拶が終わってから、今度は順番に挨拶していく。参加してくれたことを感謝して、今後も末永くよろしくお願いいたしますと言う趣旨を伝える。

 大勢の方から、結婚おめでというというお祝いの言葉を貰えた。



 挨拶回りの最中、会場のあちこちから美味しいと絶賛する声が続々と聞こえてきた。その声を耳にするたび、嬉しさが込み上げてくる。明るい表情で、美味しそうに料理を食べている様子を見るたびに嬉しくなる。今日のために頑張って準備した甲斐があったというもの。

 健康志向の料理を研究した成果が、こういう場でも役に立つとは予想外。だけど、嬉しい誤算だった。

「君の働きのおかげで、参加者たちに喜んでもらえている。僕の評価も上がるよ」

 感謝の言葉を述べるアンドリック様。その言葉だけで報われた気がした。彼の役に立てたのだと思えた。

「アンドリック様のために用意したものが、こういう場所でも役に立って本当に嬉しいです。それに、料理人たちも頑張ってくれました。後で、彼らも労ってあげてください」
「もちろん、そうするよ。ありがとう、オリヴィア」

 そう言って微笑む彼は、本当に素敵だった。そんな笑顔を見て、幸せを感じることが出来た。これから先も、彼の笑顔を見たいから頑張れそう。

 このまま何事もなく、今日のパーティーが終わったら嬉しかった。ただ、このまま終わりそうにない厄介な場面がやってきた。



「すまない、オリヴィア。少し、席を外させてもらうよ。すぐ戻ってくる」
「はい」

 長時間の拘束で休む暇もなかったアンドリック様。一度休憩するべきでしょうね。私は、何度か途中で休ませてもらっていたので大丈夫。

 彼が離れた後、しばらく一人で行動することに。そのタイミングだった。

「オリヴィア」

 私の名を呼ぶ男性の声。アンドリック様が戻ってきたと思ったが違った。参加者の貴族かと思ったけれど、それも違う。声の正体は、マルク王だった。

「本日は、お越しいただき誠に感謝いたしますわ陛下」
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