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第5話 運動しましょう
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それから、さらに数日後。敷地内であれば出てもいい、という許可を貰えた。私は早速、外に出て体を動かすことにした。屋敷から出ない生活が続いていたので、体がうずうずしていた。
「ふっ、ふっ、はっ、はっ、ふっ、ふっ……、はぁッ」
庭を走る。呼吸のリズムを一定にするように意識しながら、手足を動かす。姿勢を崩さずに足を前に出して地面を蹴る。腕を大きく振って、体のバランスをしっかりと保ちながら。
どれぐらい走っただろうか。もう限界に近くなってきたので、スピードを落とす。そのままゆっくりと、メイドが立っているゴール地点まで歩いて向かう。
「ハァッ、ハァッ、……ふうっ」
「お疲れさまです、お嬢様。これで流れた汗を拭いて下さい」
「ん。ありがとう」
立ち止まって呼吸を整える。メイドが身体を拭く布を手渡してくれたので、それを受け取る。額から流れていた汗を拭って、落ち着いた。久々の運動は気持ちいい。
「うん。ちょっと食べすぎて体が重たくなったけれど、意外と走れるみたい。また、体重は落とせそうかしら」
実は屋敷から出ない生活を続けている間に、心配になるくらい体重が増えていた。だって、うちのシェフが作ってくれる料理が美味しすぎるから。ついつい食べ過ぎてしまうのよね。食事制限もなくなり、抑えがきかなくなってしまった。
王妃に求められる体型を維持するまではいかなくても、ちょっとぐらい痩せた方がいいかもしれない。あまり太っていると、健康にも悪そうだし。
「いいえ。お嬢様は、今のお姿のほうが魅力的ですよ」
「そう?」
「絶対、そうです」
「ありがとう。そう言ってもらえると、嬉しいわ」
前よりも今の方が魅力的だと言ってくれる彼女は、優しいと思う。彼女以外にも、周囲の人たちは今ぐらいの方が似合っていると言ってくれる。その言葉で、気が楽になる。
「あの食事量だけで無理やり痩せるように命じられて、ガリガリになった姿が王妃にふさわしいなんて間違っているんですよ……」
「ん?」
「いえっ! なんでもありません」
私に仕えてくれているメイドが、小声で何かつぶやいていた。何を言っていたのか聞こうとすると、彼女は慌てて誤魔化した。なんでしょう。あまり、追求しない方がよさそうね。
「それより、まだ運動を続けるのですか? 大変じゃないですか? オリヴィア様には、もう必要ないんじゃ……」
「うん、そうね。前のような激しい運動はしないつもりよ。でも、これからも運動は続けようと思うの。定期的に体を動かさないと、むしろ落ち着かなくなっちゃって」
今はもう王妃になるという道は絶たれたので、体型を維持するための激しい運動をする必要はなくなった。けれど、日課になっていた運動をしないと身体がうずいて、とても気持ち悪かった。
体を動かして解消しないと、落ち着かないようになってしまったみたい。
命令されてやらされるような運動は辛かった。苦しいと思っていた。だけど今は、誰かに強制されたりしない。自分の意志で、やろうと思える。
そのおかげか、とても楽しい。もっと体を動かしたいと思えるようになった。走ることで、気持ちよさを感じられるようになっていた。
今日のトレーニングは、これで終わり。でも明日になったらまた、体を動かしたくなるはず。それでいいと思えた。自分がやりたいようにする。これも自由よ。
「そうなんですか。それじゃあ、朝食に行きましょう。きっと、運動をした後だから美味しいですよオリヴィア様」
「朝食! 行きましょう」
お腹がくーと鳴っていた。腹ペコだった。早く着替えて、朝食に行こう。メイドを連れて、私は早足で屋敷に戻る。今日は、どんな美味しい料理が用意されているのでしょう。とても楽しみね。
「ふっ、ふっ、はっ、はっ、ふっ、ふっ……、はぁッ」
庭を走る。呼吸のリズムを一定にするように意識しながら、手足を動かす。姿勢を崩さずに足を前に出して地面を蹴る。腕を大きく振って、体のバランスをしっかりと保ちながら。
どれぐらい走っただろうか。もう限界に近くなってきたので、スピードを落とす。そのままゆっくりと、メイドが立っているゴール地点まで歩いて向かう。
「ハァッ、ハァッ、……ふうっ」
「お疲れさまです、お嬢様。これで流れた汗を拭いて下さい」
「ん。ありがとう」
立ち止まって呼吸を整える。メイドが身体を拭く布を手渡してくれたので、それを受け取る。額から流れていた汗を拭って、落ち着いた。久々の運動は気持ちいい。
「うん。ちょっと食べすぎて体が重たくなったけれど、意外と走れるみたい。また、体重は落とせそうかしら」
実は屋敷から出ない生活を続けている間に、心配になるくらい体重が増えていた。だって、うちのシェフが作ってくれる料理が美味しすぎるから。ついつい食べ過ぎてしまうのよね。食事制限もなくなり、抑えがきかなくなってしまった。
王妃に求められる体型を維持するまではいかなくても、ちょっとぐらい痩せた方がいいかもしれない。あまり太っていると、健康にも悪そうだし。
「いいえ。お嬢様は、今のお姿のほうが魅力的ですよ」
「そう?」
「絶対、そうです」
「ありがとう。そう言ってもらえると、嬉しいわ」
前よりも今の方が魅力的だと言ってくれる彼女は、優しいと思う。彼女以外にも、周囲の人たちは今ぐらいの方が似合っていると言ってくれる。その言葉で、気が楽になる。
「あの食事量だけで無理やり痩せるように命じられて、ガリガリになった姿が王妃にふさわしいなんて間違っているんですよ……」
「ん?」
「いえっ! なんでもありません」
私に仕えてくれているメイドが、小声で何かつぶやいていた。何を言っていたのか聞こうとすると、彼女は慌てて誤魔化した。なんでしょう。あまり、追求しない方がよさそうね。
「それより、まだ運動を続けるのですか? 大変じゃないですか? オリヴィア様には、もう必要ないんじゃ……」
「うん、そうね。前のような激しい運動はしないつもりよ。でも、これからも運動は続けようと思うの。定期的に体を動かさないと、むしろ落ち着かなくなっちゃって」
今はもう王妃になるという道は絶たれたので、体型を維持するための激しい運動をする必要はなくなった。けれど、日課になっていた運動をしないと身体がうずいて、とても気持ち悪かった。
体を動かして解消しないと、落ち着かないようになってしまったみたい。
命令されてやらされるような運動は辛かった。苦しいと思っていた。だけど今は、誰かに強制されたりしない。自分の意志で、やろうと思える。
そのおかげか、とても楽しい。もっと体を動かしたいと思えるようになった。走ることで、気持ちよさを感じられるようになっていた。
今日のトレーニングは、これで終わり。でも明日になったらまた、体を動かしたくなるはず。それでいいと思えた。自分がやりたいようにする。これも自由よ。
「そうなんですか。それじゃあ、朝食に行きましょう。きっと、運動をした後だから美味しいですよオリヴィア様」
「朝食! 行きましょう」
お腹がくーと鳴っていた。腹ペコだった。早く着替えて、朝食に行こう。メイドを連れて、私は早足で屋敷に戻る。今日は、どんな美味しい料理が用意されているのでしょう。とても楽しみね。
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