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王位剥奪 ※アルフレッド王子視点
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自分の耳を疑った。今、聞き間違えるはずのない言葉が飛び込んできたから。
「今、なんと言ったんですか?」
「お前の王位継承権を剥奪する、と言ったんだ」
「っ!?」
聞き間違いじゃなかった。父の口から、冷酷な宣告が下される。とても重々しくて耳にしたくないような言葉。
「なぜですか!?」
思わず声を上げてしまう。俺の王位継承権を剥奪だなんて。そんなことが許されるはずがない!
何の前触れもなく、唐突に言い渡されるなんて。まったく理不尽だ。
頭の中が真っ白になる。反論の言葉が溢れ出てくるが、どれを口にすればいいのかわからない。ただ、このまま認めるわけにはいかない。絶対に認めてはいけないのだ。
そう考える俺に、父が説明を始めた。
「ブレットとアデーレ嬢の二人には、特別な任務を与えていた。ダンジョン探索して情報収集するという、とても大事な任務を。それをお前が邪魔をしたり、貴族たちの前で暴露までしてしまったからだ。その行動は、王国を危機にさらす可能性があったんだぞ!」
「どういうことですか? 特別な任務って、一体何のことですか!?」
任務のことなんて、俺は一切聞いていない。聞いたこともない。そんなこと知る由もなかった。ただアデーレがもの好きで、好奇心からダンジョンに潜っているだけだと思っていた。それが、国から与えられた任務だったなんて?
そんなの嘘だ。きっと、俺を追い詰めるための作り話。だって、今までそんな話は聞いたこともないから。
もしかして、ブレットかアデーレが先に根回しをしていたのか? こうなる事態を予想して、工作していたというのか?
そこまで考える俺に、父が言う。
「知らなくて当然だ。お前は拒否したからな」
「拒否? 拒否なんてしていません。あの女は、婚約相手である俺に何も教えてくれませんでしたよ」
隠れてコソコソと、ダンジョンに潜って遊ぶ日々。だからこそ、婚約を破棄するべきだったのだ。やはり、俺の判断は間違っていなかったはず。なのに、どうして。
「お前は間違いなく拒否した。彼女から誘われていたはずだ。一緒にダンジョン探索に挑戦しようと」
「……それは」
確かに、ぼんやりと覚えている。アデーレからダンジョン探索に誘われたことを。だけど、その時は何を馬鹿なことを言っているのかと思ったのだ。ダンジョンなんて儀式で訪れるだけの場所。あんな危険な場所に何度も行くなんて、愚かだと。いつか絶対に失敗して死んでしまう。次期王として俺は、死ぬわけにはいかない。
「だ、だけど! それだけで、王位継承権を剥奪するなんて! あのとき会場で話を聞いていた貴族たちは、ダンジョンのことなんて何も気にしていないでしょう!」
だから、問題はないはず。そう思ったのだが。
「それだけじゃない。他にも理由はあるのだ」
「っ!?」
父の鋭い視線に背筋が凍る。他に、何があるというのか。
「お前の勝手な判断で、エレドナッハ公爵家との関係を悪化させた」
「だから、それは……!」
問題があったのはアデーレの方だ。浮気を疑わせるようなことをした女のせいで、俺は何も悪くない。
必死に訴えるが、父は聞く耳を持たない。
「それに何より、お前のような愚か者に国は任せられん」
「そんな……。俺は次期国王のはずだ。王位継承権を剥奪だなんて……」
父の目は、これまでにないほど鋭く俺を見据えている。本気なのだ。まさかこんな事態に陥るとは。
「信じられない……。こんな、理不尽な……」
「理不尽なのは、お前だ。ここまできて、まだ自分の非を認められぬとは」
「俺は、国のために正しい判断をしただけだ! それを理不尽と言うなら」
「黙れ! もう聞く耳は持たん」
低い声で言い放つと、父は俺に背を向けた。
「話は終わりだ」
「……わかりました。陛下」
これ以上、何を言っても無駄なんだろう。最後の一言を残して、俺は部屋を出た。怒りに震える足取りで。
信じられない。俺の王位継承権を剥奪だと? あんな程度のことで。ふざけるな。俺は、この国の次期国王なのだ。それを簡単に奪うことなどできるはずがない。
認めない。必ず、俺が王座を手に入れてみせよう。そして、俺を認めなかった父を後悔させてやる。
俺は絶対に国王になる。そのためなら、手段は選ばない。
覚悟を決めた俺は、力強く歩き出した。
「今、なんと言ったんですか?」
「お前の王位継承権を剥奪する、と言ったんだ」
「っ!?」
聞き間違いじゃなかった。父の口から、冷酷な宣告が下される。とても重々しくて耳にしたくないような言葉。
「なぜですか!?」
思わず声を上げてしまう。俺の王位継承権を剥奪だなんて。そんなことが許されるはずがない!
何の前触れもなく、唐突に言い渡されるなんて。まったく理不尽だ。
頭の中が真っ白になる。反論の言葉が溢れ出てくるが、どれを口にすればいいのかわからない。ただ、このまま認めるわけにはいかない。絶対に認めてはいけないのだ。
そう考える俺に、父が説明を始めた。
「ブレットとアデーレ嬢の二人には、特別な任務を与えていた。ダンジョン探索して情報収集するという、とても大事な任務を。それをお前が邪魔をしたり、貴族たちの前で暴露までしてしまったからだ。その行動は、王国を危機にさらす可能性があったんだぞ!」
「どういうことですか? 特別な任務って、一体何のことですか!?」
任務のことなんて、俺は一切聞いていない。聞いたこともない。そんなこと知る由もなかった。ただアデーレがもの好きで、好奇心からダンジョンに潜っているだけだと思っていた。それが、国から与えられた任務だったなんて?
そんなの嘘だ。きっと、俺を追い詰めるための作り話。だって、今までそんな話は聞いたこともないから。
もしかして、ブレットかアデーレが先に根回しをしていたのか? こうなる事態を予想して、工作していたというのか?
そこまで考える俺に、父が言う。
「知らなくて当然だ。お前は拒否したからな」
「拒否? 拒否なんてしていません。あの女は、婚約相手である俺に何も教えてくれませんでしたよ」
隠れてコソコソと、ダンジョンに潜って遊ぶ日々。だからこそ、婚約を破棄するべきだったのだ。やはり、俺の判断は間違っていなかったはず。なのに、どうして。
「お前は間違いなく拒否した。彼女から誘われていたはずだ。一緒にダンジョン探索に挑戦しようと」
「……それは」
確かに、ぼんやりと覚えている。アデーレからダンジョン探索に誘われたことを。だけど、その時は何を馬鹿なことを言っているのかと思ったのだ。ダンジョンなんて儀式で訪れるだけの場所。あんな危険な場所に何度も行くなんて、愚かだと。いつか絶対に失敗して死んでしまう。次期王として俺は、死ぬわけにはいかない。
「だ、だけど! それだけで、王位継承権を剥奪するなんて! あのとき会場で話を聞いていた貴族たちは、ダンジョンのことなんて何も気にしていないでしょう!」
だから、問題はないはず。そう思ったのだが。
「それだけじゃない。他にも理由はあるのだ」
「っ!?」
父の鋭い視線に背筋が凍る。他に、何があるというのか。
「お前の勝手な判断で、エレドナッハ公爵家との関係を悪化させた」
「だから、それは……!」
問題があったのはアデーレの方だ。浮気を疑わせるようなことをした女のせいで、俺は何も悪くない。
必死に訴えるが、父は聞く耳を持たない。
「それに何より、お前のような愚か者に国は任せられん」
「そんな……。俺は次期国王のはずだ。王位継承権を剥奪だなんて……」
父の目は、これまでにないほど鋭く俺を見据えている。本気なのだ。まさかこんな事態に陥るとは。
「信じられない……。こんな、理不尽な……」
「理不尽なのは、お前だ。ここまできて、まだ自分の非を認められぬとは」
「俺は、国のために正しい判断をしただけだ! それを理不尽と言うなら」
「黙れ! もう聞く耳は持たん」
低い声で言い放つと、父は俺に背を向けた。
「話は終わりだ」
「……わかりました。陛下」
これ以上、何を言っても無駄なんだろう。最後の一言を残して、俺は部屋を出た。怒りに震える足取りで。
信じられない。俺の王位継承権を剥奪だと? あんな程度のことで。ふざけるな。俺は、この国の次期国王なのだ。それを簡単に奪うことなどできるはずがない。
認めない。必ず、俺が王座を手に入れてみせよう。そして、俺を認めなかった父を後悔させてやる。
俺は絶対に国王になる。そのためなら、手段は選ばない。
覚悟を決めた俺は、力強く歩き出した。
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