【試作】ダンジョン攻略令嬢~ファンタジー冒険物語だと思ったら、婚約破棄な物語の世界だった~

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
14 / 31

ダンジョンへ ※第二王子視点

しおりを挟む
「ブレット様は、ダンジョンに興味ある?」

 お姉さんから期待するような目で見られながら、そんなことを言われた僕は――。

「……あります」

 そう答えていた。お姉さんがダンジョンに興味津々という話を聞いたことがある。だけど僕は、そんなに興味があるというわけでもない。むしろ本心では、儀式の時の恐怖が蘇ってくるので二度と近寄りたくないと思っている。

 でも、僕は興味があると答えていた。お姉さんの気を引きたくて、嘘を答えてしまった。少し後悔したけれど、お姉さんの嬉しそうな表情を見てしまえば仕方がないことだったと思う。

「ほんとに!? じゃあ、私と一緒に行ってみる?」
「はい。行ってみたいです」

 一緒に、という言葉が僕を惹きつける。お誘いを断ることは出来ない。お姉さんが、こんなに嬉しそうなんだ。

 そういう話し合いがあって、僕はダンジョンに行く準備をすることに。父にも許可を得て、必要な道具も用意してもらった。ダンジョンに行くのは二度目だ。儀式の時以来のことになる。



 約束の日になり、僕はお姉さんと一緒にダンジョンへ。

「今日は、危険な場所には行かないようにするね。安全圏で、モンスターと戦い慣れるための練習をするよ!」

 お姉さんは、本当に慣れている様子で進んでいく。護衛の兵士にも指示を出して、安全を確保してくれているようだ。僕は、そんな彼女の後ろについていく。情けないけれど、怖いんだ。

「大丈夫。ここなら、何があっても助けることが出来るから。安心して」
「はい。ありがとうございます」

 僕を気にして、優しい言葉をかけてくれるお姉さん。その声音には温かさを感じた。心強さも感じられた。だからなのか、怖さが和らいだような気がする。

「そろそろ休憩しようか! 疲れたでしょう? 体力回復薬もあるから飲んでみて」
「はい……」

 お姉さんに促され、僕は腰を下ろせる場所へと移動する。そして、そこで渡された回復薬を飲むことにした。ちょっと苦いな……。

「どうかな?」
「えっと……美味しくはないですね」
「ふふっ。それが、ダンジョンの味よ」
「なるほど」

 よく分からないけれど、そういうことらしい。まぁいいやと思いつつ、飲み干す。すると体が楽になったように感じる。

「さっきよりも元気が出てきました」
「それは、良かったわ。それじゃあ、もうひと頑張りしましょうか」

 それからしばらく歩き続けて、モンスターとの戦闘を何度か繰り返して、ようやく目的地である階層までたどり着いた。今日は、ここまで行くのが目標だった。無事に目標達成である。

「予定通り。それじゃあ今日は、帰りましょうか」
「この先には行かないんですか? まだ余裕があるんでしたら、行ってみたいなって思いますけど」

 お姉さんと一緒に居ることで、僕のダンジョンに対する恐怖は消え去っていた。だからだろうか、先に進みたいという気持ちが強くなっている。

「んー……。正直に言うと、もっと先に進んでみたくてウズウズしている自分がいるの。でも、危ないところには行きたくないっていう気持ちもあって。迷っちゃうわ」

 お姉さんは頭を悩ませていた。どうすれば良いのか考えているようだった。それなら、お姉さんのやりたいようにやってほしい。

「あの、僕のことは気にせず。お姉さんのやりたいようにやって下さい」
「わかったわ。それじゃあ今日は、帰りましょう」
「いいんですか?」
「もちろん! 私のやりたいことは、何事もなく無事にみんなで帰ること。無理する必要はないもの。ということで、帰りましょう」
「わかりました」

 僕が居なければ、もう少し先へ進めるだろう。でもお姉さんは、僕のことを考えて我慢してくれたんだと思う。申し訳なくなると同時に、嬉しかった。

 こうして、僕の二度目のダンジョン探索は無事に終わった。この経験により、僕のダンジョンに対する恐怖症も無くなった。

 またお姉さんと一緒に、ダンジョンへ行ってみたい。
しおりを挟む
◆◆◆ 更新中の作品 ◆◆◆

【完結】婚約者を妹に取られましたが、社交パーティーの評価で見返してやるつもりです
https://www.alphapolis.co.jp/novel/88950443/595922033

【完結】欲しいというなら、あげましょう。婚約破棄したら返品は受け付けません。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/88950443/82917838
感想 7

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された悪役令嬢ですが、闇魔法を手に聖女に復讐します

ごぶーまる
ファンタジー
突然身に覚えのない罪で、皇太子との婚約を破棄されてしまったアリシア。皇太子は、アリシアに嫌がらせをされたという、聖女マリアとの婚約を代わりに発表。 マリアが裏で手を引いたに違いないと判断したアリシアは、持ち前の闇魔法を使い、マリアへの報復を決意するが……? 読み切り短編です

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

【完結】五度の人生を不幸な出来事で幕を閉じた転生少女は、六度目の転生で幸せを掴みたい!

アノマロカリス
ファンタジー
「ノワール・エルティナス! 貴様とは婚約破棄だ!」 ノワール・エルティナス伯爵令嬢は、アクード・ベリヤル第三王子に婚約破棄を言い渡される。 理由を聞いたら、真実の相手は私では無く妹のメルティだという。 すると、アクードの背後からメルティが現れて、アクードに肩を抱かれてメルティが不敵な笑みを浮かべた。 「お姉様ったら可哀想! まぁ、お姉様より私の方が王子に相応しいという事よ!」 ノワールは、アクードの婚約者に相応しくする為に、様々な事を犠牲にして尽くしたというのに、こんな形で裏切られるとは思っていなくて、ショックで立ち崩れていた。 その時、頭の中にビジョンが浮かんできた。 最初の人生では、日本という国で淵東 黒樹(えんどう くろき)という女子高生で、ゲームやアニメ、ファンタジー小説好きなオタクだったが、学校の帰り道にトラックに刎ねられて死んだ人生。 2度目の人生は、異世界に転生して日本の知識を駆使して…魔女となって魔法や薬学を発展させたが、最後は魔女狩りによって命を落とした。 3度目の人生は、王国に使える女騎士だった。 幾度も国を救い、活躍をして行ったが…最後は王族によって魔物侵攻の盾に使われて死亡した。 4度目の人生は、聖女として国を守る為に活動したが… 魔王の供物として生贄にされて命を落とした。 5度目の人生は、城で王族に使えるメイドだった。 炊事・洗濯などを完璧にこなして様々な能力を駆使して、更には貴族の妻に抜擢されそうになったのだが…同期のメイドの嫉妬により捏造の罪をなすりつけられて処刑された。 そして6度目の現在、全ての前世での記憶が甦り… 「そうですか、では婚約破棄を快く受け入れます!」 そう言って、ノワールは城から出て行った。 5度による浮いた話もなく死んでしまった人生… 6度目には絶対に幸せになってみせる! そう誓って、家に帰ったのだが…? 一応恋愛として話を完結する予定ですが… 作品の内容が、思いっ切りファンタジー路線に行ってしまったので、ジャンルを恋愛からファンタジーに変更します。 今回はHOTランキングは最高9位でした。 皆様、有り難う御座います!

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました

八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」 子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。 失意のどん底に突き落とされたソフィ。 しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに! 一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。 エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。 なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。 焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

裏切者には神罰を

夜桜
恋愛
 幸せな生活は途端に終わりを告げた。  辺境伯令嬢フィリス・クラインは毒殺、暗殺、撲殺、絞殺、刺殺――あらゆる方法で婚約者の伯爵ハンスから命を狙われた。  けれど、フィリスは全てをある能力で神回避していた。  あまりの殺意に復讐を決め、ハンスを逆に地獄へ送る。

【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

キーノ
ファンタジー
 私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。  ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?  自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?  私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ! ※紹介文と本編は微妙に違います。 完結いたしました。 感想うけつけています。 4月4日、誤字修正しました。

処理中です...