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俺の婚約相手 ※王子視点
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婚約相手と初めて出会う日が来た。公爵家の令嬢で優秀らしいが、どういう子なのだろうか。面倒な子じゃないといいのだが。
緊張しながら待っていると、彼女は父親と一緒にやって来た。俺の父親と、彼女の父親が話している。
それからしばらく会話した後、父が女の子に向けて話し始めた。
「君が、クラウスの子だね」
「はい、陛下。お初にお目にかかります。アデーレと申します」
「うむ、よく来てくれた。まだ若いのに、礼儀作法もしっかりしている」
「お褒めいただき光栄です」
俺の目から見ても、彼女は立派だった。堂々としているし、受け答えも落ち着いている。しかも可愛い。いいじゃないか。あれが、俺の婚約相手になるのか。王子である俺に相応しい令嬢のようで安心する。
「そこに座っているのが、君の婚約相手となるアルフレッドだ」
「初めまして、アルフレッド様。アデーレです。お会いできて嬉しいですわ」
「あ、うん。よろしく」
いきなり紹介されたので、緊張してしまった。言葉がうまく出ない。そのせいで、父から睨まれてしまう。しまった。もっと落ち着いて、余裕のある態度で接しなければいけなかったか。反省する。
「私も緊張していますが、アルフレッド様も緊張していらっしゃるようですね」
「アデーレ嬢。頼りない子で、すまないな」
「いえいえ、そんなことありませんわ。まだ、お互いに慣れていないのでしょうね。これからゆっくりと、仲を深めていけばいいだけでございます」
父にそう言って、彼女は微笑んだ。緊張していると言いながら余裕そうだ。父も、彼女を見て安心したような表情を浮かべている。
それから、俺とアデーレの2人きりにされてしまった。もちろん、執事たちが控えているけれど、彼らを頼ることはできない。さっきも、頼りないと思われたかもしれない。ここは、自分の力で会話しないと。
何を話せばいいのだろうか。話題を考えてみるものの思い浮かばない。何か共通の趣味とかがあればよかったけれど。
悩んでいると、彼女から色々と話しかけられた。
「アルフレッド様、お聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
「……ああ、いいよ。なんだい?」
好きな食べ物や嫌いな食べ物、得意なことや苦手なこと。休日は、どのように過ごしているのかなど、様々なことを聞かれた。俺は、それに答えていく。
会話の主導権は、完全に彼女に握られてしまった。でも、それが嫌ではないと思ってしまう自分が居た。むしろ楽しいくらいだ。
アデーレが婚約相手に選ばれて、出会えたのは幸運だと思う。
ただ一つ、厄介なことがある。
「ダンジョンに興味はありませんか?」
「だ、だんじょん……?」
「はい!」
ダンジョンって、あの儀式で入った場所のことか。そんなものに、まったく興味はないのだが。彼女は違うようだ。
「ぜひ、一緒に入ってみませんか?」
「あんな場所に? 勘弁してくれ……」
「……ダメですか?」
「当然だろう。あんな危険な場所、二度と行くわけがないじゃないか。行きたいなんて言うやつは、馬鹿だろう」
正直な気持ちを言うと、彼女は困ったような表情を浮かべた。
「そんな場所に入るのは、止めておけ。君も馬鹿だと思われるぞ」
「……」
彼女のためを思って忠告したのだが、答えは返ってこなかった。どうして、あんな場所に行きたいというのか意味がわからない。そして、王子である俺を誘ってくるのも厄介だった。
これは、ちょっと問題のある女かもしれないな。見た目や性格はいいし、頭もいいかもしれない。だが、ダンジョンに興味を持っているというのは、普通じゃないな。俺が、どうにかしてあげないといけないかも。
緊張しながら待っていると、彼女は父親と一緒にやって来た。俺の父親と、彼女の父親が話している。
それからしばらく会話した後、父が女の子に向けて話し始めた。
「君が、クラウスの子だね」
「はい、陛下。お初にお目にかかります。アデーレと申します」
「うむ、よく来てくれた。まだ若いのに、礼儀作法もしっかりしている」
「お褒めいただき光栄です」
俺の目から見ても、彼女は立派だった。堂々としているし、受け答えも落ち着いている。しかも可愛い。いいじゃないか。あれが、俺の婚約相手になるのか。王子である俺に相応しい令嬢のようで安心する。
「そこに座っているのが、君の婚約相手となるアルフレッドだ」
「初めまして、アルフレッド様。アデーレです。お会いできて嬉しいですわ」
「あ、うん。よろしく」
いきなり紹介されたので、緊張してしまった。言葉がうまく出ない。そのせいで、父から睨まれてしまう。しまった。もっと落ち着いて、余裕のある態度で接しなければいけなかったか。反省する。
「私も緊張していますが、アルフレッド様も緊張していらっしゃるようですね」
「アデーレ嬢。頼りない子で、すまないな」
「いえいえ、そんなことありませんわ。まだ、お互いに慣れていないのでしょうね。これからゆっくりと、仲を深めていけばいいだけでございます」
父にそう言って、彼女は微笑んだ。緊張していると言いながら余裕そうだ。父も、彼女を見て安心したような表情を浮かべている。
それから、俺とアデーレの2人きりにされてしまった。もちろん、執事たちが控えているけれど、彼らを頼ることはできない。さっきも、頼りないと思われたかもしれない。ここは、自分の力で会話しないと。
何を話せばいいのだろうか。話題を考えてみるものの思い浮かばない。何か共通の趣味とかがあればよかったけれど。
悩んでいると、彼女から色々と話しかけられた。
「アルフレッド様、お聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
「……ああ、いいよ。なんだい?」
好きな食べ物や嫌いな食べ物、得意なことや苦手なこと。休日は、どのように過ごしているのかなど、様々なことを聞かれた。俺は、それに答えていく。
会話の主導権は、完全に彼女に握られてしまった。でも、それが嫌ではないと思ってしまう自分が居た。むしろ楽しいくらいだ。
アデーレが婚約相手に選ばれて、出会えたのは幸運だと思う。
ただ一つ、厄介なことがある。
「ダンジョンに興味はありませんか?」
「だ、だんじょん……?」
「はい!」
ダンジョンって、あの儀式で入った場所のことか。そんなものに、まったく興味はないのだが。彼女は違うようだ。
「ぜひ、一緒に入ってみませんか?」
「あんな場所に? 勘弁してくれ……」
「……ダメですか?」
「当然だろう。あんな危険な場所、二度と行くわけがないじゃないか。行きたいなんて言うやつは、馬鹿だろう」
正直な気持ちを言うと、彼女は困ったような表情を浮かべた。
「そんな場所に入るのは、止めておけ。君も馬鹿だと思われるぞ」
「……」
彼女のためを思って忠告したのだが、答えは返ってこなかった。どうして、あんな場所に行きたいというのか意味がわからない。そして、王子である俺を誘ってくるのも厄介だった。
これは、ちょっと問題のある女かもしれないな。見た目や性格はいいし、頭もいいかもしれない。だが、ダンジョンに興味を持っているというのは、普通じゃないな。俺が、どうにかしてあげないといけないかも。
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