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第15話 娘からのプレゼント ※ストランド伯爵家当主視点
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最近、変化があった。
娘のナディーンから、魔法のペンというものをプレゼントされた。それを使って、仕事を頑張ってくれと言われて。
突然のことだったので驚いた。この頃、魔法に夢中だったナディーンは人に興味が無いのだろうと思っていた。誰とも関わり合いたくないのだと。婚約相手に対しては興味を持っているようだったので、干渉せずに見守ることにした。
だけど最近、ナディーンは人との関わりを増やすようにしたらしい。屋敷の使用人たちと、会話している様子を何度も見かけた。
彼女がなぜ考え方を変えたのか、その理由は分からない。だけど、以前と比べたら良い傾向だと思う。
そして、私とも親しく接しようと努力してくれた。それが、この突然のプレゼントなのだろう。彼女の方から手を伸ばしてきたのなら、振り払う理由はない。娘からのプレゼントを素直に受け取る。
私は早速、それを使ってみた。
ペンを握ったときの感触が非常にフィットして、インクのつけ具合も非常に調節がしやすい。ペン先からインクは垂れないし、書いた文字が滲むこともない。それは、かなり使いやすいペンだった。
ナディーンが魔法で作った、自作らしい。しかし、売り物に出来るほどの完成度。
機能は、これだけじゃない。このペンを使うと、頭がスッキリして仕事が捗った。疲れも軽減して、肩や腰の痛みもおさまった。これも、魔法の効果らしい。
とんでもなく素晴らしい、魔法のペンだった。だから私は、娘に感謝を伝えた。
「ナディーンのプレゼント、とても役に立っているよ。ありがとう」
「よかった! だけど、あまりペンの力には頼りすぎないでよね。前より出来るからって、仕事の量を増やしちゃうと、回復が追いつかないから。一気に疲労が生じて、身体を壊しちゃうかもしれないからね」
「そうなのか。わかった、注意するよ」
「絶対よ!」
ナディーンに忠告されたので、注意する。仕事をしすぎないように気をつけようと思った。
最近、屋敷の様子も徐々に変化していった。
特に、食事が美味しくなった。屋敷内も、驚くほど綺麗になった。使用人たちが、仕事熱心に働くようになった。給金を増やしたわけでもないのに。
そんな変化も、ナディーンが関係しているらしい。私の娘は、凄い影響力を持っているようだ。それから、様々な技術や知識も。
彼女が料理人に口出しするほどの知識があるなんてことは、知らなかった。誰かに教えられたのか、それとも独自で身につけたのか。
魔法に関しても、前から色々と不思議に思っていた。おそらく彼女には、突出した魔法の才能があったのだろうと思う。
ナディーンが幼い頃に一度、魔法を教えるための家庭教師をつけたことがあった。元宮廷魔法使いの偉い先生にお願いした。だけど娘は、すぐに先生の知識を凌駕してしまった。
もう教えることは何もないと言って、偉い先生は早々に家庭教師を辞退した。
それからナディーンは一人で、魔法の研究にのめり込んだ。研究の成果も、続々と出していたようだ。それは、婚約者であるリカード王子を通して、陛下まで伝わっていたらしい。
私は、それを詳しくは知らなかった。ナディーンが、婚約相手以外とは関わろうとしなかったから。父親である私にも教えてくれない。
ナディーンには、何か考えがあるのだろう。だから、あまり口は出さなかった。
しっかりと見極めて、ストランド伯爵家として動く必要があるのならば介入する。それまでは、不干渉で構えておく。そう考えていた。
少し前までのナディーンは、そうだった。だけど、状況は変わった。
ナディーンが変わって、屋敷の様子も変わって、私も変わった。おそらく、状況は良い方向へ進んでいると思う。
だから私は引き続き、彼女の様子を見守ろうと思う。
娘のナディーンから、魔法のペンというものをプレゼントされた。それを使って、仕事を頑張ってくれと言われて。
突然のことだったので驚いた。この頃、魔法に夢中だったナディーンは人に興味が無いのだろうと思っていた。誰とも関わり合いたくないのだと。婚約相手に対しては興味を持っているようだったので、干渉せずに見守ることにした。
だけど最近、ナディーンは人との関わりを増やすようにしたらしい。屋敷の使用人たちと、会話している様子を何度も見かけた。
彼女がなぜ考え方を変えたのか、その理由は分からない。だけど、以前と比べたら良い傾向だと思う。
そして、私とも親しく接しようと努力してくれた。それが、この突然のプレゼントなのだろう。彼女の方から手を伸ばしてきたのなら、振り払う理由はない。娘からのプレゼントを素直に受け取る。
私は早速、それを使ってみた。
ペンを握ったときの感触が非常にフィットして、インクのつけ具合も非常に調節がしやすい。ペン先からインクは垂れないし、書いた文字が滲むこともない。それは、かなり使いやすいペンだった。
ナディーンが魔法で作った、自作らしい。しかし、売り物に出来るほどの完成度。
機能は、これだけじゃない。このペンを使うと、頭がスッキリして仕事が捗った。疲れも軽減して、肩や腰の痛みもおさまった。これも、魔法の効果らしい。
とんでもなく素晴らしい、魔法のペンだった。だから私は、娘に感謝を伝えた。
「ナディーンのプレゼント、とても役に立っているよ。ありがとう」
「よかった! だけど、あまりペンの力には頼りすぎないでよね。前より出来るからって、仕事の量を増やしちゃうと、回復が追いつかないから。一気に疲労が生じて、身体を壊しちゃうかもしれないからね」
「そうなのか。わかった、注意するよ」
「絶対よ!」
ナディーンに忠告されたので、注意する。仕事をしすぎないように気をつけようと思った。
最近、屋敷の様子も徐々に変化していった。
特に、食事が美味しくなった。屋敷内も、驚くほど綺麗になった。使用人たちが、仕事熱心に働くようになった。給金を増やしたわけでもないのに。
そんな変化も、ナディーンが関係しているらしい。私の娘は、凄い影響力を持っているようだ。それから、様々な技術や知識も。
彼女が料理人に口出しするほどの知識があるなんてことは、知らなかった。誰かに教えられたのか、それとも独自で身につけたのか。
魔法に関しても、前から色々と不思議に思っていた。おそらく彼女には、突出した魔法の才能があったのだろうと思う。
ナディーンが幼い頃に一度、魔法を教えるための家庭教師をつけたことがあった。元宮廷魔法使いの偉い先生にお願いした。だけど娘は、すぐに先生の知識を凌駕してしまった。
もう教えることは何もないと言って、偉い先生は早々に家庭教師を辞退した。
それからナディーンは一人で、魔法の研究にのめり込んだ。研究の成果も、続々と出していたようだ。それは、婚約者であるリカード王子を通して、陛下まで伝わっていたらしい。
私は、それを詳しくは知らなかった。ナディーンが、婚約相手以外とは関わろうとしなかったから。父親である私にも教えてくれない。
ナディーンには、何か考えがあるのだろう。だから、あまり口は出さなかった。
しっかりと見極めて、ストランド伯爵家として動く必要があるのならば介入する。それまでは、不干渉で構えておく。そう考えていた。
少し前までのナディーンは、そうだった。だけど、状況は変わった。
ナディーンが変わって、屋敷の様子も変わって、私も変わった。おそらく、状況は良い方向へ進んでいると思う。
だから私は引き続き、彼女の様子を見守ろうと思う。
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