3 / 49
第03話 昔を思い出して
しおりを挟む
朝食だ。目の前に並べられた食器に、料理が盛り付けられている。
テーブルには両親と妹が座っていた。各々が料理を口に運ぶ。
私の後ろにはヘレンが控えていた。その他にも、多くのメイドや執事たちが並んでスタンバイしている。
この光景も懐かしい。思い返すと、ずっと昔にあった日常。
しかし、どの料理も味が平凡ね。一口食べて分かるぐらい、色々と足りない感じがする。食材が悪いとか、料理人の腕が悪いわけじゃないと思う。これも色々な技術の後退が原因のようね。
私、この時代で生きていけるのかしら。私が満足できるように、アレクグル王国の発展に手を貸してしまいそうになる。だけど今回は、アレクグル王国やリカードには関わらないようにしたい。
前と同じような、人生を捧げるような生き方はしたくない。だから、しばらくの間は我慢するしかない。
「ナディーン。貴方、今日は随分と行儀が良いのね」
「はい」
お母様が、私の食事の立ち居振る舞いを褒める。お母様との思い出は、正直あまり無かった。けれど、教育熱心だった人だったのは覚えている。そんな彼女から見て、良い動きだったようだ。王妃として生きてきた記憶があるから、染み付いてしまっているのよね。
「ようやく、殿下の婚約相手としての意識が芽生えましたね。今後も励みなさい」
「……はい、頑張ります」
今の私は、リカードと結婚するつもりは無いのだけれど。それを今言ってみたら、お母様やお父様はどういう反応をするかしら。怒るか、悲しむか。
まぁ今は、何も言うつもりはないけれど。いずれは、リカードとの婚約を破棄するように動かなければ。なるべく穏便に関係を終わらせられるように。
「ねぇ、お父様! わたし、新しいドレスがほしい!」
食事の最中に突然、妹が声を上げた。お父様に、ドレスを買ってほしいとワガママを言い出した。
「ドレス? またか? ついこの間、新しいのを買ってあげただろう」
「えー! だって、もう古くなったんだもん。だから、新しいドレスがほしいの!」
「仕方ないなぁ……」
お父様は仕方ないと言いながらも、妹の願いを叶えることにしたらしい。
こんな幼い頃から、妹のメイヤはワガママだったのね。そして両親も、彼女を甘やかしてしまう。それが、彼女を何でも欲しがる性格にしてしまった。
もう少し大きくなるとリカード王子のことを気に入って、私の婚約相手だった彼を奪い取ろうとするようになってしまうほど。彼女が裏で色々と動いて、私を貶めようとして。もちろん私が阻止して、そんな事は出来なかったが。
前は、奪い取られないように彼女の企みを全力で潰してきた。家族だったけれど、両親とは違って私は妹に容赦しなかった。
結局、私からリカードを奪い取るのは諦めて普通に結婚して婿を迎えて、跡継ぎの居なかったストランド伯爵家を継承した。
私は、ストランド伯爵家の長女だった。けれど、王家に嫁いでいったから受け継ぐことが出来ない。ストランド伯爵家には長男が居なかったので、次女のメイヤが婿を迎えて継承したというわけだ。正確には、彼女の産んだ息子が。
立派な夫に行動を制御されて、ワガママを言う回数も抑えられていた。でも時々、ドレスやジュエリーなどを強請ってくる。適当に与えてやると、何も悪さしないので扱いは簡単だった。
そんな妹のメイヤ。彼女は今回、どういった風に動くのかしら。やっぱり、私からリカードを奪い取ろうとするのか。そうしてくれたら、私も助かる。今回は、彼女の行動を邪魔するつもりはないので頑張ってほしいわね。
テーブルには両親と妹が座っていた。各々が料理を口に運ぶ。
私の後ろにはヘレンが控えていた。その他にも、多くのメイドや執事たちが並んでスタンバイしている。
この光景も懐かしい。思い返すと、ずっと昔にあった日常。
しかし、どの料理も味が平凡ね。一口食べて分かるぐらい、色々と足りない感じがする。食材が悪いとか、料理人の腕が悪いわけじゃないと思う。これも色々な技術の後退が原因のようね。
私、この時代で生きていけるのかしら。私が満足できるように、アレクグル王国の発展に手を貸してしまいそうになる。だけど今回は、アレクグル王国やリカードには関わらないようにしたい。
前と同じような、人生を捧げるような生き方はしたくない。だから、しばらくの間は我慢するしかない。
「ナディーン。貴方、今日は随分と行儀が良いのね」
「はい」
お母様が、私の食事の立ち居振る舞いを褒める。お母様との思い出は、正直あまり無かった。けれど、教育熱心だった人だったのは覚えている。そんな彼女から見て、良い動きだったようだ。王妃として生きてきた記憶があるから、染み付いてしまっているのよね。
「ようやく、殿下の婚約相手としての意識が芽生えましたね。今後も励みなさい」
「……はい、頑張ります」
今の私は、リカードと結婚するつもりは無いのだけれど。それを今言ってみたら、お母様やお父様はどういう反応をするかしら。怒るか、悲しむか。
まぁ今は、何も言うつもりはないけれど。いずれは、リカードとの婚約を破棄するように動かなければ。なるべく穏便に関係を終わらせられるように。
「ねぇ、お父様! わたし、新しいドレスがほしい!」
食事の最中に突然、妹が声を上げた。お父様に、ドレスを買ってほしいとワガママを言い出した。
「ドレス? またか? ついこの間、新しいのを買ってあげただろう」
「えー! だって、もう古くなったんだもん。だから、新しいドレスがほしいの!」
「仕方ないなぁ……」
お父様は仕方ないと言いながらも、妹の願いを叶えることにしたらしい。
こんな幼い頃から、妹のメイヤはワガママだったのね。そして両親も、彼女を甘やかしてしまう。それが、彼女を何でも欲しがる性格にしてしまった。
もう少し大きくなるとリカード王子のことを気に入って、私の婚約相手だった彼を奪い取ろうとするようになってしまうほど。彼女が裏で色々と動いて、私を貶めようとして。もちろん私が阻止して、そんな事は出来なかったが。
前は、奪い取られないように彼女の企みを全力で潰してきた。家族だったけれど、両親とは違って私は妹に容赦しなかった。
結局、私からリカードを奪い取るのは諦めて普通に結婚して婿を迎えて、跡継ぎの居なかったストランド伯爵家を継承した。
私は、ストランド伯爵家の長女だった。けれど、王家に嫁いでいったから受け継ぐことが出来ない。ストランド伯爵家には長男が居なかったので、次女のメイヤが婿を迎えて継承したというわけだ。正確には、彼女の産んだ息子が。
立派な夫に行動を制御されて、ワガママを言う回数も抑えられていた。でも時々、ドレスやジュエリーなどを強請ってくる。適当に与えてやると、何も悪さしないので扱いは簡単だった。
そんな妹のメイヤ。彼女は今回、どういった風に動くのかしら。やっぱり、私からリカードを奪い取ろうとするのか。そうしてくれたら、私も助かる。今回は、彼女の行動を邪魔するつもりはないので頑張ってほしいわね。
41
お気に入りに追加
3,098
あなたにおすすめの小説
ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手
Outlook!
ファンタジー
経緯は朝活動始まる一分前、それは突然起こった。床が突如、眩い光が輝き始め、輝きが膨大になった瞬間、俺を含めて30人のクラスメイト達がどこか知らない所に寝かされていた。
俺達はその後、いかにも王様っぽいひとに出会い、「七つの剣を探してほしい」と言われた。皆最初は否定してたが、俺はこの世界に残りたいがために今まで閉じていた口を開いた。
そしてステータスを確認するときに、俺は驚愕する他なかった。
理由は簡単、皆の授かった固有スキルには強スキルがあるのに対して、俺が授かったのはバットスキルにも程がある、状態異常倍加だったからだ。
※不定期更新です。ゆっくりと投稿していこうと思いますので、どうかよろしくお願いします。
カクヨム、小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
誤解なんですが。~とある婚約破棄の場で~
舘野寧依
恋愛
「王太子デニス・ハイランダーは、罪人メリッサ・モスカートとの婚約を破棄し、新たにキャロルと婚約する!」
わたくしはメリッサ、ここマーベリン王国の未来の王妃と目されている者です。
ところが、この国の貴族どころか、各国のお偉方が招待された立太式にて、馬鹿四人と見たこともない少女がとんでもないことをやらかしてくれました。
驚きすぎて声も出ないか? はい、本当にびっくりしました。あなた達が馬鹿すぎて。
※話自体は三人称で進みます。
くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。
音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。>
婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。
冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。
「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」
精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果
あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」
ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。
婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。
当然ながら、アリスはそれを拒否。
他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。
『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。
その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。
彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。
『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。
「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」
濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。
······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。
復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。
※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください)
※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。
※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。
※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる