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第14話 元婚約相手からの手紙
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ヴィクトリアは自室で、様々な人から送られてきた手紙に次々と目を通していた。ハーウッド家が主催するパーティーに参加してくれた人々から、招待への感謝が綴られたものや、感想が書かれたものがあった。
今度は自分たちが主催するパーティーに参加して欲しいと招待状が届いていたり、パーティーの段取りについてアドバイスを求められることもあった。
ハーウッド家に来てから親しくなった他家の奥様たちからは、近況について教えてもらったり、表では話せないちょっとした愚痴なども綴られていた。
同じく親しくなった貴族令嬢から、最近の流行りに関する情報や、次のパーティーについての問い合わせ、お茶会のお誘いなども届いていた。
ヴィクトリアは、そんな手紙に丁寧に目を通して、一通一通に返事を書いていく。関係の構築が順調なので、沢山の人から手紙が送られてくるのだ。手間はかかるが、ここで手を抜くわけにはいかない。大切な繋がりを築いていく上で、欠かせない作業なのだ。
「ん?」
そんな中、ブラックソーン家から豪華な封筒で手紙が届いているのを見つけた。差出人の欄にあるダミアンの名前に、一瞬目を疑う。開封したくない気持ちが強かったが、無視することで問題が起きては厄介だ。
ヴィクトリアは深いため息をつきながら、慎重に封を切った。
もしかしたら、イザベラから手伝いを要請されて断ったことがあったから、その代わりにダミアンが協力を求めてきたのかもしれないと彼女は予想した。パーティーの準備や段取りには一切関わろうとしなかった男だったけど、イザベラに頼られて初めて協力する気になったのかもしれない。
しかし、ヴィクトリアの予想は大きく外れていた。
「……うわぁ」
手紙を読み進めるうちに、ヴィクトリアの表情が曇っていく。面倒くさい、厄介だという顔になったり、理解不能というような顔にもなったりした。とにかく、手紙に書かれていた内容は酷いもの。
手紙の内容を要約すると、ダミアンからの復縁を求めるものだった。
ダミアンは自分がイザベラに騙されていたと訴え、悪いのはイザベラだと書かれていた。イザベラは暴走しているため、彼女と結婚するのは嫌だとダミアンは述べて、前の関係に戻りたいと書いてある。公爵夫人の立場に戻れるメリットもあると説得し、一度会って話がしたいと書かれていた。
「ありえないことね」
ヴィクトリアは読み進めるうちに頭が痛くなり、絶対に元通りにはなりたくないと思った。エドワードとの出会いや新しいことへの挑戦、成長できる楽しい日々が今の幸せだと感じていたから。そんな今を捨てて前に戻るほどの価値はない。
身勝手な言い訳と一方的な都合ばかりが並んだ手紙を読み終えたヴィクトリアは、エドワードに相談することにした。
「これ、どうしましょうか」
「なるほど、厄介だな」
相談されたエドワードも目を通して、ヴィクトリアと同じような表情になる。
エドワードは手紙を保管し、反応せずに静観するのが一番だとアドバイスをした。ヴィクトリアも彼と同じ意見で、無視するべきだと考えていたので、そうすることになった。
もし公爵家が権力を使って実力行使に出てきた場合、ハーウッド家で対処することをエドワードは約束した。その言葉に安心感を得るヴィクトリア。
その後、ダミアンから何度も同じ内容の手紙が届いたけれど、ヴィクトリアは全てを黙殺した。相手が諦めるまで、この態度を貫くつもりだった。
彼女の心は、もうダミアンのもとには戻ることはない。その事実を理解するまで、一切の応答を拒み続けることにした。
今度は自分たちが主催するパーティーに参加して欲しいと招待状が届いていたり、パーティーの段取りについてアドバイスを求められることもあった。
ハーウッド家に来てから親しくなった他家の奥様たちからは、近況について教えてもらったり、表では話せないちょっとした愚痴なども綴られていた。
同じく親しくなった貴族令嬢から、最近の流行りに関する情報や、次のパーティーについての問い合わせ、お茶会のお誘いなども届いていた。
ヴィクトリアは、そんな手紙に丁寧に目を通して、一通一通に返事を書いていく。関係の構築が順調なので、沢山の人から手紙が送られてくるのだ。手間はかかるが、ここで手を抜くわけにはいかない。大切な繋がりを築いていく上で、欠かせない作業なのだ。
「ん?」
そんな中、ブラックソーン家から豪華な封筒で手紙が届いているのを見つけた。差出人の欄にあるダミアンの名前に、一瞬目を疑う。開封したくない気持ちが強かったが、無視することで問題が起きては厄介だ。
ヴィクトリアは深いため息をつきながら、慎重に封を切った。
もしかしたら、イザベラから手伝いを要請されて断ったことがあったから、その代わりにダミアンが協力を求めてきたのかもしれないと彼女は予想した。パーティーの準備や段取りには一切関わろうとしなかった男だったけど、イザベラに頼られて初めて協力する気になったのかもしれない。
しかし、ヴィクトリアの予想は大きく外れていた。
「……うわぁ」
手紙を読み進めるうちに、ヴィクトリアの表情が曇っていく。面倒くさい、厄介だという顔になったり、理解不能というような顔にもなったりした。とにかく、手紙に書かれていた内容は酷いもの。
手紙の内容を要約すると、ダミアンからの復縁を求めるものだった。
ダミアンは自分がイザベラに騙されていたと訴え、悪いのはイザベラだと書かれていた。イザベラは暴走しているため、彼女と結婚するのは嫌だとダミアンは述べて、前の関係に戻りたいと書いてある。公爵夫人の立場に戻れるメリットもあると説得し、一度会って話がしたいと書かれていた。
「ありえないことね」
ヴィクトリアは読み進めるうちに頭が痛くなり、絶対に元通りにはなりたくないと思った。エドワードとの出会いや新しいことへの挑戦、成長できる楽しい日々が今の幸せだと感じていたから。そんな今を捨てて前に戻るほどの価値はない。
身勝手な言い訳と一方的な都合ばかりが並んだ手紙を読み終えたヴィクトリアは、エドワードに相談することにした。
「これ、どうしましょうか」
「なるほど、厄介だな」
相談されたエドワードも目を通して、ヴィクトリアと同じような表情になる。
エドワードは手紙を保管し、反応せずに静観するのが一番だとアドバイスをした。ヴィクトリアも彼と同じ意見で、無視するべきだと考えていたので、そうすることになった。
もし公爵家が権力を使って実力行使に出てきた場合、ハーウッド家で対処することをエドワードは約束した。その言葉に安心感を得るヴィクトリア。
その後、ダミアンから何度も同じ内容の手紙が届いたけれど、ヴィクトリアは全てを黙殺した。相手が諦めるまで、この態度を貫くつもりだった。
彼女の心は、もうダミアンのもとには戻ることはない。その事実を理解するまで、一切の応答を拒み続けることにした。
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