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第28話 離れたいのに ※レイティア視点
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逃げ出さないよう拘束されたまま、連れてこられた部屋には彼が居た。きょとんとした顔で、頼りになりそうにない。
「……レイティア?」
「どこに行っていたのよ、ランドリック」
こんなことになったのは、貴方のせいなのに。もっと早く、ランドリックから離れておくべきだった。タイミングを逃してしまったのね。
けれど、まだ逃げられるはずよ。ここから先の選択は間違えないようにしないと。どうにかして、彼との結婚を回避する。そのために、私は待たされたんだから。
次の選択を間違えないようにするため私は、数日前のことについて振り返った。
***
数日前、メディチ公爵家の当主から呼び出された。ランドリックのことについて、聞きたいことがあると。
私じゃなく、本人に直接聞けばいいのに。そう思ったけど、拒否するのは難しい。相手は、公爵家の当主だから。
もしかしたら、結婚のことについて聞かれるかもしれない。私にはもう、その気がない。どうにかして、ランドリックを切り捨てたい。離れるための理由を探っている最中だったのに。
結婚を回避する方法を考えながら、呼び出しに応じた。そこで私が聞かれたのは、予想外なことだった。
「ランドリックが行方不明になった。行き先は、知らないか?」
「知りません。私は、何も聞いていませんから」
どうやら、彼が居なくなったらしい。本当に何も知らなかったから、そう答えた。このまま行方不明が続いて、結婚もうやむやになってくれたらいいのに。
「そうか。君も行き先は聞いていないのか」
「はい。聞いていません。どこに行ったのか、予想もつきません」
これで話は終わり? 私は、このまま帰っていいかしら。
「それなら、ランドリックが見つかるまでレイティア嬢には待機してもらおう」
「え? な、なんで?」
「あいつが見つかったら、すぐに知らせよう。それまで、屋敷に滞在してもらう」
「ちょ、ちょっと!」
こうして私は、メディチ公爵家に問答無用で拘束されてしまった。家に帰ることも許されない。いつ帰ってくるのかわからない彼を、待たされ続けることになった。
意味がわからない。どうして私が、切り捨てることに決めた男の帰りを待たないといけないのよ。イライラが募っていく日々が続いた。
「ねぇ! 家に帰してよ!」
「申し訳ありませんが、それはできかねます」
私を監視している兵士が、淡々と答える。なんで、家に帰してくれないのよ。私は今すぐ帰りたいのに。
「か弱い令嬢を監禁してるなんてバレたら、公爵家だって許されないわよ!」
「ヴァレンティ侯爵家には知らせていますし、許可も得ています」
「は? そんな……」
私の実家から許可を得ている? 私の両親が許可を出した? 本当に? きっと、嘘よ。この屋敷から出たら、絶対に訴えてやるんだから。それに、ランドリックとの結婚を断る理由も得られた。こんな酷いことをする家に嫁ぐなんて嫌だもの。結婚を拒否する、十分な理由になるわよね。
家に帰してもらえず、待たされること数日。ようやく、あの男が帰ってきたらしい。これで私も、家に帰れるはず。そう思っていた。
「……レイティア?」
「どこに行っていたのよ、ランドリック」
こんなことになったのは、貴方のせいなのに。もっと早く、ランドリックから離れておくべきだった。タイミングを逃してしまったのね。
けれど、まだ逃げられるはずよ。ここから先の選択は間違えないようにしないと。どうにかして、彼との結婚を回避する。そのために、私は待たされたんだから。
次の選択を間違えないようにするため私は、数日前のことについて振り返った。
***
数日前、メディチ公爵家の当主から呼び出された。ランドリックのことについて、聞きたいことがあると。
私じゃなく、本人に直接聞けばいいのに。そう思ったけど、拒否するのは難しい。相手は、公爵家の当主だから。
もしかしたら、結婚のことについて聞かれるかもしれない。私にはもう、その気がない。どうにかして、ランドリックを切り捨てたい。離れるための理由を探っている最中だったのに。
結婚を回避する方法を考えながら、呼び出しに応じた。そこで私が聞かれたのは、予想外なことだった。
「ランドリックが行方不明になった。行き先は、知らないか?」
「知りません。私は、何も聞いていませんから」
どうやら、彼が居なくなったらしい。本当に何も知らなかったから、そう答えた。このまま行方不明が続いて、結婚もうやむやになってくれたらいいのに。
「そうか。君も行き先は聞いていないのか」
「はい。聞いていません。どこに行ったのか、予想もつきません」
これで話は終わり? 私は、このまま帰っていいかしら。
「それなら、ランドリックが見つかるまでレイティア嬢には待機してもらおう」
「え? な、なんで?」
「あいつが見つかったら、すぐに知らせよう。それまで、屋敷に滞在してもらう」
「ちょ、ちょっと!」
こうして私は、メディチ公爵家に問答無用で拘束されてしまった。家に帰ることも許されない。いつ帰ってくるのかわからない彼を、待たされ続けることになった。
意味がわからない。どうして私が、切り捨てることに決めた男の帰りを待たないといけないのよ。イライラが募っていく日々が続いた。
「ねぇ! 家に帰してよ!」
「申し訳ありませんが、それはできかねます」
私を監視している兵士が、淡々と答える。なんで、家に帰してくれないのよ。私は今すぐ帰りたいのに。
「か弱い令嬢を監禁してるなんてバレたら、公爵家だって許されないわよ!」
「ヴァレンティ侯爵家には知らせていますし、許可も得ています」
「は? そんな……」
私の実家から許可を得ている? 私の両親が許可を出した? 本当に? きっと、嘘よ。この屋敷から出たら、絶対に訴えてやるんだから。それに、ランドリックとの結婚を断る理由も得られた。こんな酷いことをする家に嫁ぐなんて嫌だもの。結婚を拒否する、十分な理由になるわよね。
家に帰してもらえず、待たされること数日。ようやく、あの男が帰ってきたらしい。これで私も、家に帰れるはず。そう思っていた。
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