5 / 7
第5話
しおりを挟む
「そんな! クリスティーナ様と一緒に居なくていいのかって私が尋ねたら、いいんだって言ったじゃない! 私は王族だから、決められた相手だから仕方ないって! 政略結婚だから、嫌だけど仕方なく一緒にいるんだと思って私は……!」
「政略結婚? もちろん私とクリスの結婚は家のため、王国のためでもある。だが、この結婚は私がクリスを愛していて、私から望んだことでもある。嫌だとは、今まで一度も考えたことはない」
「じゃ、じゃあ……。その女を嫌っていたのは?」
「全て、貴様の勘違いだ」
ピシャリと、マレイラ嬢の言葉を全て否定する。私も、彼に嫌われているだなんて今まで一度も感じたことはない。
ただ、他の人に仲の良さを見せてこなかったのは確か。バレないように、ずーっと隠してきた。周りは勘違いする可能性もありそう。二人の仲が悪い、って。
「そんなの、私は知らなかった! 誰も、教えてくれなかったわ!」
「なぜ、そんな事を説明せねばならないのだ? それに私は王族として、貴族の手本として、いつでもどこでも好き勝手に睦み合う姿なんて見せられるものか」
ルシャード様が建前を語る。本当は、いつも仲良く過ごしたいと思っているのに。
だけど、私達がイチャイチャする姿を周りに見られてイジられたくないから隠してきた。特に、両親にはイジられたくないと語っていたルシャード様。
もう、バレちゃったけれど。
「嘘よ! クリスティーナ様と愛し合っているなんて、信じられないッ! 本当は、私とでしょ? 私と王子様が将来は結ばれるんだって、お父様も言っていたわよ! だから、養子にしてくれたって。それで、クリスティーナ様が嫉妬して……」
「あぁ。シャイト子爵家の当主は、お前を側妃や妾に据えたかったようだな。それで派手に金を使い込んだ。しかも、根回しのために使う資金を集めようと脱税や横領を行っていたことも判明している」
「そ、そんな……。うそよ……」
いきなり出てきた実家に関する最悪な情報を聞いてた、マレイラ嬢は呆然とする。その話を受け入れきれず、顔は青ざめていた。
マレイラ嬢の反応など無視して、ルシャード様が話を続ける。
「そして、クリスが嫉妬するわけないんだよ。私は、クリスしか見ていない。それを彼女は十分に理解している。いや、もしかすると私の愛がまだ足りないかな?」
先程の黒いオーラを纏った笑みとは違って、楽しそうな雰囲気の笑顔で私の顔を覗き込んでくる。これは、いたずらっ子のときの顔だわ。二人っきりのときのように、私の反応を楽しんでいる。
「いいえ! 十分理解しております、ルシャード様!」
「クリス、いつものは?」
「ッ!」
彼はニヤニヤしながら、いつものを求めてくる。人前で、恥ずかしいわ。けれど、応えないと拗ねちゃうだろうし。もう十分に恥ずかしい思いはした。
あとは、勢いに任せるだけかしら。
「……はい、ルー様」
私は、二人だけの時に使う愛称を口にしながら首に手を回して、そっと抱きつく。ルー様の体温を感じるまで、ギュッと。彼の身体も、いつもより熱く感じる。これは私の体温か。それとも、彼か。
「ありがとう、私の可愛いクリス」
そう言って、おでこにキスを落とすルー様。こんな姿を見せたら、疑う余地もないだろう。ご覧の通り、私達は愛し合っている。
「政略結婚? もちろん私とクリスの結婚は家のため、王国のためでもある。だが、この結婚は私がクリスを愛していて、私から望んだことでもある。嫌だとは、今まで一度も考えたことはない」
「じゃ、じゃあ……。その女を嫌っていたのは?」
「全て、貴様の勘違いだ」
ピシャリと、マレイラ嬢の言葉を全て否定する。私も、彼に嫌われているだなんて今まで一度も感じたことはない。
ただ、他の人に仲の良さを見せてこなかったのは確か。バレないように、ずーっと隠してきた。周りは勘違いする可能性もありそう。二人の仲が悪い、って。
「そんなの、私は知らなかった! 誰も、教えてくれなかったわ!」
「なぜ、そんな事を説明せねばならないのだ? それに私は王族として、貴族の手本として、いつでもどこでも好き勝手に睦み合う姿なんて見せられるものか」
ルシャード様が建前を語る。本当は、いつも仲良く過ごしたいと思っているのに。
だけど、私達がイチャイチャする姿を周りに見られてイジられたくないから隠してきた。特に、両親にはイジられたくないと語っていたルシャード様。
もう、バレちゃったけれど。
「嘘よ! クリスティーナ様と愛し合っているなんて、信じられないッ! 本当は、私とでしょ? 私と王子様が将来は結ばれるんだって、お父様も言っていたわよ! だから、養子にしてくれたって。それで、クリスティーナ様が嫉妬して……」
「あぁ。シャイト子爵家の当主は、お前を側妃や妾に据えたかったようだな。それで派手に金を使い込んだ。しかも、根回しのために使う資金を集めようと脱税や横領を行っていたことも判明している」
「そ、そんな……。うそよ……」
いきなり出てきた実家に関する最悪な情報を聞いてた、マレイラ嬢は呆然とする。その話を受け入れきれず、顔は青ざめていた。
マレイラ嬢の反応など無視して、ルシャード様が話を続ける。
「そして、クリスが嫉妬するわけないんだよ。私は、クリスしか見ていない。それを彼女は十分に理解している。いや、もしかすると私の愛がまだ足りないかな?」
先程の黒いオーラを纏った笑みとは違って、楽しそうな雰囲気の笑顔で私の顔を覗き込んでくる。これは、いたずらっ子のときの顔だわ。二人っきりのときのように、私の反応を楽しんでいる。
「いいえ! 十分理解しております、ルシャード様!」
「クリス、いつものは?」
「ッ!」
彼はニヤニヤしながら、いつものを求めてくる。人前で、恥ずかしいわ。けれど、応えないと拗ねちゃうだろうし。もう十分に恥ずかしい思いはした。
あとは、勢いに任せるだけかしら。
「……はい、ルー様」
私は、二人だけの時に使う愛称を口にしながら首に手を回して、そっと抱きつく。ルー様の体温を感じるまで、ギュッと。彼の身体も、いつもより熱く感じる。これは私の体温か。それとも、彼か。
「ありがとう、私の可愛いクリス」
そう言って、おでこにキスを落とすルー様。こんな姿を見せたら、疑う余地もないだろう。ご覧の通り、私達は愛し合っている。
31
お気に入りに追加
766
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
厚かましい妹の言掛りがウザ……酷いので、家族総出でお仕置きしてみた。
百谷シカ
恋愛
「はあ!? 自分が愛されてるとでも思ってるの? ディーン様は私を愛しているのよ!!」
私はオーベリソン伯爵令嬢カルロッテ・バーン。
婚約者のディーンことシーヴ伯爵とは、超絶うまくいっている。
「お姉様みたいに血筋しか取り柄のない女どもは所詮ちんけな政治の道具! 図に乗らないで!」
このムカムカする女は年子の妹エヴェリーナ。
2ヶ月前、ライル侯爵令息アルヴィン・クーパー卿と婚約してからというもの図に乗っている。
「ディーンと私はラブラブよ」
「はあ!? 頭がおかしいんじゃない? 結婚なんて諦めて修道院にでも入ったらぁ?」
「はあ?」
「〝はあ!?〟 それしか言えないわけ? 本当に救いようのない馬鹿ね!」
たしかに超絶美少女のエヴェリーナはその美貌でアルヴィン卿を射止めたけど……
「あの方の前では猫被ってるから」
私たち家族は頭を抱えた。
そして、私の婚約者ディーンはブチギレた。
「俺の愛しているのはカルロッテただひとりだ。むかつく!」
そこで私たちは計画を立てた。
エヴェリーナの本性をアルヴィン卿に晒してやるのだ……!
悪役令嬢の私が転校生をイジメたといわれて断罪されそうです
白雨あめ
恋愛
「君との婚約を破棄する! この学園から去れ!」
国の第一王子であるシルヴァの婚約者である伯爵令嬢アリン。彼女は転校生をイジメたという理由から、突然王子に婚約破棄を告げられてしまう。
目の前が真っ暗になり、立ち尽くす彼女の傍に歩み寄ってきたのは王子の側近、公爵令息クリスだった。
※2話完結。
その断罪、三ヶ月後じゃダメですか?
荒瀬ヤヒロ
恋愛
ダメですか。
突然覚えのない罪をなすりつけられたアレクサンドルは兄と弟ともに深い溜め息を吐く。
「あと、三ヶ月だったのに…」
*「小説家になろう」にも掲載しています。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
【完結】義母が斡旋した相手と婚約破棄することになりまして。~申し訳ありませんが、私は王子と結婚します~
西東友一
恋愛
義母と義理の姉妹と暮らしていた私。
義母も義姉も義妹も私をイジメてきて、雑用ばかりさせてきましたが、
結婚できる歳になったら、売り払われるように商人と結婚させられそうになったのですが・・・・・・
申し訳ありませんが、王子と結婚します。
※※
別の作品だと会話が多いのですが、今回は地の文を増やして一人の少女が心の中で感じたことを書くスタイルにしてみました。
ダイジェストっぽくなったような気もしますが、それも含めてコメントいただけるとありがたいです。
この作品だけ読むだけでも、嬉しいですが、他の作品を読んだり、お気に入りしていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる