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第1話
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「クリスティーナ様! 貴女、ルシャード殿下との婚約を破棄しなさいよ!」
「ッ!? な、なんですか、いきなり……?」
ランチを終えた私は校庭のテラスで一人、読書を楽しんでいた。そこに突然現れて第一声に、そんなことを言ってきたのはシャイト子爵令嬢のマレイラだった。
彼女は子爵と庶民の母の間に産まれて、夫人が亡くなられてひと月もしないうちに後妻として迎えられた親子として、色々と有名である。
とある事情で、私は彼女のことを少しだけ知っていた。
そんな彼女が、なぜ急に話しかけてきたのか。今まで一度も話したことはないし、家同士の繋がりもない。同じ学園に通っているというだけの、ほぼ他人というような遠い関係だった。そんな人物が、いきなり私の婚約について指摘してくるだなんて。
どう考えても、失礼な態度。
それなのにマレイラ嬢は、自信満々という感じで私の顔を睨んできた。周りにいる者たちの、驚いたり呆れた様子には気付いていないようだ。
「そうだ、クリスティーナ嬢! 君は、殿下に愛されていないことに気付いているのだろう? マレイラ嬢が、君の代わりに殿下の寵愛を受けていることを知り、彼女をイジメているそうじゃないか!」
「は?」
観衆の中から突然、そんなことを言って出てきた男が居た。
確か彼は、テスタ伯爵家の次男坊であるリカルド、だったかな。彼とも、ほとんど知らない関係だ。
そんな人間が、マレイラ嬢の味方として会話に割り込んできた。彼女の隣に立ち、私の顔を睨んでくる。見知らぬ人たち二人から、睨まれる私。
「そんな女は、ルシャード殿下の婚約相手には相応しくない。さっさと、君の方から殿下に婚約破棄を申し出るべきであろう!」
「何の話ですか、一体?」
本当に、訳が分からない。いきなり図々しく話しかけてきて、いきなり覚えのないことを指摘して、私を責めるだなんて。
「貴女は、知らないフリをするつもりか!」
「そんなの、絶対に許されないわよッ!」
私の言葉に、激しく反発してくる二人。知らないフリなんてしていないのに、二人はそれが真実であると、周りに言いふらす。
「……そもそも、私の意思には関係なく王家と公爵家での決まりごとです。なので、私から婚約破棄を申し出る事はできませんよ」
そんな事情など関係なく、私の意志で婚約を破棄したいなんて言うことは、絶対にあり得ない。ルシャード様から言われることも、多分ないだろう。
だが、目の前の二人は納得していない様子。
「それからシャイト子爵令嬢とテスタ伯爵令息、あなた方は私と殿下の婚約について色々とおっしゃられる立場では、ございませんのよ?」
「何を言っている! 我々は、王家と殿下の為を思って進言しているのだ! 乱暴に権力を振りかざし、か弱い立場の者をいじめる君が、殿下の婚約者では国のためにはならんと! その事を反省して、君は修道院にでも入るべきなのだ!」
ツバを飛ばすほどの怒りで、そう主張するリカルド。彼らと会話していると、頭が痛くなってくる。話が通じない。
「……では、私がシャイト子爵令嬢をどのようにイジメていたのですか? 今までに私は権力を振りかざしたことも、もちろん誰かをイジメたこともございません。彼女とはクラスも違いますし、言葉を交わしたことすらございません。それで私が一体、どのようにしてイジメたというのですか?」
「そ、そんな、酷い……! 私、あんなに怖い思いしたのに……」
そう言って、周りを同情させようというのがハッキリと分かる演技で泣き真似するマレイラ嬢。こんなもので、騙される人が居るのだろうか。
わざわざ私が、犯人だとバレるように彼女をイジメるなんて、そんな分かりやすいことなどしない。権力を駆使すれば、もっと賢くて効率の良い方法があるはず。
それに、イジメられて怖いという相手に対して、こんなに堂々とした態度で婚約を破棄しろ、だなんて言ってくるのも。
どう考えても、色々とオカシイ。
「あぁ……、なんて可哀想なマレイラ嬢! まず彼女をイジメたことを謝れ! この嘘つき女が! 謝罪を示すために、皆の前で土下座をしろ! そして、殿下と婚約を破棄するんだ!」
なんて酷い見世物なのよ、これは。
「ッ!? な、なんですか、いきなり……?」
ランチを終えた私は校庭のテラスで一人、読書を楽しんでいた。そこに突然現れて第一声に、そんなことを言ってきたのはシャイト子爵令嬢のマレイラだった。
彼女は子爵と庶民の母の間に産まれて、夫人が亡くなられてひと月もしないうちに後妻として迎えられた親子として、色々と有名である。
とある事情で、私は彼女のことを少しだけ知っていた。
そんな彼女が、なぜ急に話しかけてきたのか。今まで一度も話したことはないし、家同士の繋がりもない。同じ学園に通っているというだけの、ほぼ他人というような遠い関係だった。そんな人物が、いきなり私の婚約について指摘してくるだなんて。
どう考えても、失礼な態度。
それなのにマレイラ嬢は、自信満々という感じで私の顔を睨んできた。周りにいる者たちの、驚いたり呆れた様子には気付いていないようだ。
「そうだ、クリスティーナ嬢! 君は、殿下に愛されていないことに気付いているのだろう? マレイラ嬢が、君の代わりに殿下の寵愛を受けていることを知り、彼女をイジメているそうじゃないか!」
「は?」
観衆の中から突然、そんなことを言って出てきた男が居た。
確か彼は、テスタ伯爵家の次男坊であるリカルド、だったかな。彼とも、ほとんど知らない関係だ。
そんな人間が、マレイラ嬢の味方として会話に割り込んできた。彼女の隣に立ち、私の顔を睨んでくる。見知らぬ人たち二人から、睨まれる私。
「そんな女は、ルシャード殿下の婚約相手には相応しくない。さっさと、君の方から殿下に婚約破棄を申し出るべきであろう!」
「何の話ですか、一体?」
本当に、訳が分からない。いきなり図々しく話しかけてきて、いきなり覚えのないことを指摘して、私を責めるだなんて。
「貴女は、知らないフリをするつもりか!」
「そんなの、絶対に許されないわよッ!」
私の言葉に、激しく反発してくる二人。知らないフリなんてしていないのに、二人はそれが真実であると、周りに言いふらす。
「……そもそも、私の意思には関係なく王家と公爵家での決まりごとです。なので、私から婚約破棄を申し出る事はできませんよ」
そんな事情など関係なく、私の意志で婚約を破棄したいなんて言うことは、絶対にあり得ない。ルシャード様から言われることも、多分ないだろう。
だが、目の前の二人は納得していない様子。
「それからシャイト子爵令嬢とテスタ伯爵令息、あなた方は私と殿下の婚約について色々とおっしゃられる立場では、ございませんのよ?」
「何を言っている! 我々は、王家と殿下の為を思って進言しているのだ! 乱暴に権力を振りかざし、か弱い立場の者をいじめる君が、殿下の婚約者では国のためにはならんと! その事を反省して、君は修道院にでも入るべきなのだ!」
ツバを飛ばすほどの怒りで、そう主張するリカルド。彼らと会話していると、頭が痛くなってくる。話が通じない。
「……では、私がシャイト子爵令嬢をどのようにイジメていたのですか? 今までに私は権力を振りかざしたことも、もちろん誰かをイジメたこともございません。彼女とはクラスも違いますし、言葉を交わしたことすらございません。それで私が一体、どのようにしてイジメたというのですか?」
「そ、そんな、酷い……! 私、あんなに怖い思いしたのに……」
そう言って、周りを同情させようというのがハッキリと分かる演技で泣き真似するマレイラ嬢。こんなもので、騙される人が居るのだろうか。
わざわざ私が、犯人だとバレるように彼女をイジメるなんて、そんな分かりやすいことなどしない。権力を駆使すれば、もっと賢くて効率の良い方法があるはず。
それに、イジメられて怖いという相手に対して、こんなに堂々とした態度で婚約を破棄しろ、だなんて言ってくるのも。
どう考えても、色々とオカシイ。
「あぁ……、なんて可哀想なマレイラ嬢! まず彼女をイジメたことを謝れ! この嘘つき女が! 謝罪を示すために、皆の前で土下座をしろ! そして、殿下と婚約を破棄するんだ!」
なんて酷い見世物なのよ、これは。
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