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第34話 決意
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これから大事な話し合いが行われる。エリック王子も参加するという重要な会議に呼ばれていた。
仲間たちと一緒に会議室に入ると、王子から欲望にまみれた視線を向けられた。
そんな目で見られるのは新鮮だけど、気持ち悪い。
彼の記憶を消し去る前は、私のことを邪魔者として見る目でずっと睨まれていた。だからこそ、そんな視線を向けられるのは初めてで新鮮だと感じた。
正直に言って不快だけど。私を利用しようという気持ちばかり感じるから。すぐにでもこの話し合いを終わらせて、その視線から逃げ出したい。そんな気持ちを表には出ないよう必死に隠しながら、私は話し合いに集中する。
「この話し合いは、結婚の意思があるかどうかを確認するために行われます」
エリック王子の部下が私と王子の顔を交互に見ながら、会議の目的を述べた。彼に続いて王子が言う。
「もちろん、俺は君との結婚を望んでいる」
ニヤリと笑みを浮かべて、王子は私を見つめてくる。私の答えも決まっていた。
「私は、望んでいません」
そう告げると、王子は唖然とした顔になった。
「は? な、なんだって……?」
予想外だという反応だ。私の拒絶が信じられないようだった。
「エリック様は、教会のエリーゼという女性と婚約していると聞きましたが?」
「か、彼女は聖女にふさわしくない。君のほうが聖女にふさわしい。だから、王国の将来のためにも君と結婚したいと考えている」
想定外の事態に焦りながら、王子は答える。頬を硬くして、言葉を絞り出すように話していた。
私が婚約破棄された時に聞かされた言葉が、また繰り返される。
過去にあった、あの出来事みたいだと思った。あの時、私は婚約を破棄される立場だった。聖女にふさわしくないと突きつけられて。それが、今では逆になった。
何も嬉しくないけれど。
あの時に私は思った。王子と一緒になることは、どんなことがあっても絶対にないでしょう。この先もずっと。
そんな私の揺るぎない態度に、王子は気付いたのだろうか。
「結婚を拒否することは許さない! ルールなんて関係ない、王族である俺の命令に従って、お前は俺と絶対に結婚するんだ!」
今度は怒鳴り出した。それで私が怯むと思っているのかもしれない。だが、そんなことはない。私は、真正面から言い返す。
「どう言われようと、私は貴方と絶対に結婚したくありません。この気持ちが変わることもありえません」
「お前の大事な協会が、どうなってもいいのか? 王族である俺の命令を断ったら、協会の活動を止めることも容易いことだぞ」
脅しをかけてくる王子。拒否すれば大事な協会を傷つけると、権力を振りかざしてくる。でも、私は動じなかった。なるべく穏便に終わらせたかったけど。結局、こうなってしまうのね。
確かに、立ち上がったばかりの頃の協会なら、王家の力に抵抗するのは難しかったでしょう。
しかし、今は状況が異なる。私たちはずいぶんと成長した。王家に立ち向かっても戦えるぐらいの力がついたし、最悪の場合はみんなを連れて国外へ逃げるだけの準備もできている。
だから私は冷静だった。ただ、これ以上話し合いを続ける意味はない。
「なんと言われようと、私は結婚を断ります」
そう告げて、私は王子を見つめた。視線を絡め合わせて、ただ見つめ返す。
「王子も本当は、私なんかと結婚したくないでしょう? その時の気持ちを思い出してください」
「は?」
そう言って、私は王子の記憶のプロテクトを外した。聖女の力で封じていた王子の記憶を元通りに戻す。これで彼は思い出す。私に対する悪感情を。そうすれば、私と結婚したいなんて気持ちは消え去るでしょう。聖女の力を使えば、一瞬のことだ。
「な、なにを……した……?」
王子は目を見開き、呆然と立ち尽くしていた。周りで黙って話し合いの様子を見ていた王子の部下たちも、どうするべきか戸惑っているみたいね。見ているだけで助けようとはしないし、私が何をしたのかも気付いてないと思う。
失われていた記憶が、一気に彼の中に戻ってきたのだろう。だから混乱しているのだ。
「話し合いは終わりですね? では、私たちはこれで失礼します」
「……」
王子が我に返るまでには、少し時間がかかるだろう。だから今のうちに、この場を離れるとしましょう。そう決めた私たちは、颯爽と部屋を後にした。
彼が正気を取り戻したとき、どういう行動に出るのか。本当に協会を潰そうとしてきたら、仲間を引き連れて逃げる。何もしなければ、今まで通りに活動を続ける。
どんな事態になろうと、私たちは協会を守り抜く。
仲間たちと一緒に会議室に入ると、王子から欲望にまみれた視線を向けられた。
そんな目で見られるのは新鮮だけど、気持ち悪い。
彼の記憶を消し去る前は、私のことを邪魔者として見る目でずっと睨まれていた。だからこそ、そんな視線を向けられるのは初めてで新鮮だと感じた。
正直に言って不快だけど。私を利用しようという気持ちばかり感じるから。すぐにでもこの話し合いを終わらせて、その視線から逃げ出したい。そんな気持ちを表には出ないよう必死に隠しながら、私は話し合いに集中する。
「この話し合いは、結婚の意思があるかどうかを確認するために行われます」
エリック王子の部下が私と王子の顔を交互に見ながら、会議の目的を述べた。彼に続いて王子が言う。
「もちろん、俺は君との結婚を望んでいる」
ニヤリと笑みを浮かべて、王子は私を見つめてくる。私の答えも決まっていた。
「私は、望んでいません」
そう告げると、王子は唖然とした顔になった。
「は? な、なんだって……?」
予想外だという反応だ。私の拒絶が信じられないようだった。
「エリック様は、教会のエリーゼという女性と婚約していると聞きましたが?」
「か、彼女は聖女にふさわしくない。君のほうが聖女にふさわしい。だから、王国の将来のためにも君と結婚したいと考えている」
想定外の事態に焦りながら、王子は答える。頬を硬くして、言葉を絞り出すように話していた。
私が婚約破棄された時に聞かされた言葉が、また繰り返される。
過去にあった、あの出来事みたいだと思った。あの時、私は婚約を破棄される立場だった。聖女にふさわしくないと突きつけられて。それが、今では逆になった。
何も嬉しくないけれど。
あの時に私は思った。王子と一緒になることは、どんなことがあっても絶対にないでしょう。この先もずっと。
そんな私の揺るぎない態度に、王子は気付いたのだろうか。
「結婚を拒否することは許さない! ルールなんて関係ない、王族である俺の命令に従って、お前は俺と絶対に結婚するんだ!」
今度は怒鳴り出した。それで私が怯むと思っているのかもしれない。だが、そんなことはない。私は、真正面から言い返す。
「どう言われようと、私は貴方と絶対に結婚したくありません。この気持ちが変わることもありえません」
「お前の大事な協会が、どうなってもいいのか? 王族である俺の命令を断ったら、協会の活動を止めることも容易いことだぞ」
脅しをかけてくる王子。拒否すれば大事な協会を傷つけると、権力を振りかざしてくる。でも、私は動じなかった。なるべく穏便に終わらせたかったけど。結局、こうなってしまうのね。
確かに、立ち上がったばかりの頃の協会なら、王家の力に抵抗するのは難しかったでしょう。
しかし、今は状況が異なる。私たちはずいぶんと成長した。王家に立ち向かっても戦えるぐらいの力がついたし、最悪の場合はみんなを連れて国外へ逃げるだけの準備もできている。
だから私は冷静だった。ただ、これ以上話し合いを続ける意味はない。
「なんと言われようと、私は結婚を断ります」
そう告げて、私は王子を見つめた。視線を絡め合わせて、ただ見つめ返す。
「王子も本当は、私なんかと結婚したくないでしょう? その時の気持ちを思い出してください」
「は?」
そう言って、私は王子の記憶のプロテクトを外した。聖女の力で封じていた王子の記憶を元通りに戻す。これで彼は思い出す。私に対する悪感情を。そうすれば、私と結婚したいなんて気持ちは消え去るでしょう。聖女の力を使えば、一瞬のことだ。
「な、なにを……した……?」
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失われていた記憶が、一気に彼の中に戻ってきたのだろう。だから混乱しているのだ。
「話し合いは終わりですね? では、私たちはこれで失礼します」
「……」
王子が我に返るまでには、少し時間がかかるだろう。だから今のうちに、この場を離れるとしましょう。そう決めた私たちは、颯爽と部屋を後にした。
彼が正気を取り戻したとき、どういう行動に出るのか。本当に協会を潰そうとしてきたら、仲間を引き連れて逃げる。何もしなければ、今まで通りに活動を続ける。
どんな事態になろうと、私たちは協会を守り抜く。
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