27 / 37
第27話 王都の火災
しおりを挟む
協会の評判は日に日に高まり、市民の間で「困ったときの協会頼み」という言葉が流行するほどになっていた。
一方で、教会は「金持ち貴族のための組織」という認識が広まり、一般市民からの信頼を完全に失っていた。
ある日、王都で大規模な火災が発生した。
「協会の皆様! どうか助けてください!」
「お願いです! 私たちの家が!」
悲鳴と共に、市民たちが協会の本部に殺到した。私たちは協会のメンバー全員で即座に行動を開始し、消火活動と救助に全力を注いだ。
「落ち着いて行動を!」
私は現場に到着するや否や、周囲の状況を素早く把握した。炎に包まれた建物が、何十件もある。一帯が炎に包まれている。逃げ惑う人々、そして至る所から聞こえる悲鳴。この混沌とした状況の中で、冷静さを保つことが何より重要だった。
「ナディーヌ!」
私は声を上げた。
「避難誘導をお願い。危険な場所にいる人を安全な場所へ」
「了解しました」
彼女は一瞬で理解し、何人かの部下を連れてすぐに行動を開始した。
「ジャメル、消火活動の指揮を取って。対処できる人員を効率的に配置して」
「了解」
ジャメルは頷き、すぐに指示を出し始めた。
「エミリー、私と一緒に負傷者の治療にあたるわよ」
「はい、ノエラ様!」
私たちは手分けして動き始めた。聖女の力を駆使して、負傷者を次々と治療していく。汗が滝のように流れ落ちる中、休む暇もなく作業を続けた。
しかし、ふと気づいたことがあった。
「ジャメル」
「どうした?」
私はジャメルを呼んで、小声で尋ねた。
「教会の人たちは来ていないの?」
人手が足りない。対処できる人員が居ないのか。そう思って聞いてみた。だが彼は首を横に振って、答えた。
「奴らは来ていない。どうやら、自分たちの拠点を守ることを優先したそうだ」
王都で危険なことが起きた場合、教会が対処するべきなのに。特に、こんな大きな火災が発生したら真っ先に対応するべきなはず。それを、自分たちの拠点を優先するなんて。
もし本当なら、それは酷すぎる。でも今は、目の前の人々を助けることに集中しなければ。
「わかったわ。私たちにできることをやり続けましょう」
そう言って、再び治療に専念した。かなり広がっていた火災の鎮圧には数時間以上要したが、最終的に大きな犠牲者を出すことなく収束させることができた。
疲れ果てた私たちが協会に戻ると、そこには感謝の言葉を述べに来た市民たちが大勢いた。
「協会の皆様のおかげで助かりました」
「本当にありがとうございます!」
彼らを助けることが出来て、本当に良かった。
一方で、教会は「金持ち貴族のための組織」という認識が広まり、一般市民からの信頼を完全に失っていた。
ある日、王都で大規模な火災が発生した。
「協会の皆様! どうか助けてください!」
「お願いです! 私たちの家が!」
悲鳴と共に、市民たちが協会の本部に殺到した。私たちは協会のメンバー全員で即座に行動を開始し、消火活動と救助に全力を注いだ。
「落ち着いて行動を!」
私は現場に到着するや否や、周囲の状況を素早く把握した。炎に包まれた建物が、何十件もある。一帯が炎に包まれている。逃げ惑う人々、そして至る所から聞こえる悲鳴。この混沌とした状況の中で、冷静さを保つことが何より重要だった。
「ナディーヌ!」
私は声を上げた。
「避難誘導をお願い。危険な場所にいる人を安全な場所へ」
「了解しました」
彼女は一瞬で理解し、何人かの部下を連れてすぐに行動を開始した。
「ジャメル、消火活動の指揮を取って。対処できる人員を効率的に配置して」
「了解」
ジャメルは頷き、すぐに指示を出し始めた。
「エミリー、私と一緒に負傷者の治療にあたるわよ」
「はい、ノエラ様!」
私たちは手分けして動き始めた。聖女の力を駆使して、負傷者を次々と治療していく。汗が滝のように流れ落ちる中、休む暇もなく作業を続けた。
しかし、ふと気づいたことがあった。
「ジャメル」
「どうした?」
私はジャメルを呼んで、小声で尋ねた。
「教会の人たちは来ていないの?」
人手が足りない。対処できる人員が居ないのか。そう思って聞いてみた。だが彼は首を横に振って、答えた。
「奴らは来ていない。どうやら、自分たちの拠点を守ることを優先したそうだ」
王都で危険なことが起きた場合、教会が対処するべきなのに。特に、こんな大きな火災が発生したら真っ先に対応するべきなはず。それを、自分たちの拠点を優先するなんて。
もし本当なら、それは酷すぎる。でも今は、目の前の人々を助けることに集中しなければ。
「わかったわ。私たちにできることをやり続けましょう」
そう言って、再び治療に専念した。かなり広がっていた火災の鎮圧には数時間以上要したが、最終的に大きな犠牲者を出すことなく収束させることができた。
疲れ果てた私たちが協会に戻ると、そこには感謝の言葉を述べに来た市民たちが大勢いた。
「協会の皆様のおかげで助かりました」
「本当にありがとうございます!」
彼らを助けることが出来て、本当に良かった。
284
お気に入りに追加
930
あなたにおすすめの小説
平民だからと婚約破棄された聖女は、実は公爵家の人間でした。復縁を迫られましたが、お断りします。
木山楽斗
恋愛
私の名前は、セレンティナ・ウォズエ。アルベニア王国の聖女である。
私は、伯爵家の三男であるドルバル・オルデニア様と婚約していた。しかし、ある時、平民だからという理由で、婚約破棄することになった。
それを特に気にすることもなく、私は聖女の仕事に戻っていた。元々、勝手に決められた婚約だったため、特に問題なかったのだ。
そんな時、公爵家の次男であるロクス・ヴァンデイン様が私を訪ねて来た。
そして私は、ロクス様から衝撃的なことを告げられる。なんでも、私は公爵家の人間の血を引いているらしいのだ。
という訳で、私は公爵家の人間になった。
そんな私に、ドルバル様が婚約破棄は間違いだったと言ってきた。私が公爵家の人間であるから復縁したいと思っているようだ。
しかし、今更そんなことを言われて復縁しようなどとは思えない。そんな勝手な論は、許されないのである。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】
小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。
これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。
失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。
無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日のこと。
ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。
『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。
そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……
婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……
妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】
小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」
私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。
退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?
案の定、シャノーラはよく理解していなかった。
聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……
【完結】大聖女は無能と蔑まれて追放される〜殿下、1%まで力を封じよと命令したことをお忘れですか?隣国の王子と婚約しましたので、もう戻りません
冬月光輝
恋愛
「稀代の大聖女が聞いて呆れる。フィアナ・イースフィル、君はこの国の聖女に相応しくない。職務怠慢の罪は重い。無能者には国を出ていってもらう。当然、君との婚約は破棄する」
アウゼルム王国の第二王子ユリアンは聖女フィアナに婚約破棄と国家追放の刑を言い渡す。
フィアナは侯爵家の令嬢だったが、両親を亡くしてからは教会に預けられて類稀なる魔法の才能を開花させて、その力は大聖女級だと教皇からお墨付きを貰うほどだった。
そんな彼女は無能者だと追放されるのは不満だった。
なぜなら――
「君が力を振るうと他国に狙われるし、それから守るための予算を割くのも勿体ない。明日からは能力を1%に抑えて出来るだけ働くな」
何を隠そう。フィアナに力を封印しろと命じたのはユリアンだったのだ。
彼はジェーンという国一番の美貌を持つ魔女に夢中になり、婚約者であるフィアナが邪魔になった。そして、自らが命じたことも忘れて彼女を糾弾したのである。
国家追放されてもフィアナは全く不自由しなかった。
「君の父親は命の恩人なんだ。私と婚約してその力を我が国の繁栄のために存分に振るってほしい」
隣国の王子、ローレンスは追放されたフィアナをすぐさま迎え入れ、彼女と婚約する。
一方、大聖女級の力を持つといわれる彼女を手放したことがバレてユリアンは国王陛下から大叱責を食らうことになっていた。
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
無能だと言われ続けた聖女は、自らを封印することにしました
天宮有
恋愛
国を守る聖女として城に住んでいた私フィーレは、元平民ということもあり蔑まれていた。
伝統だから城に置いているだけだと、国が平和になったことで国王や王子は私の存在が不愉快らしい。
無能だと何度も言われ続けて……私は本当に不必要なのではないかと思い始める。
そうだ――自らを封印することで、数年ぐらい眠ろう。
無能と蔑まれ、不必要と言われた私は私を封印すると、国に異変が起きようとしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる