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第23話 新たな組織の立ち上げ
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エリック王子との話し合いを終えた後、私の暮らしは特に変わることはなかった。冒険者としての活動に励み、修行を続けながら、一般市民として普通の暮らしをする日々だ。
ジャメルが交渉を続けていた。私は、交渉内容を後から聞くだけで、特に口を出すことはない。
そして今日も、彼から報告があるそうだ。拠点の部屋で、私はジャメルと向かい合う。
「神殿に所属している神官を、引き取ることになった?」
「はい。どうやら神殿の連中は、一部の神官を追い出したいようです」
「それを、私たちが引き取るの?」
「はい。追い出された者たちは、居場所を失って困るでしょうから」
エリック王子が間に挟まって、神殿との交渉を進めているらしい。王子は、協力者となった私たちの力を大きくするために動いているのでしょうね。
「我々も、仲間が増えるのは好都合でしょう」
「私たちのパーティーに加える、というの?」
エミリーとナディーヌ、ジャメルという大切なパーティーに新しいメンバーを追加するというのは、ちょっと嫌だと思ってしまう。でも、行き場がなくて困っている人を放って置くことはできない。
「いいえ。新しい組織を立ち上げて、そこに所属してもらう予定です」
「新しい、組織」
こうして、ジャメル主導で新たな組織となる協会がスタートした。アンクティワンが用意してくれた拠点に、神殿から追い出された数十名もの神官たちがやってきた。その中には、私が指導したことがある女神官たちもいた。向こうは覚えていないようだけど、教えたことは覚えていて真面目に修行を続けていたみたい。
つまり、実力があるということ。
そんな子たちを、神殿は追い出してしまったの? 詳しい事情をジャメルが教えてくれた。
「彼らは実力不足や任務の失敗が原因で神殿から追い出されたわけではなくて、単に邪魔だからという理由で追いやられたようです。ついでに失敗の責任を押し付けて、問題から目を背けようとしているのでしょうね。そんな事をしても、現状が良くなるわけでもないというのに」
ジャメルは呆れたように呟いた。
「そんな理由で……、信じられないわ」
「ええ、まったく。困ったものです」
神殿の事情を聞いた後で、私はジャメルと相談しながら新組織の協会について考えた。
「協会のトップは、ジャメルではなく私で良いかしら?」
「そうですね。協会のトップはノエラ様に立ってもらった方が、皆も納得しやすいと思います。ただ、やってもらう仕事は多くありません。実務については、私にお任せください」
「わかったわ。お願いね」
協会の長は、私に決まった。そして、副長にジャメルが就くことも決まる。表向きには、私がトップ。でも実際のトップは、ジャメルということになりそうね。それでいいと思う。彼は頼りになるから。
ジャメルが交渉を続けていた。私は、交渉内容を後から聞くだけで、特に口を出すことはない。
そして今日も、彼から報告があるそうだ。拠点の部屋で、私はジャメルと向かい合う。
「神殿に所属している神官を、引き取ることになった?」
「はい。どうやら神殿の連中は、一部の神官を追い出したいようです」
「それを、私たちが引き取るの?」
「はい。追い出された者たちは、居場所を失って困るでしょうから」
エリック王子が間に挟まって、神殿との交渉を進めているらしい。王子は、協力者となった私たちの力を大きくするために動いているのでしょうね。
「我々も、仲間が増えるのは好都合でしょう」
「私たちのパーティーに加える、というの?」
エミリーとナディーヌ、ジャメルという大切なパーティーに新しいメンバーを追加するというのは、ちょっと嫌だと思ってしまう。でも、行き場がなくて困っている人を放って置くことはできない。
「いいえ。新しい組織を立ち上げて、そこに所属してもらう予定です」
「新しい、組織」
こうして、ジャメル主導で新たな組織となる協会がスタートした。アンクティワンが用意してくれた拠点に、神殿から追い出された数十名もの神官たちがやってきた。その中には、私が指導したことがある女神官たちもいた。向こうは覚えていないようだけど、教えたことは覚えていて真面目に修行を続けていたみたい。
つまり、実力があるということ。
そんな子たちを、神殿は追い出してしまったの? 詳しい事情をジャメルが教えてくれた。
「彼らは実力不足や任務の失敗が原因で神殿から追い出されたわけではなくて、単に邪魔だからという理由で追いやられたようです。ついでに失敗の責任を押し付けて、問題から目を背けようとしているのでしょうね。そんな事をしても、現状が良くなるわけでもないというのに」
ジャメルは呆れたように呟いた。
「そんな理由で……、信じられないわ」
「ええ、まったく。困ったものです」
神殿の事情を聞いた後で、私はジャメルと相談しながら新組織の協会について考えた。
「協会のトップは、ジャメルではなく私で良いかしら?」
「そうですね。協会のトップはノエラ様に立ってもらった方が、皆も納得しやすいと思います。ただ、やってもらう仕事は多くありません。実務については、私にお任せください」
「わかったわ。お願いね」
協会の長は、私に決まった。そして、副長にジャメルが就くことも決まる。表向きには、私がトップ。でも実際のトップは、ジャメルということになりそうね。それでいいと思う。彼は頼りになるから。
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