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第13話 一緒に行きたい ※元女神官エミリー視点
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私は聖女を務めるノエラ様に見出されて、弟子という特別な地位を頂いたのです。
ノエラ様のようになりたいという憧れの気持ちを抱き続けて、必死に修行に励んでいます。
他の女神官たちは、ノエラ様を超えて自分こそが新しい聖女の座を手に入れようと狙っていた。でも私は、そんなことは絶対に無理だろうと確信していた。ノエラ様の聖女としての実力は圧倒的で勝てない。勝負にすらならないでしょう。
ノエラ様は素晴らしい御方です。私なんかでは足元にも及ばないほど、唯一無二の偉大な聖女様なのです。
それなのに、神殿の連中はノエラ様の扱いが酷いのです。仕事を押し付け、功績は奪っていく。ノエラ様本人が文句を言わずに黙っているので、私も何も言わずに我慢して黙っています。でも正直、とても腹が立ちます。
ノエラ様の指導を直接受けている者たちは少しは理解しているけれど、他の女神官たちの多くがノエラ様の実力を侮っている様子だった。根拠もなく下に見ている。
だから、聖女の座を奪い取るなんて夢を追い求めているのでしょう。どうしたって無理なのに。
ただ、ノエラ様は聖女の座に座り続けることを望んでいないようだった。むしろ、誰かに引き継ぎたいと願っているようだった。
「聖女になりたいという人が居るのなら、喜んで譲るんだけどね」
冗談っぽく言っていました。でもノエラ様は、本気で聖女の座を誰かに譲りたいと考えているのが分かった。
ノエラ様が聖女の座から退くことを望むのであれば、私も協力したいと思っています。憧れの存在だからこそ、彼女の望みを叶えるお手伝いをしたい。
彼女が聖女でなくなっても、私にとってノエラ様は憧れの存在であり続ける。
「だから、私も一緒に連れて行ってください!」
少し前からノエラ様は、隠れて何か準備をしていた。誰にも秘密にして、どこかへ行ってしまわれる。私は置いていかれる。そんなの、嫌。
「えーっと」
「……ダメでしょうか?」
私が同行を求めると、ノエラ様は困ったような表情で頬をかいた。それから、私に言い聞かせるように優しく説明してくれた。みんなの記憶を消す魔法と、考えている計画について。
やはり、ノエラ様は凄いことを考えている人。私なんかでは、思いつかないような突飛な方法で自由を手に入れようとしている。それを成功させる自信がある。
そうなれば、やっぱり私は置いて行かれることになる。それだけは、阻止しないといけない。
「つまり私と一緒に来たら、エミリーが存在した記憶をみんなの中から消してしまうのよ。過去が消えて、居なかったことになる。それは、寂しいでしょう?」
「構いません! ノエラ様との思い出が無くなってしまう方が辛いです!」
「……そっかぁ」
私の返事を聞いた後、ノエラ様はしばらく沈黙していた。それから、大きくため息を吐いて、仕方ないなぁといった様子で微笑む。優しくて、温かい笑顔だった。
「わかったわ。じゃあ、行きましょうか。エミリーも私と一緒に」
「はい!」
許しを得た。私も一緒に連れて行ってもらえる。それが、とても嬉しい。
もしかしたら計画は実行しないかもしれない。最終手段だから。ノエラ様は、そうおっしゃっていた。
でも、きっとノエラ様は行動を起こすだろうと思った。予感がした。そうなってほしいと願った。そうすれば、彼女は聖女の座や神殿から解放されて、自由になれる。そうなってほしいと願う。
私が予想していた通り、ノエラ様は計画を実行した。私たちの存在した記憶は消え去った。
覚えているのは私たちだけ。聖女の座や神殿のしがらみからも解放されて、自由になった。計画通り。こうして私は、ノエラ様と共に旅立つことが出来たのだった。
ノエラ様のようになりたいという憧れの気持ちを抱き続けて、必死に修行に励んでいます。
他の女神官たちは、ノエラ様を超えて自分こそが新しい聖女の座を手に入れようと狙っていた。でも私は、そんなことは絶対に無理だろうと確信していた。ノエラ様の聖女としての実力は圧倒的で勝てない。勝負にすらならないでしょう。
ノエラ様は素晴らしい御方です。私なんかでは足元にも及ばないほど、唯一無二の偉大な聖女様なのです。
それなのに、神殿の連中はノエラ様の扱いが酷いのです。仕事を押し付け、功績は奪っていく。ノエラ様本人が文句を言わずに黙っているので、私も何も言わずに我慢して黙っています。でも正直、とても腹が立ちます。
ノエラ様の指導を直接受けている者たちは少しは理解しているけれど、他の女神官たちの多くがノエラ様の実力を侮っている様子だった。根拠もなく下に見ている。
だから、聖女の座を奪い取るなんて夢を追い求めているのでしょう。どうしたって無理なのに。
ただ、ノエラ様は聖女の座に座り続けることを望んでいないようだった。むしろ、誰かに引き継ぎたいと願っているようだった。
「聖女になりたいという人が居るのなら、喜んで譲るんだけどね」
冗談っぽく言っていました。でもノエラ様は、本気で聖女の座を誰かに譲りたいと考えているのが分かった。
ノエラ様が聖女の座から退くことを望むのであれば、私も協力したいと思っています。憧れの存在だからこそ、彼女の望みを叶えるお手伝いをしたい。
彼女が聖女でなくなっても、私にとってノエラ様は憧れの存在であり続ける。
「だから、私も一緒に連れて行ってください!」
少し前からノエラ様は、隠れて何か準備をしていた。誰にも秘密にして、どこかへ行ってしまわれる。私は置いていかれる。そんなの、嫌。
「えーっと」
「……ダメでしょうか?」
私が同行を求めると、ノエラ様は困ったような表情で頬をかいた。それから、私に言い聞かせるように優しく説明してくれた。みんなの記憶を消す魔法と、考えている計画について。
やはり、ノエラ様は凄いことを考えている人。私なんかでは、思いつかないような突飛な方法で自由を手に入れようとしている。それを成功させる自信がある。
そうなれば、やっぱり私は置いて行かれることになる。それだけは、阻止しないといけない。
「つまり私と一緒に来たら、エミリーが存在した記憶をみんなの中から消してしまうのよ。過去が消えて、居なかったことになる。それは、寂しいでしょう?」
「構いません! ノエラ様との思い出が無くなってしまう方が辛いです!」
「……そっかぁ」
私の返事を聞いた後、ノエラ様はしばらく沈黙していた。それから、大きくため息を吐いて、仕方ないなぁといった様子で微笑む。優しくて、温かい笑顔だった。
「わかったわ。じゃあ、行きましょうか。エミリーも私と一緒に」
「はい!」
許しを得た。私も一緒に連れて行ってもらえる。それが、とても嬉しい。
もしかしたら計画は実行しないかもしれない。最終手段だから。ノエラ様は、そうおっしゃっていた。
でも、きっとノエラ様は行動を起こすだろうと思った。予感がした。そうなってほしいと願った。そうすれば、彼女は聖女の座や神殿から解放されて、自由になれる。そうなってほしいと願う。
私が予想していた通り、ノエラ様は計画を実行した。私たちの存在した記憶は消え去った。
覚えているのは私たちだけ。聖女の座や神殿のしがらみからも解放されて、自由になった。計画通り。こうして私は、ノエラ様と共に旅立つことが出来たのだった。
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