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第9話 活動の支援者
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「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」
アンクティワンの商店がある建物にやって来ると、スタッフの丁重なおもてなしで部屋まで案内された。
待たされることなく彼が部屋に来た。そして、部屋で待機していたスタッフたちが入れ替わりで、部屋から出ていく。
この部屋の中に居るのは、私たちの仲間だけとなる。
「ようこそ、お待ちしておりましたノエラ様」
いつも通り。彼の得意である笑顔と、にこやかな挨拶。さわやかを感じる、耳心地の良い声。ちょっと怪しさも感じるけれど、基本的には紳士的な振る舞い。今まで色々と支援してもらって、とてもお世話になっている人だ。
彼の協力がなければ、今回の計画を決行することは出来なかった。
「無事でよかった、アンクティワン。貴方の関係者で記憶に問題は起きていない? 大丈夫?」
「はい、こちらは大丈夫ですよ。全て予定通り、順調に進んでおります」
「そう。それは、よかった」
まず最初に確認しておきたかった事を尋ねてみたが、問題ないようで安心した。
魔法を発動したら、人々の記憶から私たちの存在が消えてしまう。そんな予定だが、アンクティワンについては少しだけ状況が違った。
商人である彼は、存在の記憶を消すと色々と問題があった。商人を続けるのが難しくなる。また一から証人としてやり直すには、時間も手間もかかりすぎる。なので、彼については別の処置を行った。
アンクティワンの存在については、消さない。私たちに関する記憶も彼だけ例外にして残したまま商人を続けてもらい、協力者として動いて貰う事にしたのだ。
つまり、アンクティワンの記憶はそのまま変化なく。私たちに関する以前の記憶も消さずにいる。彼も、私の大事な仲間の一人として扱った。
「用意した拠点は、問題なさそうですか?」
「ええ。いい所を貸してもらえて、とても満足しているわ」
私たちが昨日から利用している拠点も、彼に用意してもらったもの。やはり、彼の協力なくして計画を決行することは出来なかっただろう。
「では、こちらが新しく用意したあなたたちの身分証です」
「ここまでしてくれて、本当にありがとう」
「いえ、お気になさらず。私とあなた達は大事なビジネスパートナーなのですから」
「そう言ってくれて、本当に助かるわ」
私たちは、差し出された書類を受け取る。存在の記憶を消してしまった私たちは、新しい身分が必要だった。それがこれ。私とナディーヌ、エミリーとジャメル。この4人の新しい身分。
冒険者であることを証明するギルドカードもある。それを、アンクティワンに用意してもらった。
新しく住む場所と新しい身分。アンクティワンは、本当に頼りになる。頼りすぎないように、気をつけないといけないぐらい。
ここまで予定通り。これから私たちは、王国の冒険者になる。冒険者の活動をして生活費を稼ぐ予定だった。
「貴方からの依頼は優先的に引き受けるようにするから、これからもよろしくね」
「えぇ。ぜひとも、ごひいきに」
彼から紹介された依頼は、優先して引き受けると約束する。
今までにも何度か神殿を通さずにアンクティワンの依頼を引き受けて、報酬を受け取ったことがあった。色々と配慮してくれて、とても助かる依頼主だった。信用している。報酬も多めに支払ってくれるので、仲良くしていきたい相手である。
アンクティワンの商店がある建物にやって来ると、スタッフの丁重なおもてなしで部屋まで案内された。
待たされることなく彼が部屋に来た。そして、部屋で待機していたスタッフたちが入れ替わりで、部屋から出ていく。
この部屋の中に居るのは、私たちの仲間だけとなる。
「ようこそ、お待ちしておりましたノエラ様」
いつも通り。彼の得意である笑顔と、にこやかな挨拶。さわやかを感じる、耳心地の良い声。ちょっと怪しさも感じるけれど、基本的には紳士的な振る舞い。今まで色々と支援してもらって、とてもお世話になっている人だ。
彼の協力がなければ、今回の計画を決行することは出来なかった。
「無事でよかった、アンクティワン。貴方の関係者で記憶に問題は起きていない? 大丈夫?」
「はい、こちらは大丈夫ですよ。全て予定通り、順調に進んでおります」
「そう。それは、よかった」
まず最初に確認しておきたかった事を尋ねてみたが、問題ないようで安心した。
魔法を発動したら、人々の記憶から私たちの存在が消えてしまう。そんな予定だが、アンクティワンについては少しだけ状況が違った。
商人である彼は、存在の記憶を消すと色々と問題があった。商人を続けるのが難しくなる。また一から証人としてやり直すには、時間も手間もかかりすぎる。なので、彼については別の処置を行った。
アンクティワンの存在については、消さない。私たちに関する記憶も彼だけ例外にして残したまま商人を続けてもらい、協力者として動いて貰う事にしたのだ。
つまり、アンクティワンの記憶はそのまま変化なく。私たちに関する以前の記憶も消さずにいる。彼も、私の大事な仲間の一人として扱った。
「用意した拠点は、問題なさそうですか?」
「ええ。いい所を貸してもらえて、とても満足しているわ」
私たちが昨日から利用している拠点も、彼に用意してもらったもの。やはり、彼の協力なくして計画を決行することは出来なかっただろう。
「では、こちらが新しく用意したあなたたちの身分証です」
「ここまでしてくれて、本当にありがとう」
「いえ、お気になさらず。私とあなた達は大事なビジネスパートナーなのですから」
「そう言ってくれて、本当に助かるわ」
私たちは、差し出された書類を受け取る。存在の記憶を消してしまった私たちは、新しい身分が必要だった。それがこれ。私とナディーヌ、エミリーとジャメル。この4人の新しい身分。
冒険者であることを証明するギルドカードもある。それを、アンクティワンに用意してもらった。
新しく住む場所と新しい身分。アンクティワンは、本当に頼りになる。頼りすぎないように、気をつけないといけないぐらい。
ここまで予定通り。これから私たちは、王国の冒険者になる。冒険者の活動をして生活費を稼ぐ予定だった。
「貴方からの依頼は優先的に引き受けるようにするから、これからもよろしくね」
「えぇ。ぜひとも、ごひいきに」
彼から紹介された依頼は、優先して引き受けると約束する。
今までにも何度か神殿を通さずにアンクティワンの依頼を引き受けて、報酬を受け取ったことがあった。色々と配慮してくれて、とても助かる依頼主だった。信用している。報酬も多めに支払ってくれるので、仲良くしていきたい相手である。
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