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第9話 選択しない
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「急に言われても、困りますよね。本日は、昨晩の件についての事情説明と謝罪することが目的だったのに、我々は結論を急ぎすぎました。申し訳ない」
そう言って、マルシャル様は私の答えを聞かずに引き下がった。
「とにかく、現時点では色々と分からない事も多い。なので引き続き、調査を進める予定ですので、何か分かったら速やかに報告することを約束します」
お父様にそう言うと、彼らは帰っていった。
そして再び、お父様の書斎で2人きりになる。
「それでお前は、彼らのうち、どちらかと結婚するつもりはあるか?」
先ほどの話について聞かれる。当然、お父様は気になるわよね。私は正直に、今の気持ちを口に出して伝えた。
「……今の所、その気はありません。どちらの殿方とも、結婚したいと思いません」
「ふむ、そうか」
あの光景が脳裏に浮かび上がり、怖いと感じる。彼らと一緒に居たら、いつの日か処刑されてしまう未来を辿ってしまうかもしれない、そう思って。
あのユウコという令嬢と関わり合いにならなければ、処刑されることはないだろうと思う。暗殺者を仕向けなければ、私は何も悪いことはしていないから、処刑されるなんてあり得ない。だけど数々の未来を見てしまった結果、色々と怖くなった。
いつの間にか自分の意志とは違う行動をしてしまい、あの光景と同じように処刑されるかもしれない。
だからこそ、王都から離れたい。彼らと関わり合いたくない。
詳しい事情を話せないが、どちらの男性とも結婚したくないと正直に言う。するとお父様は、難しい表情で考え込んだ。リムピンゼル公爵家としては、どちらかの男性と結婚してほしいと思っているのでしょう。貴族として、当たり前の考えだと、私も理解している。だけど。
しばらく考え込んでから、お父様が口を開いた。
「わかった。王都を離れて、ゆっくりと休みなさい」
「よろしいのですか?」
事情を聞かずに、王都から離れることを許可してくれるお父様。
「先に約束していたからな。婚約の話は、こちらで処理しておくから。お前は、何も気にすることはない」
「ありがとうございます」
よかった。マルシャル様とノルベール様の2人が書斎に来る前に約束したことを、お父様は守ってくれるらしい。色々と迷惑をかけてしまって申し訳ないけれど、頼ることにする。今の私には何も出来ないから、お父様を頼るしかない。
こうして私は、婚約破棄された直後に王都から逃げ出した。向かう先は、王都から遠く離れた地方にある街。
リムピンゼル公爵家が保有していた屋敷で、これからは静かに暮らす。
そう言って、マルシャル様は私の答えを聞かずに引き下がった。
「とにかく、現時点では色々と分からない事も多い。なので引き続き、調査を進める予定ですので、何か分かったら速やかに報告することを約束します」
お父様にそう言うと、彼らは帰っていった。
そして再び、お父様の書斎で2人きりになる。
「それでお前は、彼らのうち、どちらかと結婚するつもりはあるか?」
先ほどの話について聞かれる。当然、お父様は気になるわよね。私は正直に、今の気持ちを口に出して伝えた。
「……今の所、その気はありません。どちらの殿方とも、結婚したいと思いません」
「ふむ、そうか」
あの光景が脳裏に浮かび上がり、怖いと感じる。彼らと一緒に居たら、いつの日か処刑されてしまう未来を辿ってしまうかもしれない、そう思って。
あのユウコという令嬢と関わり合いにならなければ、処刑されることはないだろうと思う。暗殺者を仕向けなければ、私は何も悪いことはしていないから、処刑されるなんてあり得ない。だけど数々の未来を見てしまった結果、色々と怖くなった。
いつの間にか自分の意志とは違う行動をしてしまい、あの光景と同じように処刑されるかもしれない。
だからこそ、王都から離れたい。彼らと関わり合いたくない。
詳しい事情を話せないが、どちらの男性とも結婚したくないと正直に言う。するとお父様は、難しい表情で考え込んだ。リムピンゼル公爵家としては、どちらかの男性と結婚してほしいと思っているのでしょう。貴族として、当たり前の考えだと、私も理解している。だけど。
しばらく考え込んでから、お父様が口を開いた。
「わかった。王都を離れて、ゆっくりと休みなさい」
「よろしいのですか?」
事情を聞かずに、王都から離れることを許可してくれるお父様。
「先に約束していたからな。婚約の話は、こちらで処理しておくから。お前は、何も気にすることはない」
「ありがとうございます」
よかった。マルシャル様とノルベール様の2人が書斎に来る前に約束したことを、お父様は守ってくれるらしい。色々と迷惑をかけてしまって申し訳ないけれど、頼ることにする。今の私には何も出来ないから、お父様を頼るしかない。
こうして私は、婚約破棄された直後に王都から逃げ出した。向かう先は、王都から遠く離れた地方にある街。
リムピンゼル公爵家が保有していた屋敷で、これからは静かに暮らす。
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