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第6話 謝罪
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「それじゃあ私は、そろそろ」
そう言って席から立ち上がり、お父様の書斎から退出しようとした。その時、男性二人が凄い勢いで部屋の中に入ってきた。
「昨晩のコルネリア様の誕生を祝う夜会で、警備を担当した騎士の判断ミスで大変な失礼をしてしまい、誠に申し訳ありませんでした」
「私としたことがあのような不祥事を引き起こし、リムピンゼル公爵家には多大なるご迷惑をお掛けしてしまったことを、お詫びいたします」
騎士団長のノルベール様と大臣のマルシャル様だ。これほど間近で会うのは今回が初めてだけど、彼らの事はよく知っていた。未来の光景で見てきたから。
そんな2人の男達が書斎に入ってくると、お父様に向かっていきなり頭を下げた。続けて、謝罪の言葉を口にする。私は、部屋を出るタイミングを逃してしまった。
「まぁまぁ。お二人共、頭を上げて」
お父様が、頭を低くしている2人に向かって言う。どうやら彼らは、昨晩の夜会について謝罪しに来たらしい。頭を上げた2人が、私の顔を見て少し驚いていた。私も身体が固くなって、思わず警戒してしまう。
そんな2人は、私にも軽く頭を下げて謝った。
「コルネリア嬢、昨晩は申し訳なかった」
「我々の不手際でした。本当にすまない」
「いえいえ! 全然、大丈夫です。私は気にしていませんから」
2人に謝られて、変な気持ちだった。騎士団長と大臣という重要な役職の方々が、令嬢などに頭を下げて謝るだなんて、とんでもない事。
それに私の知っている2人は、厳しい顔をして私を責めていた。暗殺者を仕向けるような相手に対して怒るのは、当然だと思うが。なるべく、彼らに怒られないように注意しないと。もちろん、暗殺者を雇うなんてことは絶対にしないようにする。
「お父様と大事な話があるようなので、私は失礼します」
そう言って、さっさと部屋から出ていこうと思った。だけど部屋を出る前に、私は止められてしまった。
「いえ、ちょうど良かったです。お嬢様にも、昨晩についての説明を聞いて頂きたいので、ご同席いただけますか?」
「い、いえ。でも……」
大臣のマルシャル様に、席に座って説明を聞くようにお願いされる。けれど私は、あの光景を思い出すので彼らと、なるべくなら関わり合いになりたくない。ここから早く立ち去りたいのに。
お父様に視線を向ける。私は、席を外したほうがいいでしょう。そう思い、部屋を出る許可を求めた。しかし。
「そうだな。マルシャル殿がこう言っているので、コルネリアも聞いていきなさい。昨晩の件には、お前も大きく関わっているからな」
「……はい」
お父様にそう言われてしまったら、仕方ない。席に座って、私も一緒に彼らの話を聞くことになった。
出来る限り、大人しくしておこう。ここで彼らに目をつけられないように。
そう言って席から立ち上がり、お父様の書斎から退出しようとした。その時、男性二人が凄い勢いで部屋の中に入ってきた。
「昨晩のコルネリア様の誕生を祝う夜会で、警備を担当した騎士の判断ミスで大変な失礼をしてしまい、誠に申し訳ありませんでした」
「私としたことがあのような不祥事を引き起こし、リムピンゼル公爵家には多大なるご迷惑をお掛けしてしまったことを、お詫びいたします」
騎士団長のノルベール様と大臣のマルシャル様だ。これほど間近で会うのは今回が初めてだけど、彼らの事はよく知っていた。未来の光景で見てきたから。
そんな2人の男達が書斎に入ってくると、お父様に向かっていきなり頭を下げた。続けて、謝罪の言葉を口にする。私は、部屋を出るタイミングを逃してしまった。
「まぁまぁ。お二人共、頭を上げて」
お父様が、頭を低くしている2人に向かって言う。どうやら彼らは、昨晩の夜会について謝罪しに来たらしい。頭を上げた2人が、私の顔を見て少し驚いていた。私も身体が固くなって、思わず警戒してしまう。
そんな2人は、私にも軽く頭を下げて謝った。
「コルネリア嬢、昨晩は申し訳なかった」
「我々の不手際でした。本当にすまない」
「いえいえ! 全然、大丈夫です。私は気にしていませんから」
2人に謝られて、変な気持ちだった。騎士団長と大臣という重要な役職の方々が、令嬢などに頭を下げて謝るだなんて、とんでもない事。
それに私の知っている2人は、厳しい顔をして私を責めていた。暗殺者を仕向けるような相手に対して怒るのは、当然だと思うが。なるべく、彼らに怒られないように注意しないと。もちろん、暗殺者を雇うなんてことは絶対にしないようにする。
「お父様と大事な話があるようなので、私は失礼します」
そう言って、さっさと部屋から出ていこうと思った。だけど部屋を出る前に、私は止められてしまった。
「いえ、ちょうど良かったです。お嬢様にも、昨晩についての説明を聞いて頂きたいので、ご同席いただけますか?」
「い、いえ。でも……」
大臣のマルシャル様に、席に座って説明を聞くようにお願いされる。けれど私は、あの光景を思い出すので彼らと、なるべくなら関わり合いになりたくない。ここから早く立ち去りたいのに。
お父様に視線を向ける。私は、席を外したほうがいいでしょう。そう思い、部屋を出る許可を求めた。しかし。
「そうだな。マルシャル殿がこう言っているので、コルネリアも聞いていきなさい。昨晩の件には、お前も大きく関わっているからな」
「……はい」
お父様にそう言われてしまったら、仕方ない。席に座って、私も一緒に彼らの話を聞くことになった。
出来る限り、大人しくしておこう。ここで彼らに目をつけられないように。
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