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第6話
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バルトロメ王子の婚約破棄、シャルダン公爵家から追放、そして犯罪行為の告発。次々とイベントが巻き起こって大変だったけど、なんとか上手く終息して安心した。目標も、ちゃんと達成できた。
「ご苦労さまでした、アメリ」
「ジュリオも任務、お疲れさまです」
協力してくれた調査員のジュリオが労ってくれる。彼が居てくれたおかげで、私は無事に調査を終えることが出来た。彼が居なかったから、実家の闇に悩まされて精神的におかしくなっていかもしれない。
「これからの予定は、何か決まっていますか?」
「いえ、何も。バルトロメ王子に婚約破棄されて、シャルダン公爵家を追放された。なので今の私はただの小娘なので、困っています」
婚約破棄については、撤回されるかもしれない。しかし、あんな事があって以前のような婚約関係に戻ることは不可能だと思う。バルトロメ王子も私のことを嫌がっていた。イジメを行っていたと信じ切っていた。
なら私は、これからどうすれば。
「よければ、俺と婚約してくれないか?」
「え?」
ジュリオから予想外の言葉が聞こえてきた。
「今回の任務を無事に成功させた褒美として、爵位を授けてもらう予定だ」
「えっと、それは、おめでとうございます」
「ありがとう」
公爵家が廃位されるとなると、空いた爵位を受け持つ代わりの貴族が生まれることもあり得る。そのうちの1人がジュリオらしい。素直な気持ちで、彼を祝う。
だが彼は、なぜ急にそんな事を。
「だから君も、俺と結婚すれば貴族社会に戻ることが出来る」
「ですが、私はシャルダン公爵家の娘でした。しかも、バルトロメ王子に婚約を破棄されるような女です」
絶対に、貴族の間で噂になるだろう。嬉々として、語られることになるだろうな。容易に想像出来る。そんな女と婚約しても、損しかしないと思う。
しかも、シャルダン公爵家の血が流れている。あの酷い犯罪行為をしていた公爵の娘だ。無関係とは言えない。いつか私も……。
「そんなこと気にしない。一緒に調査した時に君は、あの犯罪行為に嫌悪感を示していた。なら、正常な感性を持っているということ。犯罪を行っていたシャルダン公爵とは違う」
「……」
「婚約を破棄した王子は、見る目がなかった。君の妹にまんまと騙されて、貶めようとした」
「……」
胸が痛い。彼が元気づけようとしてくれるのはありがたいが、申し訳ない気持ちが大きかった。
「俺と婚約するのは嫌か?」
「いえ! ……嫌では、ありません」
そんな事を聞かれたら、嫌とは答えることなんて絶対にできない。
とても頼もしい人だし、色々と手助けしてくれた。嫌いなわけがない。そう答えると、私はジュリオに抱きしめられていた。温かくて頼りがいのある大きな腕の中に。
「なら、もう何も言わずに俺と結婚してくれ」
「……はい!」
今日、何度目かの思わぬ展開。しかし、嫌ではなかった。将来が不安になっていたが、急に安心できた。彼と一緒になれば、助けてくれると理解しているから。
「ご苦労さまでした、アメリ」
「ジュリオも任務、お疲れさまです」
協力してくれた調査員のジュリオが労ってくれる。彼が居てくれたおかげで、私は無事に調査を終えることが出来た。彼が居なかったから、実家の闇に悩まされて精神的におかしくなっていかもしれない。
「これからの予定は、何か決まっていますか?」
「いえ、何も。バルトロメ王子に婚約破棄されて、シャルダン公爵家を追放された。なので今の私はただの小娘なので、困っています」
婚約破棄については、撤回されるかもしれない。しかし、あんな事があって以前のような婚約関係に戻ることは不可能だと思う。バルトロメ王子も私のことを嫌がっていた。イジメを行っていたと信じ切っていた。
なら私は、これからどうすれば。
「よければ、俺と婚約してくれないか?」
「え?」
ジュリオから予想外の言葉が聞こえてきた。
「今回の任務を無事に成功させた褒美として、爵位を授けてもらう予定だ」
「えっと、それは、おめでとうございます」
「ありがとう」
公爵家が廃位されるとなると、空いた爵位を受け持つ代わりの貴族が生まれることもあり得る。そのうちの1人がジュリオらしい。素直な気持ちで、彼を祝う。
だが彼は、なぜ急にそんな事を。
「だから君も、俺と結婚すれば貴族社会に戻ることが出来る」
「ですが、私はシャルダン公爵家の娘でした。しかも、バルトロメ王子に婚約を破棄されるような女です」
絶対に、貴族の間で噂になるだろう。嬉々として、語られることになるだろうな。容易に想像出来る。そんな女と婚約しても、損しかしないと思う。
しかも、シャルダン公爵家の血が流れている。あの酷い犯罪行為をしていた公爵の娘だ。無関係とは言えない。いつか私も……。
「そんなこと気にしない。一緒に調査した時に君は、あの犯罪行為に嫌悪感を示していた。なら、正常な感性を持っているということ。犯罪を行っていたシャルダン公爵とは違う」
「……」
「婚約を破棄した王子は、見る目がなかった。君の妹にまんまと騙されて、貶めようとした」
「……」
胸が痛い。彼が元気づけようとしてくれるのはありがたいが、申し訳ない気持ちが大きかった。
「俺と婚約するのは嫌か?」
「いえ! ……嫌では、ありません」
そんな事を聞かれたら、嫌とは答えることなんて絶対にできない。
とても頼もしい人だし、色々と手助けしてくれた。嫌いなわけがない。そう答えると、私はジュリオに抱きしめられていた。温かくて頼りがいのある大きな腕の中に。
「なら、もう何も言わずに俺と結婚してくれ」
「……はい!」
今日、何度目かの思わぬ展開。しかし、嫌ではなかった。将来が不安になっていたが、急に安心できた。彼と一緒になれば、助けてくれると理解しているから。
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