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第4話
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提出した資料を手にして、ページをめくるロテール王。とても険しい表情だ。
実は、既に何度もやり取りしていたのでロテール王が知っている情報も多かった。だから、この報告は周囲へのアピールという側面が大きい。
「これは間違いなく、犯罪行為に関する証拠だな。よくやった、アメリ」
「お役に立てて光栄です、陛下」
「お、お待ち下さい! 私は知らない!! そんな証拠、無効です!!」
先ほどの自信満々な表情から一転して、泣き顔寸前のような情けない表情を晒して弁解しようとするシャルダン公爵。
「いいや、待たぬ。犯罪者を拘束せよ」
「「「ハッ!」」」
「ぐっ! は、離せ! 俺に触れるな!」
ロテール王の命令により、シャルダン公爵は待機していた兵士たちに拘束された。ジタバタと暴れるが逃げ出すことは出来ない、鮮やかな手際だった。
兵士に拘束されて、逃げるのも諦めてうなだれるシャルダン公爵。彼は突然、顔を上げて私を睨んできた。
「この恩知らずめ……、今まで育ててやったというのに……、実の親を告発するなどと……!」
「残念ながら、これが私の任じられた役目です。貴方は、やりすぎたのです」
疑わしいシャルダン公爵について調査をして報告をすることが、私の任務だった。実の父親を探る任務というのは、最初は辛かった。けれども、だんだんと犯罪内容が判明していくにつれて同情の余地はなくなっていった。
早く父親を捕まえてもらうため、勘付かれないように証拠集めを続けてきた。その成果が今日、世間に晒さることとなった。
「アーレラ様も、一緒に来て頂きます」
「え!? わ、わたくしもですか?」
妹の周りに兵士たちが立つ。その中の一人が、同行するようにお願いする。一緒に来てくれと丁寧に言っているが、実際は拒否ることは出来ない。半ば強制的な同行のお願いだった。
「ちょっと待て、彼女は関係ない」
「バルトロメ王子、邪魔しないで頂きたい。彼女は、シャルダン公爵家の令嬢です。なので無関係ではありません」
オドオドと怯えるアーレラを見てバルトロメ王子が間に割って入り、口出しする。兵士たちが迷惑そうな表情をしていた。
「な、ならば彼女は!?」
バルトロメ王子が私を指差す。問い詰められた兵士の代わりに、ロテール王が彼の質問に答えた。
「彼女は先ほど、シャルダン公爵家から追放された。つまりアメリは無関係、ということになるな」
「そんな馬鹿な! じゃ、じゃあ……」
実は、こうなることは予想外だった。当初の予定では、バルトロメ王子と私が結婚して王族に取り込まれた後に、シャルダン公爵は断罪される予定だった。
シャルダン公爵が警戒心を抱かずに、なるべく自然な流れで私が安全な身分を手に入れるまでロテール王は約束通り待ってくれた。そういう取引で、犯罪行為の証拠を集めていたというワケだ。
バルトロメ王子に婚約を破棄されるなんて想定外だったけれども、なんとか公爵家から追放されたお陰で当初の目的を果たすことが出来た。
実は、既に何度もやり取りしていたのでロテール王が知っている情報も多かった。だから、この報告は周囲へのアピールという側面が大きい。
「これは間違いなく、犯罪行為に関する証拠だな。よくやった、アメリ」
「お役に立てて光栄です、陛下」
「お、お待ち下さい! 私は知らない!! そんな証拠、無効です!!」
先ほどの自信満々な表情から一転して、泣き顔寸前のような情けない表情を晒して弁解しようとするシャルダン公爵。
「いいや、待たぬ。犯罪者を拘束せよ」
「「「ハッ!」」」
「ぐっ! は、離せ! 俺に触れるな!」
ロテール王の命令により、シャルダン公爵は待機していた兵士たちに拘束された。ジタバタと暴れるが逃げ出すことは出来ない、鮮やかな手際だった。
兵士に拘束されて、逃げるのも諦めてうなだれるシャルダン公爵。彼は突然、顔を上げて私を睨んできた。
「この恩知らずめ……、今まで育ててやったというのに……、実の親を告発するなどと……!」
「残念ながら、これが私の任じられた役目です。貴方は、やりすぎたのです」
疑わしいシャルダン公爵について調査をして報告をすることが、私の任務だった。実の父親を探る任務というのは、最初は辛かった。けれども、だんだんと犯罪内容が判明していくにつれて同情の余地はなくなっていった。
早く父親を捕まえてもらうため、勘付かれないように証拠集めを続けてきた。その成果が今日、世間に晒さることとなった。
「アーレラ様も、一緒に来て頂きます」
「え!? わ、わたくしもですか?」
妹の周りに兵士たちが立つ。その中の一人が、同行するようにお願いする。一緒に来てくれと丁寧に言っているが、実際は拒否ることは出来ない。半ば強制的な同行のお願いだった。
「ちょっと待て、彼女は関係ない」
「バルトロメ王子、邪魔しないで頂きたい。彼女は、シャルダン公爵家の令嬢です。なので無関係ではありません」
オドオドと怯えるアーレラを見てバルトロメ王子が間に割って入り、口出しする。兵士たちが迷惑そうな表情をしていた。
「な、ならば彼女は!?」
バルトロメ王子が私を指差す。問い詰められた兵士の代わりに、ロテール王が彼の質問に答えた。
「彼女は先ほど、シャルダン公爵家から追放された。つまりアメリは無関係、ということになるな」
「そんな馬鹿な! じゃ、じゃあ……」
実は、こうなることは予想外だった。当初の予定では、バルトロメ王子と私が結婚して王族に取り込まれた後に、シャルダン公爵は断罪される予定だった。
シャルダン公爵が警戒心を抱かずに、なるべく自然な流れで私が安全な身分を手に入れるまでロテール王は約束通り待ってくれた。そういう取引で、犯罪行為の証拠を集めていたというワケだ。
バルトロメ王子に婚約を破棄されるなんて想定外だったけれども、なんとか公爵家から追放されたお陰で当初の目的を果たすことが出来た。
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