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第2話
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「お前はこれまでに何度も、妹であるアーレラを邪険に扱ってきた。私はアーレラに頼まれたから仕方なく、しばらく様子を見ていた。しかし、今回の行動は度が過ぎているぞ!」
父親から責められる。邪険に扱ってきたつもりはない。確かに最近少し疎遠だった気もするが、意地悪した覚えはない。私が少し忙しくしていたからかな。ただ単に、タイミングが悪かっただけ。
「お父さま、お姉さまを怒らないであげてください」
「おぉ、アーレラ。君はなんて優しい子なんだ。それに比べてアメリ! 君の態度は酷すぎるぞ」
バルトロメ王子にも責められる。唯一、妹のアーレラだけが私のことを庇ってくれようとした。
しかし、私は知っている。あれは、周囲の人間に好かれるために取り繕った態度だということを。私のことを助けようとは、少しも思っていないだろう。
彼女がそういう性格だというのは知っていたし、別に彼女の行動を否定するつもりもない。ただ、それを本当だと思っている取り巻きたちは愚かだと思うが。
アーレラの思惑通り、取り巻きたちはすっかり騙されていた。姉のことを庇う姿が素晴らしいと称賛して、アーレラのことを愛おしげに見ている。
そんな彼らは放っておいて、私は確認しなければならないことがあった。
「……公爵家を追放、ですか?」
「今すぐに謝れば、追放の罰を軽くすることも考えてやろう」
問いかける私を、完全に見下ろす表情で父親は言った。追放という重い罰を恐れた私が、罪を認めて謝ることを期待して。だけど残念ながら、そうならなかった。
「父上……いえ、シャルダン公爵。私は、やっていません」
「なッ!?」
何度でも私は、妹をイジメていたことを否定し続ける。やっていないのが事実だ。罰を軽くしてやるだなんて、お情けは不必要と言い切った。
想定外な態度だったのだろう、動揺するシャルダン公爵。そして次の瞬間に彼は、顔を真っ赤にして叫んだ。
「今この瞬間をもって、お前を公爵家から追放する!」
パーティーに参加していた者たちの前で、シャルダン公爵は宣言をした。これだけ多くの人たちが見ている状況での宣言だから、覆ることはない。
「分かりました。それでは私とシャルダン公爵家との縁は、間違いなく切れたということ。今後は一切関係ない、ということでよろしいですね?」
「あぁ、そうだ! お前など、娘でもなんでも無い!」
最後にもう一度、シャルダン公爵に確認した。間違いなく、実家との縁を切ったと宣言した。
シャルダン公爵は感情を高ぶらせて、私に敵意をむき出しにしてくる。私が冷静に受け答えしている様子が気に入らない、とでも思っているのかも。
私が冷静に居られるのは、求めていた言葉を父親が言ってくれたから。想定外ではあるものの、目的を果たせた。
そのとき、パーティー会場の来賓席から近づいてくる人物が居た。バルトロメ王子の父親である、現国王ロテール・オビーヌだ。
「父上!」
「「「国王陛下!」」」
バルトロメ王子を除く、その場に居た全員が床に膝をついて顔を伏せる。
「よい。全員、面を上げて楽にせよ」
威厳のある声が会場内に響き、場の空気が少しだけ緩む。バルトロメ王子たちは、仲間が来てくれたと期待するような表情を浮かべている。
父親から責められる。邪険に扱ってきたつもりはない。確かに最近少し疎遠だった気もするが、意地悪した覚えはない。私が少し忙しくしていたからかな。ただ単に、タイミングが悪かっただけ。
「お父さま、お姉さまを怒らないであげてください」
「おぉ、アーレラ。君はなんて優しい子なんだ。それに比べてアメリ! 君の態度は酷すぎるぞ」
バルトロメ王子にも責められる。唯一、妹のアーレラだけが私のことを庇ってくれようとした。
しかし、私は知っている。あれは、周囲の人間に好かれるために取り繕った態度だということを。私のことを助けようとは、少しも思っていないだろう。
彼女がそういう性格だというのは知っていたし、別に彼女の行動を否定するつもりもない。ただ、それを本当だと思っている取り巻きたちは愚かだと思うが。
アーレラの思惑通り、取り巻きたちはすっかり騙されていた。姉のことを庇う姿が素晴らしいと称賛して、アーレラのことを愛おしげに見ている。
そんな彼らは放っておいて、私は確認しなければならないことがあった。
「……公爵家を追放、ですか?」
「今すぐに謝れば、追放の罰を軽くすることも考えてやろう」
問いかける私を、完全に見下ろす表情で父親は言った。追放という重い罰を恐れた私が、罪を認めて謝ることを期待して。だけど残念ながら、そうならなかった。
「父上……いえ、シャルダン公爵。私は、やっていません」
「なッ!?」
何度でも私は、妹をイジメていたことを否定し続ける。やっていないのが事実だ。罰を軽くしてやるだなんて、お情けは不必要と言い切った。
想定外な態度だったのだろう、動揺するシャルダン公爵。そして次の瞬間に彼は、顔を真っ赤にして叫んだ。
「今この瞬間をもって、お前を公爵家から追放する!」
パーティーに参加していた者たちの前で、シャルダン公爵は宣言をした。これだけ多くの人たちが見ている状況での宣言だから、覆ることはない。
「分かりました。それでは私とシャルダン公爵家との縁は、間違いなく切れたということ。今後は一切関係ない、ということでよろしいですね?」
「あぁ、そうだ! お前など、娘でもなんでも無い!」
最後にもう一度、シャルダン公爵に確認した。間違いなく、実家との縁を切ったと宣言した。
シャルダン公爵は感情を高ぶらせて、私に敵意をむき出しにしてくる。私が冷静に受け答えしている様子が気に入らない、とでも思っているのかも。
私が冷静に居られるのは、求めていた言葉を父親が言ってくれたから。想定外ではあるものの、目的を果たせた。
そのとき、パーティー会場の来賓席から近づいてくる人物が居た。バルトロメ王子の父親である、現国王ロテール・オビーヌだ。
「父上!」
「「「国王陛下!」」」
バルトロメ王子を除く、その場に居た全員が床に膝をついて顔を伏せる。
「よい。全員、面を上げて楽にせよ」
威厳のある声が会場内に響き、場の空気が少しだけ緩む。バルトロメ王子たちは、仲間が来てくれたと期待するような表情を浮かべている。
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