追放された聖女のお話~私はもう貴方達のことは護りません~

キョウキョウ

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第33話 援軍 ※パトリック王子視点

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 エライユ侯爵家は、ソレズテリエ帝国がある方面の領地を治めている貴族だった。他国からの侵略に備えて、領土の防衛に努めていた。そのための兵士が揃っている。王都の危機を知って、そんな精鋭兵士を引き連れて私を助けに来てくれたのだろう。パトリック王子は、援軍に来てくれたエライユ侯爵家の当主に感謝した。

 彼が予想した通り、王宮の外に多くの兵士が待機しているのが見えた。助けに来てくれた彼らにお礼を言うため、急いで駆け寄る。

 あれだけ多くの兵士が居るのであれば、広い範囲を守らせることが出来そうだな。王都も荒らされないように防衛させれば、無事に助かりそうだな。王都に迫ってきているという魔物の大群の討伐を命令して、終わらせることが出来るはず。

 その後にも、各地で暴れているという魔物もついでに倒してもらおうではないか。彼らに任せるべき仕事は多くありそうだな。パトリック王子は、これから先のことを考えた。

 その仕事ぶりを見てエライユ侯爵家には、ちゃんと名誉と報酬を与えるつもりだ。この事態を解決してくれたら、勲章を与えても良いと思っている。エライユ侯爵家の領地を増やしてあげてもいいかもしれない。

 もちろん、彼らの働き次第ではあるけれど。

 そんな事を考えながら、パトリック王子はエライユ侯爵家の当主と思われる男性の目の前に辿り着いた。

「よく助けに来てくれた。褒めてつかわす」
「……」

 しかし、エライユ侯爵家の当主と思われる男性は王子の顔を見て黙ったまま、口を閉じていた。

 どういうことだ。助けに来てくれた恩人ではあるけど、侯爵でしかない者が王族に対して失礼ではないか。パトリック王子は、男の無礼な態度に腹を立てた。

 しかし王子は、一旦落ち着く。その態度は減点だけど王都は今厳しい状況だから、大目に見ようではないか。今後の働き方次第で、ちゃんと評価していくつもりだ。

 とにかく今は、危機を解決することが優先である。そう考えて、彼は命令する。

「早速だが君たちには、王都に迫ってきている魔物の大群に対処してほしい」
「王子を拘束しろ」
「「「はっ!」」」
「え? は?」

 王子の言葉を無視して、男が命令する。その命令を聞いて、兵士達が迅速に動く。意味が分からないと戸惑う王子を、兵士達が取り押さえた。

「な、何をする!? は、離せ!!」

 突然のことに、パトリック王子は抵抗することが出来なかった。

 まさか、自分が捕らえられると思っていなかった。あっさり腕と足を縄で縛られてしまった。王子は、身動きが取れない状況で地面の上に倒れている。

 縛られた手足を動かす王子は、地面から頭を上げてエライユ侯爵家の当主を睨みつけて叫ぶ。

「どういうことだ、これは。今すぐに縄を解け! 私はこの国の王子なんだぞ!! こんな真似をして、許されると思っているのか!?」
「……フッ」

 男は王子を見下ろしながら、彼の言葉を聞いて鼻で笑った。

「何がおかしい!!」
「我々は、貴方を助けに来たわけじゃありませんから」
「な、なんだと……!?」

 男の言葉を聞いて、パトリック王子は自分の耳を疑った。この男は一体何を言っているんだ。私を助けるためじゃないだと。そんなの嘘だ。嘘に決まっている。

 私は、彼らに助けてもらって王国の危機を脱する事ができるはずだった。しばらく王子は、予想外な状況を受け入れることが出来なかった。自分は、助けてもらうべき存在だと思っていたから。
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