31 / 39
第31話 無理です ※サブリナ視点
しおりを挟む
聖域の再展開の失敗で大きな負担のかかった体がようやく回復して、自由に動けるようになり、サブリナは落ち着くことが出来た。
先日まで体中が痛くて、起き上がるのも大変で、歩くだけでもキツイ状態だった。回復して、今は普通に動けることに感謝していた。もう、あんな苦労は嫌だ。
そんな時に、パトリック王子が部屋の中に駆け込んできた。その表情は真っ青で、あまり良い話ではなさそうだとサブリナは予想した。
「どうしたのですか?」
最近ピリピリしたムードをかもし出すようになったパトリック王子に、サブリナは努めて平静な声で尋ねた。
怒りっぽくなり関わりたくないと思ってしまうような人に変わってしまった彼は、いつからこんなになってしまったのだろう。前は、もう少しだけ優しかったと思う。聖域の再展開が失敗してから。それよりも、もっと前からなのか。サブリナが過去を思い出そうとした時に、パトリック王子が口を開いた。
「今すぐ君に、聖域の再展開を行ってほしい」
「は?」
いきなり言われて、サブリナは唖然とした。
この前、失敗したばかりなのに。ようやく体も回復したというのに。また、やれと言われるなんて想像していなかった。
「魔物の大群が王都に迫ってきているんだ! 聖域があれば、そいつらは聖域の外に逃げていくはずだろう。それしか、対処する方法は無いんだよ」
「そんなの無理です! 今から聖域の再展開をするなんて」
思わず叫んでしまったサブリナ。前回の失敗で絶対に無理だろうと判明したから。もっと人数と、実力者が必要。聖女を増やし、修行を積ませてからじゃないと無理。成功させるためには、人員と時間が必要不可欠だった。今は、そのどちらも足りないということをサブリナは理解していた。
「なんとか出来ないのか?」
「そんなことよりも、今すぐ逃げないと」
とにかく、今から聖域を再展開するなんて無理だ。危機が迫ってきているのなら、逃げ出すしかない。兵士を連れて、ここから安全な場所へ脱出しないと。
王都が危険だということを知ったサブリナは、今すぐ逃げる必要があると訴えた。しかし、パトリック王子の考えは違っていた。
「逃げることは出来ない。兵士も居なくて、魔物は各方面から迫ってきいるらしい。逃げ場もないんだ。それに、逃げる前にエルメノン王国の王子である私の出来ることをしなければ」
「……」
何も出来やしないのに、立派なことだけ口にする王子を見てサブリナは失敗したと思った。
王族と結婚することが出来れば、将来は安泰のはずだと思って安心していたのに。婚約者だった女を簡単に蹴落とすことが出来た。その後も、楽勝だろうと考えていたのに。予想は大きく外れたと、彼女は後悔する。最初から選択を間違えていたのかもしれない。
「無理だということは分かった。しかし、どうにかする。君は問題が解決するまで、部屋で大人しく待っていてくれ」
そう言って、サブリナを部屋に残して去っていくパトリック王子。その言葉が本当であれば、非常に頼もしい。だけど、信用することなんてサブリナには無理だった。あんな男と心中するなんて絶対に嫌。どうにか助かる方法を考えないと。
自分だけでも助かる方法を、必死で考えるサブリナ。彼女はまだ死にたくないと、強く思った。まだ諦めたくない。これからもっと幸せになるため、絶対に生き残る。
先日まで体中が痛くて、起き上がるのも大変で、歩くだけでもキツイ状態だった。回復して、今は普通に動けることに感謝していた。もう、あんな苦労は嫌だ。
そんな時に、パトリック王子が部屋の中に駆け込んできた。その表情は真っ青で、あまり良い話ではなさそうだとサブリナは予想した。
「どうしたのですか?」
最近ピリピリしたムードをかもし出すようになったパトリック王子に、サブリナは努めて平静な声で尋ねた。
怒りっぽくなり関わりたくないと思ってしまうような人に変わってしまった彼は、いつからこんなになってしまったのだろう。前は、もう少しだけ優しかったと思う。聖域の再展開が失敗してから。それよりも、もっと前からなのか。サブリナが過去を思い出そうとした時に、パトリック王子が口を開いた。
「今すぐ君に、聖域の再展開を行ってほしい」
「は?」
いきなり言われて、サブリナは唖然とした。
この前、失敗したばかりなのに。ようやく体も回復したというのに。また、やれと言われるなんて想像していなかった。
「魔物の大群が王都に迫ってきているんだ! 聖域があれば、そいつらは聖域の外に逃げていくはずだろう。それしか、対処する方法は無いんだよ」
「そんなの無理です! 今から聖域の再展開をするなんて」
思わず叫んでしまったサブリナ。前回の失敗で絶対に無理だろうと判明したから。もっと人数と、実力者が必要。聖女を増やし、修行を積ませてからじゃないと無理。成功させるためには、人員と時間が必要不可欠だった。今は、そのどちらも足りないということをサブリナは理解していた。
「なんとか出来ないのか?」
「そんなことよりも、今すぐ逃げないと」
とにかく、今から聖域を再展開するなんて無理だ。危機が迫ってきているのなら、逃げ出すしかない。兵士を連れて、ここから安全な場所へ脱出しないと。
王都が危険だということを知ったサブリナは、今すぐ逃げる必要があると訴えた。しかし、パトリック王子の考えは違っていた。
「逃げることは出来ない。兵士も居なくて、魔物は各方面から迫ってきいるらしい。逃げ場もないんだ。それに、逃げる前にエルメノン王国の王子である私の出来ることをしなければ」
「……」
何も出来やしないのに、立派なことだけ口にする王子を見てサブリナは失敗したと思った。
王族と結婚することが出来れば、将来は安泰のはずだと思って安心していたのに。婚約者だった女を簡単に蹴落とすことが出来た。その後も、楽勝だろうと考えていたのに。予想は大きく外れたと、彼女は後悔する。最初から選択を間違えていたのかもしれない。
「無理だということは分かった。しかし、どうにかする。君は問題が解決するまで、部屋で大人しく待っていてくれ」
そう言って、サブリナを部屋に残して去っていくパトリック王子。その言葉が本当であれば、非常に頼もしい。だけど、信用することなんてサブリナには無理だった。あんな男と心中するなんて絶対に嫌。どうにか助かる方法を考えないと。
自分だけでも助かる方法を、必死で考えるサブリナ。彼女はまだ死にたくないと、強く思った。まだ諦めたくない。これからもっと幸せになるため、絶対に生き残る。
44
◆◆◆ 更新中の作品 ◆◆◆
【新作】婚約者を妹に取られましたが、社交パーティーの評価で見返してやるつもりです
https://www.alphapolis.co.jp/novel/88950443/595922033
【完結】欲しいというなら、あげましょう。婚約破棄したら返品は受け付けません。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/88950443/82917838
【新作】婚約者を妹に取られましたが、社交パーティーの評価で見返してやるつもりです
https://www.alphapolis.co.jp/novel/88950443/595922033
【完結】欲しいというなら、あげましょう。婚約破棄したら返品は受け付けません。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/88950443/82917838
お気に入りに追加
2,807
あなたにおすすめの小説

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。

その婚約破棄喜んで
空月 若葉
恋愛
婚約者のエスコートなしに卒業パーティーにいる私は不思議がられていた。けれどなんとなく気がついている人もこの中に何人かは居るだろう。
そして、私も知っている。これから私がどうなるのか。私の婚約者がどこにいるのか。知っているのはそれだけじゃないわ。私、知っているの。この世界の秘密を、ね。
注意…主人公がちょっと怖いかも(笑)
4話で完結します。短いです。の割に詰め込んだので、かなりめちゃくちゃで読みにくいかもしれません。もし改善できるところを見つけてくださった方がいれば、教えていただけると嬉しいです。
完結後、番外編を付け足しました。
カクヨムにも掲載しています。

婚約破棄が私を笑顔にした
夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」
学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。
そこに聖女であるアメリアがやってくる。
フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。
彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。
短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。
西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。
私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。
それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」
と宣言されるなんて・・・

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる