追放された聖女のお話~私はもう貴方達のことは護りません~

キョウキョウ

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第31話 無理です ※サブリナ視点

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 聖域の再展開の失敗で大きな負担のかかった体がようやく回復して、自由に動けるようになり、サブリナは落ち着くことが出来た。

 先日まで体中が痛くて、起き上がるのも大変で、歩くだけでもキツイ状態だった。回復して、今は普通に動けることに感謝していた。もう、あんな苦労は嫌だ。

 そんな時に、パトリック王子が部屋の中に駆け込んできた。その表情は真っ青で、あまり良い話ではなさそうだとサブリナは予想した。

「どうしたのですか?」

 最近ピリピリしたムードをかもし出すようになったパトリック王子に、サブリナは努めて平静な声で尋ねた。

 怒りっぽくなり関わりたくないと思ってしまうような人に変わってしまった彼は、いつからこんなになってしまったのだろう。前は、もう少しだけ優しかったと思う。聖域の再展開が失敗してから。それよりも、もっと前からなのか。サブリナが過去を思い出そうとした時に、パトリック王子が口を開いた。

「今すぐ君に、聖域の再展開を行ってほしい」
「は?」

 いきなり言われて、サブリナは唖然とした。

 この前、失敗したばかりなのに。ようやく体も回復したというのに。また、やれと言われるなんて想像していなかった。

「魔物の大群が王都に迫ってきているんだ! 聖域があれば、そいつらは聖域の外に逃げていくはずだろう。それしか、対処する方法は無いんだよ」
「そんなの無理です! 今から聖域の再展開をするなんて」

 思わず叫んでしまったサブリナ。前回の失敗で絶対に無理だろうと判明したから。もっと人数と、実力者が必要。聖女を増やし、修行を積ませてからじゃないと無理。成功させるためには、人員と時間が必要不可欠だった。今は、そのどちらも足りないということをサブリナは理解していた。

「なんとか出来ないのか?」
「そんなことよりも、今すぐ逃げないと」

 とにかく、今から聖域を再展開するなんて無理だ。危機が迫ってきているのなら、逃げ出すしかない。兵士を連れて、ここから安全な場所へ脱出しないと。

 王都が危険だということを知ったサブリナは、今すぐ逃げる必要があると訴えた。しかし、パトリック王子の考えは違っていた。

「逃げることは出来ない。兵士も居なくて、魔物は各方面から迫ってきいるらしい。逃げ場もないんだ。それに、逃げる前にエルメノン王国の王子である私の出来ることをしなければ」
「……」

 何も出来やしないのに、立派なことだけ口にする王子を見てサブリナは失敗したと思った。

 王族と結婚することが出来れば、将来は安泰のはずだと思って安心していたのに。婚約者だった女を簡単に蹴落とすことが出来た。その後も、楽勝だろうと考えていたのに。予想は大きく外れたと、彼女は後悔する。最初から選択を間違えていたのかもしれない。

「無理だということは分かった。しかし、どうにかする。君は問題が解決するまで、部屋で大人しく待っていてくれ」

 そう言って、サブリナを部屋に残して去っていくパトリック王子。その言葉が本当であれば、非常に頼もしい。だけど、信用することなんてサブリナには無理だった。あんな男と心中するなんて絶対に嫌。どうにか助かる方法を考えないと。

 自分だけでも助かる方法を、必死で考えるサブリナ。彼女はまだ死にたくないと、強く思った。まだ諦めたくない。これからもっと幸せになるため、絶対に生き残る。
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