追放された聖女のお話~私はもう貴方達のことは護りません~

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
27 / 39

第27話 帝都で

しおりを挟む
 ソレズテリエ帝国の首都に到着した。

 ここが帝都なのね。私の知っているエルメノン王国の首都と比べたら、ずいぶんと雰囲気が違っていると思った。

 建物の造りも違うし、街並みの色使いにも統一感がない。けれど、それが悪いわけじゃなく、個性的で良い感じだった。力強い印象も受ける。それに、人が多いわね。

 馬車の窓から街の様子を観察していた私は、そんな感想を抱いた。

 早速、帝都の中央にある大きな城へ連れて行かれた。これから早速、帝国の陛下と謁見することになる。

「不安に思う必要はない。安心して、自然に振る舞えばいい」
「はい」

 ここまで連れてきてくれたシュテファン様に言われて、私は少し緊張しながら返事をした。

 謁見の間に通された。そこで、しばらく待っているように言われる。やがて、皇帝らしき人物が入ってくると、玉座に座って私をじっと見つめてきた。

「よく来てくれた、王国の聖女。歓迎するよ」
「初めまして、クローディです。お目にかかれて光栄です、陛下」

 帝国式の作法やマナーは知らなかったので、王国で習った方法で挨拶しておいた。これで大丈夫かと少し心配したけれど、特に問題はないようだった。

 挨拶を終えた後、どうして私に興味を持っていたのかについて教えてもらった。

 帝国が聖域について調査するために、王国の教会に工作員を送り込んでいたこと。

 王国から聖域を失わせるために、教会で修行していた聖女を連れ出していたこと。
 
 最近になって、ようやく目的を果たせたこと。

 帝国が行ってきたことを包み隠さずに、全て話してもらった。そんな事が行われていたなんて、私は知らなかったな。

 帝国のやり方について、少し思うところはある。そのせいで、役目を引き継ぐ者が教会から居なくなってしまい、私が1人で聖域を維持することになったのだから。

 だけど、教会や王国が何も対処していなかったことの方が呆れてしまった。そんな簡単に帝国の工作員が入り込めるほど、教会は杜撰な管理をしていたということね。聖域には頼っていたのに、聖女という存在に対して無関心すぎたんじゃないかしら。

 まったく、あの国はもう。そんな風に思いながら、私は帝国側の話を聞き続けた。

 パトリック王子が、私を追放したのは帝国は想定外だったそうだ。それで、聖域が失われてしまった。帝国の計画が、最後は王国側の手によって成功してしまった。

 王国から追放された私が、帝国に訪れたことは幸運だったと言われた。

「聖女である君に対して、敵意は一切ない。それを直接、伝えておきたかった」
「ありがとうございます」

 帝国のトップである皇帝陛下から言われたのだから、安心してもいいのでしょう。勝手に侵入してきて、捕まるのではないかという不安が消えたのはありがたい。

「それから君に、会わせたい者達が居る」

 私に会わせたい者達とは一体、誰だろうか。今の話の流れから、予想つくけれど。そして私は、とある場所に案内された。
しおりを挟む
◆◆◆ 更新中の作品 ◆◆◆

【新作】婚約者を妹に取られましたが、社交パーティーの評価で見返してやるつもりです
https://www.alphapolis.co.jp/novel/88950443/595922033

【完結】欲しいというなら、あげましょう。婚約破棄したら返品は受け付けません。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/88950443/82917838
感想 40

あなたにおすすめの小説

【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」 物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。 ★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位 2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位 2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位 2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位 2023/01/08……完結

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました

As-me.com
恋愛
完結しました。  とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。  例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。  なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。  ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!  あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

こんな国、捨てて差し上げますわ

藍田ひびき
恋愛
「ユリアーナ!本日をもって、お前との婚約を破棄する!」 『豊穣の聖女』ユリアーナは婚約者である王太子アルベリクから、突然に婚約破棄を言い渡された。しかもアルベリクは妹のフランシーヌと新たに婚約すると言う。  聖女を掲げる神殿側はそれを不服とし、ユリアーナとフランシーヌのどちらが聖女に相応しいか、試験をするように助言するが…? ※ 4/27 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

聖女アマリア ~喜んで、婚約破棄を承ります。

青の雀
恋愛
公爵令嬢アマリアは、15歳の誕生日の翌日、前世の記憶を思い出す。 婚約者である王太子エドモンドから、18歳の学園の卒業パーティで王太子妃の座を狙った男爵令嬢リリカからの告発を真に受け、冤罪で断罪、婚約破棄され公開処刑されてしまう記憶であった。 王太子エドモンドと学園から逃げるため、留学することに。隣国へ留学したアマリアは、聖女に認定され、覚醒する。そこで隣国の皇太子から求婚されるが、アマリアには、エドモンドという婚約者がいるため、返事に窮す。

処理中です...