追放された聖女のお話~私はもう貴方達のことは護りません~

キョウキョウ

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第18話 影響と対策 ※パトリック王子視点

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「魔物が街を襲って、大変なことになっている? 馬鹿な、そんなはずないだろう」

 部下からの報告を聞いたとき、パトリック王子は信じなかった。今までに、魔物が街を襲撃したという話は聞いたことがなかったから。

 エルメノン王国には聖域があるから、どこも安全なはずだ。聖域の外にいる魔物も定期的に駆除しているという報告を聞いていた。だから、街を襲うほどの数も居ないはずなのに。襲ってきても、撃退できるはずだろう。問題になるはずがない。

 パトリック王子は、再調査を命じた。正確な情報を求めて、兵士を派遣する。



「くそ。なんて、面倒な」

 次々と情報が集まってくると、事実であることが判明した。非常事態であることを認識した。放置できない問題であることを理解すると、彼は面倒だと感じていた。

 サブリナから聖女と聖域に関する話を聞いていたパトリック王子は、クローディを追放した影響が少しぐらいあると予想していた。でもまさか、こんなに大きな影響があるなんて思っていなかった。

 エルメノン王国の聖域が消えてしまった。聖域を維持している聖女が居なくなったということ。つまり、クローディは死んだのか。処刑せずに、追放で済ませたのに。こんなに早く死んでしまうとは。そして、こんなに大きな影響があったなんて。

 追放ではなく、幽閉にしておくべきだったか。しばらく閉じ込めておいて、聖域を維持させておくべきだった。そして、役目を引き継いだ後に追い出すべきだったか。選択を間違ったと、パトリック王子は反省する。

 クローディが1人で聖域を維持していることについては、追放した後に聞いた。

 なぜ、そんな大事なことを彼女は黙っていたのだろう。婚約者だった頃であれば、言えばよかったのに。もしかすると、言っていたのかもしれない。パトリック王子は覚えていなかった。しかし、それは当然だと思った。

 クローディは、いつも淡々としていて必死さがない。必死な様子で言われたことが一度もないから、気付けなかった。彼女がもっと強く主張していれば、気付けていたはずなのに。つまり、必死に言わない彼女の責任だとパトリック王子は考えた。

 教会からも、聖域を維持する役目があった聖女のクローディを勝手に追放したことについて、彼は責任を追求された。

 クローディがサブリナをイジメた。問題があったから追放したと反論。そもそも、1人だけに役目を背負わせていたことが大きな問題。複数名で協力して聖域の維持をさせておけば、こんな事態にはならなかったはずだ。パトリック王子が主張すると、教会の連中は黙り込んだ。

 そんな教会の奴らに、聖域の再展開を急がせた。素晴らしい聖女であるサブリナを中心にするように命じて。

 サブリナに任せておけば大丈夫だろうと、パトリック王子はひとまず安心した。

 魔物に襲われた街についても、魔物の問題を対処するべきなのは統治を任せている貴族達の仕事のはずだ。ちゃんと仕事をするように徹底させる。それで、問題ない。

 本来であれば、この命令も王が出すべきものなのに。父は、いつものように誰かに任せて、自分は動かないつもりらしい。だから仕方なく、私が代わりとして動く。

 本当に、無責任な奴らばかりだとパトリック王子は思った。それに比べて自分は、しっかり行動できていると自信を持っていた。
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