私は巻き込まれたくないので、早く婚約破棄してください

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
11 / 13

第11話 襲撃の顛末

しおりを挟む
「な、何者だ!」

 闇から飛び出した複数の人影は、素早い動きで男たちを次々と倒していく。剣戟の音が夜空に響き渡り、男たちの悲鳴が辺りを覆う。

 そんな状況を見て、慌てふためくレイモンド。しかし、彼の問いかけに答える者は誰もいない。

「うぅぅぅ」
「制圧、完了しました」

 あっという間に、武装した男たちは拘束された。彼らは地面に倒れ伏し、うめき声を上げている。地面に倒れていた御者が、いつの間にか立ち上がっていた。私の前に立ち、危険から守るような位置にいた。

「ブラックウェル家の護衛、ジョンと申します。エドガー様から、エレノアお嬢様の護衛を命じられておりました」

 御者は、丁寧に頭を下げながら名乗った。その言葉に、私は驚きと安堵の入り混じった感情を覚える。

「そうでしたか。ありがとうございます、ジョン」

 私は精一杯の感謝の言葉を伝えた。どうやら彼は、倒された演技をしていたらしい。彼に怪我がなくて本当に良かった。

 しかし、ジョンの表情は一転、怒りに変わる。

「ですが、無茶しすぎですお嬢様! 何をしでかすのかわからない、あんな男の前に姿をさらすなんて、馬鹿ですか!?」

 ジョンの声は、夜道に響き渡る。その怒号に、私は思わず身をすくませた。

「ご、ごめんなさい」

 私は小さな声で謝った。ジョンにここまで言わせてしまうぐらい、私の行動は危険だったのだ。馬車の中で隠れておくべきだったと、深く反省する。

「無礼な物言いになってしまい、申し訳ございません。今回の計画を事前にお伝えしていなかった我々にも非がありますので、お嬢様だけの責任ではございません。ですが、本当に注意くださいますように願います」

 ジョンは、怒りを和らげるように一息つくと、真摯な表情で忠告してくれた。

「わかったわ。忠告、感謝します」
「お嬢様が無事で良かったです」
「ええ。あなた達が守ってくれたおかげで」

 そうこうしているうちに、レイモンドと彼の仲間たち全員が捕縛されたようだ。彼らは手足を縛られ、地面に座らされている。

「くそっ! なんで、こんなことに!」

 捕まったレイモンドは、悔しそうに叫んでいた。その表情を見て、私は複雑な感情を覚える。あなたが自分で蒔いた種だ。婚約破棄も、浮気による慰謝料も。

 そして、今回の襲撃も相応の責任を支払うことになるでしょうね。

「エレノア! 俺が悪かった。謝るから、この男たちを離すように言ってくれッ! 頼む!」
「……」

 レイモンドは、必死に私に助けを求めてくる。しかし、私は無言で見つめ返すだけだ。

 計画した襲撃。復讐のために、とんでもない目に遭わせる考えが彼にあった。今回の罰は、かなり重いでしょう。ラザフォード家は取り潰しになると思う。

「謝るから!」

 離れたところで捕まっているレイモンド。彼に近づき、一言ぐらい言ってやりたい気持ちもあった。けれど、ジョンの忠告に従って近寄るのは止めておく。

 彼らがいれば問題はないと思うけれど、これ以上は余計な仕事を増やしたくない。後の処理は彼らに任せて、私は馬車の中に戻った。レイモンドが叫ぶ声を背中で感じながら。
しおりを挟む
◆◆◆ 更新中の作品 ◆◆◆

【新作】趣味の魔法研究のデータを勝手に破棄されて、婚約破棄を突きつけられた令嬢のお話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/88950443/846943520
感想 11

あなたにおすすめの小説

私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。

百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」 妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。 でも、父はそれでいいと思っていた。 母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。 同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。 この日までは。 「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」 婚約者ジェフリーに棄てられた。 父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。 「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」 「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」 「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」 2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。 王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。 「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」 運命の恋だった。 ================================= (他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)

公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】

佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。 異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。 幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。 その事実を1番隣でいつも見ていた。 一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。 25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。 これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。 何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは… 完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。

妹が最優先という事で婚約破棄なさいましたよね? 復縁なんてお断りよッ!!

百谷シカ
恋愛
私の婚約者クライトン伯爵エグバート卿は善良で優しい人。 末っ子で甘えん坊の私には、うってつけの年上の彼。 だけど、あの人いつもいつもいつもいつも……なんかもうエンドレスに妹たちの世話をやいている。 そしてついに、言われたのだ。 「妹の結婚が先だ。それが嫌なら君との婚約は破棄させてもらう」 そして破談になった私に、メイスフィールド伯爵から救いの手が差し伸べられた。 次々と舞い込んでくる求婚話。 そんな中、妹の結婚が片付いたと言ってエグバート卿が復縁をもちかけてきた。 「嘘でしょ? 本気?」 私は、愛のない結婚なんてしないわよ? ====================================== ☆読者様の御親切に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。 ご心配頂きました件について『お礼とご報告』を近況ボードにてお伝えさせて頂きます。 引き続きお楽しみ頂けましたら幸いです♡ (百谷シカ・拝)

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた-- 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は-- ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。

秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」 「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」 「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」 「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」  あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。 「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」  うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、 「――俺のことが怖くないのか?」  と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?  よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!

妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?

百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」 あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。 で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。 そんな話ある? 「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」 たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。 あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね? でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する? 「君の妹と、君の婚約者がね」 「そう。薄情でしょう?」 「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」 「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」 イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。 あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。 ==================== (他「エブリスタ」様に投稿)

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ
恋愛
 いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。 「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」 「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」  ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。  ──対して。  傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。

私から略奪婚した妹が泣いて帰って来たけど全力で無視します。大公様との結婚準備で忙しい~忙しいぃ~♪

百谷シカ
恋愛
身勝手な理由で泣いて帰ってきた妹エセル。 でも、この子、私から婚約者を奪っておいて、どの面下げて帰ってきたのだろう。 誰も構ってくれない、慰めてくれないと泣き喚くエセル。 両親はひたすらに妹をスルー。 「お黙りなさい、エセル。今はヘレンの結婚準備で忙しいの!」 「お姉様なんかほっとけばいいじゃない!!」 無理よ。 だって私、大公様の妻になるんだもの。 大忙しよ。

処理中です...