私は巻き込まれたくないので、早く婚約破棄してください

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
7 / 13

第7話 関係修復のために◆レイモンド視点

しおりを挟む
 元婚約相手であるエレノアに会いに行き、俺は頭を下げて婚約を元通りにしてくれと頼んだ。だが、あの女は拒否しやがった。

「だから、何度頭を下げても無駄よ。私には、どうすることも出来ない」

 冷たい視線を向けてくるエレノア。どうすることも出来ない。きっと、その言葉は嘘だろう。おそらく、俺に従いたくないだけ。あの時のことを、やり返された。

 浮気を止めろと何度も言っていたけれど、俺が言うことを聞かなかった。向こうも同じようにしたんだろう。あの時に、従ったフリでもしておくべきだった。



 どうにかして、ブラックウェル家との関係を元通りにしないと、ラザフォード家は大変なことになる。父上から、財政状況が悪化しているとの報告を聞いた。使用人の数も減らされ、食事も質素になった。このままでは、貴族の地位まで失ってしまう。

 話し合いで認めさせるのは無理だった。穏便に済ませようと思ったのに、彼女から拒否された。ならば、少し過激な方法も考えるべきか。脅してでも、エレノアを従わせるべきだ。金で解決する方法もあるかもしれない。今ならまだ、余裕はあるはず。

 ラザフォード家は、数年前から領地が順調で蓄えがあった。まだまだ出来ることがあるはずだから、諦めるべきじゃない。



 どうにかする方法を模索しながら、俺はいつものように学園に通う。

 学園内では、エレノアに警戒されて近づくことも出来ない。彼女は常に誰かと一緒に行動しているので、一対一で話し合うことも出来ないか。ラザフォード家の現状を他家に知られたくないし、学園で話し合うのは諦めたほうが良さそうだ。

 それなら、俺は学園でいつものように過ごす。だけど、懐が寂しくなったせいで、しばらく女たちと遊ぶのは控えるべきかと思った。

 とはいえ、俺の性分では我慢できるはずもなく。我慢するのも体に悪いだろうし。これから先、大変かもしれないが、今のうちに楽しんでおくべきだろう。



 そう考えて、いつものように、女たちに会いに行った。まずは一番気に入っているリリアンの教室へ。だが、彼女の姿が見当たらない。

「おい。リリアンはどこだ?」
「えっと、彼女は休みですよ」
「休み?」

 近くに立っていたクラスメートの男子に聞くと、意外な答えが返ってきた。

「はい。学園には来ていません」

 リリアンが学園を休むなんて、珍しいことだ。病気にでもなったのだろうか。

 仕方ない、二番目に親しいフローラに会いに行こう。三番目のハンナにも会えるかもしれない。

 だが、彼女たちの教室に行っても、二人の姿はない。男子生徒に尋ねても、学園に来ていないという。その後も、何人かの女友達のもとへ行ってみたけど、会うことは出来なかった。

 一体、どういうことだ。親しくしている女たちが、同時に学園を休むなんて。

 急に姿を消した彼女たち。嫌な予感がするな。エレノアが何かしたのか。それとも別の誰かが、裏で何か仕組んでいる?

 俺が親しくしている女たちに学園を休ませて、どういう目的があるのか。俺には、そんなことをする理由がわからない。だから、偶然だろう。



 仕方ない。適当に声をかけて別の子と遊ぼうとも考えたけれど、金もないし今日は遊ぶのを諦めて、家に帰るか。

「はぁ、つまらんな」

 実家に戻った俺は、エレノアとの関係を再構築する方法を考えた。どうするべきか計画を立てる。


「ううむ」

 ラザフォード家が存続するために、俺がどうにかしないといけない。あれから父は弱腰で、ブラックウェル家との関係修復を諦めているようだ。だけど、彼らと協力は必要不可欠だと俺は考える。エレノアと彼女の実家を上手く利用する。

 そのためにもまず、エレノアに言うことを聞かせないと。婚約破棄を取り消して、前までの関係に戻す。そのために、どうするべきか。

 彼女を脅すか、金で解決するか。いや、もっと良い方法があるはずだ。考えてみるけれど、残念ながら良いアイデアは思い浮かばない。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。

百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」 妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。 でも、父はそれでいいと思っていた。 母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。 同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。 この日までは。 「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」 婚約者ジェフリーに棄てられた。 父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。 「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」 「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」 「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」 2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。 王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。 「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」 運命の恋だった。 ================================= (他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)

公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】

佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。 異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。 幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。 その事実を1番隣でいつも見ていた。 一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。 25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。 これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。 何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは… 完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。

妹が最優先という事で婚約破棄なさいましたよね? 復縁なんてお断りよッ!!

百谷シカ
恋愛
私の婚約者クライトン伯爵エグバート卿は善良で優しい人。 末っ子で甘えん坊の私には、うってつけの年上の彼。 だけど、あの人いつもいつもいつもいつも……なんかもうエンドレスに妹たちの世話をやいている。 そしてついに、言われたのだ。 「妹の結婚が先だ。それが嫌なら君との婚約は破棄させてもらう」 そして破談になった私に、メイスフィールド伯爵から救いの手が差し伸べられた。 次々と舞い込んでくる求婚話。 そんな中、妹の結婚が片付いたと言ってエグバート卿が復縁をもちかけてきた。 「嘘でしょ? 本気?」 私は、愛のない結婚なんてしないわよ? ====================================== ☆読者様の御親切に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。 ご心配頂きました件について『お礼とご報告』を近況ボードにてお伝えさせて頂きます。 引き続きお楽しみ頂けましたら幸いです♡ (百谷シカ・拝)

妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?

百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」 あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。 で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。 そんな話ある? 「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」 たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。 あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね? でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する? 「君の妹と、君の婚約者がね」 「そう。薄情でしょう?」 「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」 「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」 イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。 あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。 ==================== (他「エブリスタ」様に投稿)

婚約破棄にはなりました。が、それはあなたの「ため」じゃなく、あなたの「せい」です。

百谷シカ
恋愛
「君がふしだらなせいだろう。当然、この婚約は破棄させてもらう」 私はシェルヴェン伯爵令嬢ルート・ユングクヴィスト。 この通りリンドホルム伯爵エドガー・メシュヴィツに婚約破棄された。 でも、決して私はふしだらなんかじゃない。 濡れ衣だ。 私はある人物につきまとわれている。 イスフェルト侯爵令息フィリップ・ビルト。 彼は私に一方的な好意を寄せ、この半年、あらゆる接触をしてきた。 「君と出会い、恋に落ちた。これは運命だ! 君もそう思うよね?」 「おやめください。私には婚約者がいます……!」 「関係ない! その男じゃなく、僕こそが君の愛すべき人だよ!」 愛していると、彼は言う。 これは運命なんだと、彼は言う。 そして運命は、私の未来を破壊した。 「さあ! 今こそ結婚しよう!!」 「いや……っ!!」 誰も助けてくれない。 父と兄はフィリップ卿から逃れるため、私を修道院に入れると決めた。 そんなある日。 思いがけない求婚が舞い込んでくる。 「便宜上の結婚だ。私の妻となれば、奴も手出しできないだろう」 ランデル公爵ゴトフリート閣下。 彼は愛情も跡継ぎも求めず、ただ人助けのために私を妻にした。 これは形だけの結婚に、ゆっくりと愛が育まれていく物語。

あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。

秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」 「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」 「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」 「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」  あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。 「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」  うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、 「――俺のことが怖くないのか?」  と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?  よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!

最初から間違っていたんですよ

わらびもち
恋愛
二人の門出を祝う晴れの日に、彼は別の女性の手を取った。 花嫁を置き去りにして駆け落ちする花婿。 でも不思議、どうしてそれで幸せになれると思ったの……?

婚約破棄されたので30キロ痩せたら求婚が殺到。でも、選ぶのは私。

百谷シカ
恋愛
「私より大きな女を妻と呼べるか! 鏡を見ろ、デブ!!」 私は伯爵令嬢オーロラ・カッセルズ。 大柄で太っているせいで、たった今、公爵に婚約を破棄された。 将軍である父の名誉を挽回し、私も誇りを取り戻さなくては。 1年間ダイエットに取り組み、運動と食事管理で30キロ痩せた。 すると痩せた私は絶世の美女だったらしい。 「お美しいオーロラ嬢、ぜひ私とダンスを!」 ただ体形が変わっただけで、こんなにも扱いが変わるなんて。 1年間努力して得たのは、軟弱な男たちの鼻息と血走った視線? 「……私は着せ替え人形じゃないわ」 でも、ひとりだけ変わらない人がいた。 毎年、冬になると砂漠の別荘地で顔を合わせた幼馴染の伯爵令息。 「あれっ、オーロラ!? なんか痩せた? ちゃんと肉食ってる?」 ダニエル・グランヴィルは、変わらず友人として接してくれた。 だから好きになってしまった……友人のはずなのに。 ====================== (他「エブリスタ」様に投稿)

処理中です...